Inc.:すばらしいスピーチというのは稀です。99パーセントのスピーチは「普通」です。パワーポイントのスライドはありきたりで、ジョークはすべる。聴衆は行儀よく耳を傾けながら、自分の生活や仕事で使えそうな情報の1つや2つを得られれば良いと期待している。そんなところでしょう。

セス・ゴーディン氏やアリアナ・ハフィントン女史といった「スピーチの達人」というのは稀な存在です。では、そうした「スピーチの達人」と「凡人」との違いはどこにあるのでしょうか? 以下に、スピーチの技術を上達させるために成すべき6つのことを紹介します。

1. 三語法を活用する

三語法とはいったいなにか、と思われたでしょう。三語法の魅力は、それを繰り返し口にしてみないと感じることができません。三語法というのは、良い響きを生み出す3つの語句やフレーズを並べて表現することです。

たとえば、アメリカ独立宣言の掲げる「生命、自由及び幸福追求の権利」、リンカーンによる「人民の、人民による、人民のための政治」は有名な三語法の例です。オバマ大統領もまた、三語法を巧みに利用することで知られています。

大統領でなくても、三語法という最強の武器を活かすことはできます。「記憶されやすい」という三語法のメリットを活用しましょう。上手く使えば、スピーチの構造や流れをより良くできます。また、簡潔で、記憶に残りやすい語句を使うことが重要です。

2.「ええと」や「あの」といったつなぎ言葉に気をつける

おそらくほとんどの人が、緊張しているときについつい発してしまう言葉の癖というのを持っているはずです。「ええと」「というか」「あの」といった言葉が増えると、聴衆はスピーチに集中できなくなり、伝えたい本当のメッセージが伝わらなくなります。ですので、こうした無駄な言葉をできるだけ減らすことが大切です。

自分のスピーチをビデオに撮り、スピーチの中でこうした言葉を何度、どういうタイミングで使ったか、確認しましょう。そして、友人や同僚とスピーチの練習をし、つなぎ言葉を使ったときには手を上げて注意してもらうよう彼らに頼みましょう。

いつ、どういうタイミングで自分がつなぎ言葉を使ってしまう癖を持っているかを知ることで、その言葉をいかに別の言葉に換えて、スピーチを上達させることができるか、学ぶことができます。息つぎのタイミングも改善できます。焦らず、ゆっくりと、時には十分な間をとることで、意味不明な言葉が出てしまうのを抑えることができるでしょう。

3.ジョークの力を利用する

ジョークを使わずとも、素晴らしいスピーチはできます。しかし、実際それはハードルが高いのも事実です。聴衆は常に、楽しませてもらうことを期待しています。映画を観るときも、観劇するときも。講演を聴くときも例外ではありません。わたしはジョークが上手い2人の同僚に、どのようなジョークを自分のスピーチに入れるべきか、アドバイスを求めました。

素晴らしいジョークというのは、綿密に練られており、適切なタイミングで使われ、聴衆の視点に立って考えられたものです。もっとも避けるべきは、大げさな身振り手振りを交えて、必死になってジョークを飛ばそうとすることです。ですので、完璧にジョークを言う練習をすることが大切です。

適切にジョークを使えれば、ジョークは聴衆の気持ちを緩める効果があるだけでなく、話し手自身もリラックスすることができます。なので、ジョークを使うときには、できるだけ早いタイミングに投入しましょう。

4.自分のスピーチに批判的に向き合う

本当にすばらしいスピーチを成すには、非常に批判的な見方で自分のスピーチを評価し、初稿よりも100倍は楽しい内容に改善していくぐらいの姿勢が求められます。

率直なフィードバックを与えてくれる仲間を見つけましょう。わたしが最初にスピーチの練習をしたときには、同僚からは D+ という、とても低い点数をつけられました。しかし、しっかりとしたフィードバックをもらったおかげで、次の練習までには大きく技術を向上させることができました。

大勢の人を前にしたスピーチを準備するには、自分に厳しく向き合う必要があります。他者からのフィードバックを受け入れ、問題のある箇所は改善していきましょう。スピーチが不自然であったり、中途半端なものだと、聴衆はすぐにそれに気付きます。自分に合ったスタイルでメッセージをうまく伝えるために、時間をかけて準備をすることが大切です。

5.個人的な話を取り入れる

すばらしい語りというのは、一般的な話や統計上の数字の引用だけでは実現できません。個人的な経験と結びつけて語ることで、話が生き生きと輝くのです。慈善起業家のスコット・ハリス氏が、代表を務める給水事業「チャリティ・ウォーター」について、ナイトクラブのプロモーターから転身したいきさつを語ったように。

彼の語りは臨場感にあふれ、聴衆は彼がナイトクラブのプロモーターだった頃に手にした金、豪奢な生活、魅力的な女性をリアルに感じることができました。彼は、そうした豪奢な生活と、慈善事業におけるすばらしい使命感との際立った対比を完璧に伝えました。聴衆に、途上国の危機的な水事情に共感するようにプレッシャーを与えるのではなく、自分自身の経験を創造的に語ることで、聴衆の注目を引きつけたのです。

聴衆はあなたに会いに来ているのです。あなた自身を聴衆に見せてください。

6.テンポよく話を進める

スピーチをするときに、特定のスライドやテーマでつっかえてしまうことがあります。力が入りすぎてしまったり、説明が特に難しいという理由などで。話し手にとっては、この間がたったの5秒に感じられたとしても、聴衆はそれが永遠続くかのように感じてしまいます。

平均的なアメリカ人が集中力を保てる時間というのは、数分ではありません。140文字です。その点を意識して、スピーチを進めましょう。各スライドのポイントを簡潔に伝えられたら、次に進むのです。このテンポを意識して、スライドの内容も作りましょう。スライドの隅に書かれた脚注を、目を凝らして読もうと思う人などいません。シンプルで、興味深い内容にすること。そしてテンポよく、話を進めていくことが大切です。

マルコム・グラッドウェルは、何かの分野で一流になるには1万時間の練習が必要であると主張しました。この夏、スピーチの準備をしたときは、本当に大変で、準備はまるで永遠に続くかのように思えました。スピーチの準備をしたことで、苦労なく自然にスピーチをこなしているかに見える優秀な話し手が実際どれだけすごいのかを、よく理解することができました。次回スピーチをするときには、今回学んだことを十分に活かしたいと思います。

How to Deliver the Best Speech of Your Life | Inc.

Brian Halligan(訳:佐藤ゆき)

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