Microsoftは4月9日(日本時間)、Windows XPのサポート、サービスならびにセキュリティ更新プログラムの提供を正式に終了しました。長らく親しまれてきたOSですが、いよいよ期限切れ。人によってはこの世の終わりと感じているかもしれません。この記事では、Windows XPの世界から初めて足を踏み出そうとしている人に向けたオリエンテーションとして、この先どうするかを決めるのに役立ついくつかの情報をお伝えします。

Windows XPを好きで使っていたにせよ、互換性のため仕方なく使っていたにせよ、会社がアップグレードしてくれなかったにせよ、案ずることはありません。皆さんのような人はほかにもたくさんいるからです。

ここでは、さまざまな選択肢をご紹介し、使いこなしていくための方法をひとつずつ説明していきます。読者の皆さんがどれを選ぶにせよ、安心して移行できるようにします。

Windows 7とWindows 8、どちらにする?

Windowsを使い続けるつもりなら、どのバージョンにアップグレードするかを決めなければなりません。Windows 7はとても人気がありますが、Windows 8に関してはマイナスの評価を多数耳にしているのではないでしょうか。

けれどWindows 8は、ちまたで言われているほど悪くはありません。Windows 8の、タブレットに最適化されたタイル型インターフェースに尻込みしている人も、先入観をなくして「今度からはこれがスタートメニューなんだ」と考えてみましょう。すぐに慣れるはず。ダメなら完全に無効化することもできます。Windows 8はWindows 7よりパフォーマンスが向上しているので、XP世代の古いコンピューターに入れるなら、むしろ理想的なのです。

その一方で、Windows 7のほうが使用感はWindows XPにずっと近いです。Windows 8が登場してからかなり時間が経っているのに、Windows 7のユーザー数とサポートコミュニティーの規模は、いまだに他のOSの追随を許しません。Windows 7なら、買ったその日からあまり触らなくても使い始められますし、XPからアップグレードした人にはなじみ深いかもしれません。

どちらを選ぶべきか、ここで決着をつけるつもりはありません。両者とも長所がありますし、選ぶのは皆さん自身です。スクリーンショットや動画を見て、よく使うアプリの動作状況をOS別に確認してみましょう。一番の特徴を吟味し、自分に最適なほうを選んでください。

ツールやアプリを活用して移行をラクに

どちらのバージョンを選ぶにせよ、Windowsに組み込まれているツールやサードパーティ製アプリの中には、パフォーマンスを最適化して、スムーズな移行を助けてくれるものがあります。

  • 古いアプリには互換モードで対応:うれしいことに、XPで使っていたアプリは、最新版にアップデートしなくても、Windows 7と8のどちらでも問題なく動くはずです。万が一問題があったとしても、Windows 7や8では、XPマシンであるかのように偽装してそのアプリを動かせます。やり方については、MicrosoftのサイトにWindows 7およびWindows 8それぞれについて説明があります。
  • どうしても動作しないアプリケーションはXPモードを使う:Windows 7の発売当初は「XPモード」というものがついてきました。簡単に言えば、Windows 7の中に仮想マシン環境を作ってXPを動かし、7に対応していないアプリを動かしていたのです。Windows 7にアップグレードするつもりなら、この機能は今でも利用できるので、頑として動かないXPアプリに対処する最終手段となります。Windows 8にはこのモードはついていませんが、米LHではXPモードを使えるようにする秘策を以前紹介しています。
  • スタート画面を無視して『Classic Shell』を使う:先ほども少し触れましたが、『Classic Shell』のようなWindows 8アプリがあれば、これまで慣れ親しんできたWindowsの使用感を取り戻せます。つまり、わけのわからないスタート画面を回避して、起動後すぐに、アイコンなどが並んだ見慣れたデスクトップ画面に行けるのです。
  • Aero Glassを無効にして動作を快適に:XPの使用感が恋しい人も、単にCPUやメモリが力不足という場合でも、Aero Glassを無効にしてみましょう。これはWindows 7の半透明ウィンドウなどの視覚効果で、無効にすれば動作を一気にスピードアップできます。
  • ウェブアプリを使えば、節約できてパフォーマンスも向上:お金を使いたくない人も、今あるPCではMicrosoft Officeの新バージョンが動作するかわからないという人も、『Office 365』や『Google Docs』に移行するという選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。これらはウェブアプリで、任意のブラウザ上で使うことができ、システムリソースの負担にもなりません。お金が節約でき、PCの負担も軽くなります。完璧な代替品とは言えませんが、考慮に入れてみるべきでしょう。欠点を上回るメリットを見出せるかもしれません。
  • 必要に応じてデュアルブートにする:アップグレードを渋る主な理由が、使用中のツールの中にWindows 7や8では動作しないものがあるせいならば、Windows XPと7もしくは8とのデュアルブート環境にするという方法があります。そうすれば、両方の長所を生かすことができるでしょう。とはいえ、XPを使うのは必要な時だけにしておくことをお勧めします。XPばかりを使って、新しいOSに慣れるための努力をしないのは感心しません。

Linuxに乗り換える

Windowsにはいい加減うんざりだという人や、新しいWindowsライセンスにお金を使いたくない人は、Linuxへの乗り換えを考慮する絶好のタイミングです。新規ユーザーにもわかりやすいディストリビューションは数多くあります。Linuxを使うにはターミナルコマンドを覚えなくてはならないとか、Linuxコミュニティではトラブル発生時に手取り足取りは教えてもらえないといったことに不安を抱いているのなら、心配無用です。近ごろでは、Linuxに関するヘルプも簡単に見つけられますし、新米ユーザーにもわかりやすいディストリビューションであれば、そのコミュニティの多くは初心者歓迎ムードです。そして、何よりもうれしいのはLinuxが無料であること。この点は最強です。

ぜひ検討してほしいディストリビューションをいくつかご紹介しましょう。

  • Ubuntu:広く使われていて、ユーザーコミュニティからも開発者からもさまざまなサポートを得られます。ドライバーサポートが必要な人や、ターミナルコマンドを使いたくない人には、Ubuntuはとても良い選択肢です。
  • Linux Mint:比較的古いハードウェアでもスピーディかつ柔軟に動きます。Windows XPのようなインターフェースが自慢なので、きっとすぐになじめるでしょう。ユーザーコミュニティは規模が拡大しつつあり、ビギナーにも親切です。
  • Elementary OS:軽くて速く、言うまでもなくカスタマイズが可能です。しっかりしたユーザーコミュニティに支えられており、デザインと外観が非常に優れています。筆者がこれまでに使ったLinuxディストリビューションの中ではもっとも美しいインターフェースで、OS Xのようなデザイン性をお求めなら、まさにこれでしょう。
  • Zorin OS:デザインはWindows XPにインスピレーションを得ています。高速で動作する上に、使用感もWindowsによく似ています。ユーザー・インターフェースがわかりやすいので、Linux入門にぴったりのディストリビューションですが、掘り下げて使っていけばさまざまな機能やツールを発見でき、Linux体験が広がっていくはずです。
  • Lubuntu:Ubuntuをより高速・軽量化したのがLubuntuです。Ubuntuには余計な機能が増えすぎてユーザーの不満を招きましたが、Lubuntuではそんなこともありません。比較的古くパワーが軽めのマシンをお持ちなら、ぜひLubuntuをお試しください。新規ユーザーも温かく迎え入れてくれる素晴らしいコミュニティがあるので安心です。

買い替えて、古いパソコンは別の用途に

ここまでは、現在お使いのパソコンを使い続けられる、お金のかからない選択肢に限って説明してきました。お持ちのXPパソコンがアップグレードに対応できない、もしくは自分ではやりたくない、というのであれば、もちろん、お金を払って新しいPCを購入するという選択肢もあります。とはいえ、その場合もWindows 7かWindows 8かという問題に突き当たることに変わりはありません。最近のPCの大半はWindows 8を搭載していますが、中にはWindows 7搭載モデルを販売しているところもあります(店に置いてなかったとしても、Windows 8のモデルを購入してWindows 7にダウングレードするという選択肢があります)。新しいPCを買ってLinuxに挑戦してもいいですし、思い切ってMacに乗り換えてみるのも手です。

いまだにWindows XPをお使いの方も、XPを使っている家族や知人から、Microsoftのサポート終了でどうして良いかわからないと頼られている人も、心配は要りません。選択肢はあります。どの選択肢を選ぶにせよ、古いハードウェアでできることは、リサイクルに出す以外にもたくさんあるのを忘れないでくださいね。

Alan Henry(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)

Photos by trenttsd, Pete, Linux Mint, and Wonderlane.