敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第66回。『習慣の力 The Power of Habit』の著者、チャールズ・デュヒッグ(Charles Duhigg)氏に続く今回は、デジタルを駆使して執筆するSF作家、ジェイミー・トッド・ルービン(Jamie Todd Rubin)氏にインタビュー。

筆者がルービン氏のことを知ったのは、Evernoteアンバサダーについてリサーチしていたときのことでした(同氏はペーパーレスに生きるアンバサダーとしてEvernoteに認められています。つまり、Evernoteやその他のプログラムを使って、すっきりとしたデジタルライフを送ることに情熱を注いでいるのです)。SF作家として多数の著書を出す傍ら、ブロガー、ソフトウェア開発者、そして2児の父としても活躍するルービン氏。そんなルービン氏のペーパーレスな仕事術を聞いてきました。

氏名:ジェイミー・トッド・ルービン(Jamie Todd Rubin)

居住地:バージニア州フォールズチャーチ

現在の職業:ソフトウェア開発、SF作家、ペーパーレスに生きるEvernoteアンバサダー

現在のモバイル端末:iPhone 5

現在のコンピュータ:自宅では27インチiMac;Samsung Google Chromebook(Linuxとのデュアルブート)

仕事スタイル: 徐々に増やす

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

書き物にはすべて、「Google Docs」を使っています。シンプルかつ拡張性があるのが好きですね。自分で書いたGoogle App Script(GitHubにて入手可能)を使うことで、毎日書いた量が自動的に記録され、書いた内容はEvernoteに自動転送されます。ですから、いつ何を書いた(消した/変えた)のか、すべて正確に話すことができます。

Evernoteへの取り込みには、「Fujitsu Scansnap s1300i」を使っています。もう1年以上になりますが、非常にいいですね。これまでにトラブルは1回もないし、私が考えるスキャナーの必須条件3つを満たしています。スキャナーの必須条件とは、(1) 複数ページの書類でもかんたんにスキャンできるように、シートフィーダが付いている。(2) 両面同時スキャンが可能。(3) Evernoteに直接スキャンするボタンが付いている。

Evernoteといえば、スローガンである「すべてを覚える」(remember everything)を、文字通り捉えています。Evernoteは、ペーパーレスのキャビネットとして使うと同時に、自動化のエンジンとしても役立っています。Evernoteではすべてが日付と関連づけて保存されるので、人生のタイムラインのようにも使えるんです。まるで、自動で日記を作成してくれているようなもの。私にとっては、これが非常に重要な参考資料となっています。

スケジュール上、私のソーシャルメディア管理には「Buffer」が必需品です。ツイートの予約、オンラインで見つけた記事の蓄積や共有に使います。FiftyThreeのアプリ「Paper」もいいですね。開発中のアプリのストーリーボードを作るときや、ブログに投稿する図を描くときなど、いつも使っています。Paperの何がいいって、図のラフな感じと、「Visio」などのアプリよりもずっと速く絵を描けること。Paperで作業をするときは、iPadで「Bamboo Solo」スタイラスを使います。これもまた素晴らしいんです。

FitBitの「Flex」を常に身に付けています。私はデータ狂なので、データを見て自分の1日の行動を知るのが大好きなんです。それから、友達と1週間の歩数でコンペできるのも楽しいですね。おかげで毎日ウォーキングを続けられています。

パスワード管理には「LastPass」がおすすめ。これを使えば、サービスごとに複雑でユニークなパスワードを使いこなせます。設定には実に週末1回分の時間を要したのですが、長期的にはかなりの時間節約になっています。それに、オンラインセキュリティが向上したことは言うまでもありません。私は、データはバックアップだけでは不十分と考えています。必要なときにデータをかんたんにリストアできる必要があると思うんです。自宅にあるすべてのコンピュータのバックアップには、「CrashPlan」を使っていますが、これもまた素晴らしい。すべてをバックアップしてくれるだけでなく、(必要なときには)リストアもさらっと作ってくれます。

── 仕事場はどんな感じですか?

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自宅のリビングからエキストラベッドルームに仕事場を移動したばかりです。リビングは広くて明るくて好きだったのですが、何せ集中したいときにプライバシーがない。2歳の娘が「自分の部屋はいらない」と言って兄の部屋に引っ越していったので、私がそこに潜り込むことができたというわけです。

小さ目のコーナーデスクを置いて、片側にiMac、逆側にChromebookまたはその日使うラップトップを並べています。この新しい仕事場のいいところは、集中したいときに閉められるドアがあることかな。おまけに、私がリビングを出て行ったことで、家族のリビングができたこともよかったです。

── お気に入りの時間節約術は何ですか?

毎日のエクササイズと読書をマルチタスクでこなすことでしょうか。私は、1日7から8マイル(11.3~12.9㎞)歩くことを心がけていて、朝10時に軽い散歩、昼休みはずっと散歩、午後3時にも短い散歩に出ます。残りは、1日中あちこち行ったり来たりしている分ですね。1日に3回の散歩は、エクササイズの時間であると同時に、オーディオブックを聴く時間でもあります。これで運動と読書を同時にこなすことができています。

よっぽどの悪天候でもない限り、散歩は欠かしません。何かしらの理由で散歩ができなかった日は、落ち着かない気分になります。それほど、私の日常の一環として定着しているのです。歩いている時間は、1日合わせて2時間ぐらいかな。つまり、毎日かならず2時間はオーディオブックを聴いていることになります。

2つ目の時間節約術は、2回以上やらなければならないことは、何でも自動化することです。私はほとんどのことにテキストファイルを使っているので、自動化がしやすいのです。「TextExpander」のようなツールを使えば、同じ文字を何度も繰り返し入力する手間が省けます。さらに、ちょっとしたコードによる自動化もたくさんやってます。例えば会議メモに入力したアクションアイテムは自動的にToDoリストに送信されるので、同じことを2回入力しなくてもいいのです。そのチリのような時間節約の積み重ねが、やがて山になるのです。

── 愛用中のToDoリストマネジャーは何ですか?

何年もいろいろなToDoリストを試した結果、いちばん便利だと思うのはGina Tripaniの「todo.text」です。プレーンテキストファイルほど万能なものはありません。Mac OS、UNIX、iOS、Chrome OS、Windowsを併用している私にとっては、クロスプラットフォームの互換性があることが何よりも大切なのです。それに、プレーンテキストは自動化にも便利。さらに言うと、シンプルなところが好きでもあります。todo.txtは、そのシンプルなコマンドラインインタフェースとモバイルアプリのおかげで、本当に使いやすいと思います。

── 携帯電話と PC 以外で「これは必須」のガジェットはありますか?

やっぱり、Fujitsuのスキャナでしょうか。私はEvernoteアンバサダーとして、ペーパーレス化を強く支持しています。でも、私1人がいくらペーパーレスを進めたところで、世界中の人は依然として紙を使っていることもわかっています。スキャナーがあれば、どんな紙でも瞬時にデジタル化ができます。そうすることで、どこからでもアクセスできるし、オフィスが紙の山に埋もれることもなくなるのです。

僅差で2位につけているのが、FitBitの「Flex」です。毎日の運動の目標達成を目指すだけで、さもなくば座りっぱなしの職業にもかかわらず、ヘルシーな状態を保てます。先ほども言いましたが、データ狂でもあるので、データを使って自分を向上することが楽しい。Flexはたくさんのデータを生成してくれるので、とも便利です。

── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

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人よりうまいことなんてあるのかどうかわかりませんが、私が強く信じているのは、個人的な分析の価値と、自分の動きの定量化です。何年も前から、自分に関するさまざまなデータ収集を自動化しているおかげで、自分の改善すべき部分を見つけることができるのです。

例えば書き物。フィクションの執筆は私の本業ですが、日中のフルタイムジョブ、ブログ、Evernoteの活動、家族などを考えると、執筆に充てられる時間は非常に限られます。かつては、1時間なり2時間なり、執筆に集中できる決まった時間を確保しておくことが必要だと考えていました。でも、うまくいった試しはなく、結局ほとんど書けずじまい。そこで1年前から、違うアプローチを取ることにしました。書く時間は決めず、スキマ時間を見つけて書く。ただし、短時間でもいいので必ず毎日書くことに決めたのです。自分の執筆量・時間を自動で記録してくれるGoogle app scriptを作りました。だから、自分はただ書くだけ。そしてそれは、うまく行っています!

ここ219日、1日も書くことを欠かしていません。過去365日で書かなかった日はたったの2日! データによると、私の執筆ペースは20分で500ワード。1日の執筆時間は20分。子どもたちを寝かしつけたあとが多いようです。執筆量はどんどん増え、これを始めてからの1年間で、31万ワードに達しています。継続は力なりという通り、どんどん書くのがうまくなっていると感じています。私の小説・短編の売上は、昨年の間ずっと右肩上がりでした。これはもちろん、アウトプットの量が増えたことにもよります。でも、そんなに長い執筆時間は不要であることを、データが教えてくれたことが大きいような気がします。現在の私の状況では、毎日少しずつ書くことがうまくいく秘訣のようです

── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

コードを書く仕事をしているときは、Sirius XMを聴くことが多いです。気分によって、7チャンネルの70年代か、8チャンネルの80年代を選びます。小説の執筆中は、静寂を好みます。

── 現在、どんな本を読んでいますか?

今読んでいるのは、Ron Chernowの『George Washington: A Life』です。ちょうど子どもたちをマウントバーノンに連れて行ったばかりだったので、タイムリーでした。歴史を読んで実物を見るのはとても素晴らしい接点になりますね。私は、フィクションとノンフィクションを混ぜこぜに読むようにしています。SF雑誌に本のレビューを連載しているので、そのコラムのために12冊は本を読みます。しかし私の関心は非常に幅広く、フィクションとノンフィクションの間を行ったり来たりします。もちろん、データ狂なので、1996年以降に読んだ本はすべて記録されています。これまでに561冊読みました。

── あなたは外向的ですか、内向的ですか?

昔は自分がシャイだと思っていたのですが、人前で話すことに問題があったことは一度もありません。最近ではSFのコンベンションでパネルトークをしたり、Evernoteやペーパーレスに関する講演をしたりする機会も増えているので、外向的と内向的の間でうまくバランスが取れているのではないでしょうか。

── 睡眠習慣はどのようなものですか?

4歳と2歳の子どもがいるので、周囲の友人よりも年寄のような生活をしています。子どもが寝るのは9時。私もそれからあまり長く起きず、遅くとも10時には寝ています。子どもたちは週末も関係なく朝6時には起きてきます。FitBit Flexによると、ここ1年の私の平均睡眠時間は、7時間強のようです。

── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

ジョン・スコルジー、ニール・ゲイマン、スティーヴン・キングです。3人とも作家ですが、私も作家として、他の作家がどのように仕事をしているか興味があります。

── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

書き物に関しては、スティーブン・キングの『小説作法』を越えるものはないでしょう。作家になりたければ、次の2つのことをしなければなりません。それは、「たくさん書くこと」と、「たくさん読むこと」。

── そのほかに読者に伝えたいことがあればどうぞ

SFのコンベンションに参加するときは、できるだけ「新人作家」のパネルに参加するようにしています。もう小説を出版するようになって7年になりますが、今でも新人のように感じているからです。そのようなパネルトークでいつも話すのは、今やっていることが好きならば、どんなにボツをくらっても絶対にあきらめちゃいけないということ。私は、初めての本が出版されるまで14年間書き続け、持ち込んでは断られを何百回も繰り返してきたのですから。粘り強く練習を重ねることで、必ず成果は出るはずです。

Tessa Miller(原文/訳:堀込泰三)