とにかく忙しい現代人。「超多忙」「押しつぶさそうになっている」「なんとか生き延びている」などという表現が、日常会話の中でもよく使われます。

「最近どう?」という質問に対してこうした言葉で返すのは、あたかもサバイバル状態を生き延びているかのようです。それどころか、むしろ多くの仕事を抱えていることを「自慢」するかのように使われることさえもあります。

でもそれって、本当に自慢できることなのでしょうか。

「忙しい」というのは自慢すべきことではない

忙しいことを控えめに自慢する人は、私が取引を検討していたクライアントの中にもいました。彼は「仕事がずっと "炎上" していた」ことを理由に、コミュニケーションが不足していたことを謝罪しました。

炎上中? 私は彼のために助けを呼んであげればよかったのでしょうか? デート相手が「締め切り直前で超多忙」であることを理由に「適当なお店を予約しておいて」と私に頼んできたこともありました。その時は本当にガックリきました。

こうしたやりとりは、相手よりも優位に立とうと競争しているようなものです。

「私は君よりも忙しい」というのはつまり、私はあなたよりも重要だ、私の時間はあなたの時間よりも重要だ、どこまでも続く競争ゲームで優位に立っている、という意味です。要は「より忙しい、より必要とされている、より成功している」と言いたいのです。

しかし、こうしたコミュニケーションには問題があります。周囲とのつながり、交流に大きな害を与えているのです。多くのクライアントを抱えている、新しいビジネスを始めようとしている。さまざまな事情があるでしょう。限られた時間の中で、無制限に仕事を抱えていたら、スケジュールはもちろんすぐに埋まるでしょう。だからといって、あなたがすべての仕事を引き受けるべきとは限りません

「忙しい」のを誇るべきだと思うのは、バカバカしい考え方です。忙しいのを誇ることで、私たちは家族や友人との大切なつながり、そして自分の時間をも犠牲にしているのです。家族や友人と気持ちを分かち合ったり、大切なことについて尋ねることができなくなり、「忙しい」状態を一旦休む必要があるのも分からなくなります。

多忙な仕事に価値が無いと言っているのではありません。優位に立つために忙しさを利用することで、他人と真の意味でつながることができなくなるのです。

周囲の人が猛烈に働いている状況に置かれると、自分もまたあくせく働かなければいけないような気になってしまいます。競争に負けないようにとがんばりつつ、その競争を激化させているのです。こうした状況は精神的に良くありません。にも関わらず、私たちは長時間労働を「名誉勲章」のように誇っています。

がんばって働くのではなく、スマートに働こう

1日15時間労働を達成したというのは、仕事をスマートにこなしたという意味ではありません。一般的に、一度の集中力というのは90分から120分しかもちません。15時間、休憩なしにデスクに座りっぱなしで仕事をしたところで、どれだけの成果を上げられますか? 同時に、どれくらいの時間を無駄にしていますか?

私が、がんばって働くこととスマートに働くことの違いを理解したのは、起業をしてからでした。高校・大学時代、わたしは課題の資料をすべて読むようなタイプでした。要約をつくり、要約の要約をつくり、さらにまとめ用のカードをつくっていました。ビジネスをするようになってから学んだ教訓は、そうしたスキルを手放すことでした。

勤勉が良くないとか、中途半端に仕事をすべきと言っているのではありません。むしろ、できることではなく、やらなければならないことを理解することが重要なのです。つまり、戦略的になる、ということです。

私が聞きたいのは、優れた時間管理のスキルを自慢する声です。仕事が多すぎて、片付けられないことへの不満ではなく。お互いの時間管理のスキルから学べることがあるかもしれません。以下に、わたしの時間管理方法を3つ紹介しましょう。

1.制限時間を設定する

一つの作業の制限時間を設定するほど、より生産的に仕事ができ、優先順位の低い仕事に時間を使うことが少なくなります。ある作業をする時間を45分と決めたなら、45分間だけ作業に取り組み、制限時間が過ぎたら、次の作業へと進むのです。たとえ作業が完璧にできなかったとしても。

2.スケジュール表を使う

仕事を大量に抱えているのであれば、スケジュール表を使って、カレンダーに予定を書き入れましょう。実際、計画を実行するよりも、むしろスケジュールの調整自体に時間がかかってしまうことだってあるのです。

3.余分なものを削ぎ落とす

面白くない、生産的でない、新しいビジネスにつながらない会議を減らしたら、多少の時間をつくることができました。

他人よりも優位に立ちたいという欲求は、誰しもが持っています。その事実を認めるのです。

次回友人に会ったとき、自分がいかに忙しいかを語りたくなったら、一旦立ち止まって、その理由を考えましょう。会話が愚痴モードにならないよう、話題を考えましょう。これを習慣付けることができれば、自分がいっぱいいっぱいだと感じないようになるかもしれません。そして、それこそが、正にあなたが自慢すべきことではないでしょうか。

Please Stop Complaining About How Busy You Are | Harvard Business Review

Meredith Fineman(原文/訳:佐藤ゆき)