『世界基準で夢をかなえる私の勉強法』(北川智子著、幻冬舎)は、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学で数学と生命科学を専攻、同大学院でアジア研究の修士課程を修了、プリンストン大学で日本中世史と中世数学史の博士号を取得。2009年から3年間はハーバード大学で教鞭をとり、現在は英ケンブリッジ・ニーダム研究所を拠点に世界をめぐり、学会発表や講演などを行なっているという人物。前著『ハーバード白熱日本史教室』(新潮新書)も話題となりました。

私の学びについての経験をシェアすることで、日本の誰かが勉強に対してポジティブになり、もっともっと能力をのばせるかもしれない。そんな若い世代の可能性を信じる気持ちから、自身の経験を支えてきた勉強法のポイントをまとめることにした。

(4ページ「まえがき」より)

という記述からもわかるとおり、豊富な経験を持つ著者がその勉強法を説いた書籍です。内容の大半は具体的な体験談ですが、各章の最後にまとめられている「SUMMARY--私の勉強法」からいくつかをピックアップしてみます。

私の勉強法1(27ページより)

  • 今しないと後悔するということは、何がなんでもやってみる
  • 身の回りの英単語を、ビジュアル化して暗記する
  • テスト勉強は急がば回れ、自分の手が届くところから
  • 大きな壁は、回り道をゆっくり歩いて乗り越える
  • 言語の習得には時間がかかることを受け入れる

カナダではじめて短期語学留学をした際、著者は英語のレベルが低かったため、いったん試験勉強をあきらめ、焦らずゆっくり準備をすることにしたのだとか。教科書の丸暗記やTOEFL攻略法などにとらわれず、「目の前にある生きた英語を観察し、たどたどしくも、とりあえず使ってみることで、英語を自分の言葉にしていった」わけです。たしかに、これはとても大切なことかもしれません。なお、先の勉強法にも通じていく「のんびりのびのびと、好きなことを追究していく」という楽観的な姿勢も、この時期に培われたのだといいます。

私の勉強法2(42ページより)

  • 最初から試験問題に取りかからず、まずたくさん英語を使う
  • 絵本と子守唄で自然な英語を学ぶ
  • リピート戦法で会話のぎこちない間をつなぐ
  • いざとなったら身振り手振りだけでなんとかなる
  • いろいろな世代やアクセントの英語に触れる

カナダで暮らしているとき、著者は「毎日英語に悩むのではなく、ハッピーに暮らすことにこだわった」のだそうです。事実、なにより勉強になったのは、日常生活で自分を表現するために必要な英語、目の前にある生きた英語をつかみ取ることだったそう。自分の幸せのレベルを保つこと、家族や周りの人たちの幸せのレベルを上げることを目標にすれば、英語は楽しく勉強できるわけです。

私の勉強法3(63ページより)

  • 大学に入ったら「頼れるのは自分だけだ!」と覚悟を決める
  • 無駄のないメモ取り、自分のためのノートづくりをする
  • 詳細よりも全体像を把握するよう心がける
  • きれいなノートより、自然な記憶力が役に立つ
  • 記憶で大事なのは重要なことと重要でないことの「情報整理」

きれいにノートを取るよりも、ノートを取らずに自然な記憶力に頼る方が効率がよいと著者はいいます。そして、そのために重要なのが「記憶の反芻」。机の前でもパソコンの前でもなく、近所の川辺などで記憶を鍛えることによって情報を整理することを心がける。すると集中でき、効果的に記憶できるということです。

留学初期にあたるこの段階の勉強法はご覧のとおり、「慣れない英語をいかに克服したか」というきわめて初歩的な内容です。しかしそれは、海外に出ようという人なら誰しもがぶつかる壁でもあるはず。だからこそ、同じ意思を持つ人は気持ちを刺激されるかもしれません。

(印南敦史)