大村崑インタビュー「90歳でも筋肉は裏切らない!」筋トレで人生が180度好転
今が一番元気、体が若返っているという喜劇俳優の大村崑さん。近著の『崑ちゃん90歳今が一番、健康です』(青春出版社)は、健康に悩む人々に勇気と希望を与えてくれる。若い頃に大病を患い、40歳までしか生きられないと医師から宣告されたという年齢をはるかに越え、まだまだ現役バリバリである。人生の転機になった86歳から始めた筋トレ生活とはいったいどんなものなのか。何かを始めるのに遅すぎるということはないことを熱く語ってもらった。
- 大村崑(おおむら・こん)
1931年、兵庫県生まれ。喜劇俳優。『やりくりアパート』『番頭はんと丁稚どん』『頓馬天狗』等に出演し、国民的大スターとして「崑ちゃん」の愛称で幅広い層から親しまれる存在となる。近年はNHK大河ドラマ『西郷どん』(2018年)、山村美紗ミステリー『赤い霊柩車』シリーズは、2022年に30年目に突入する。著書に『崑ちゃん90歳今が一番、健康です!』(青春出版社)がある。
お腹まわり91cm
愛妻に「もう、衣装をコーディネイトしてあげない」宣言される
自宅玄関で出迎えてくれた大村崑さんの立ち姿にまず、驚かされた。背筋は伸びており、とても若々しく、90歳とは思えない。これも筋トレ効果のなせる技なのか。86歳で筋トレを始めるというのは、普通はなかなかできないことだと思うのですが、なにがきっかけだったんでしょうか。
大村
僕は衣装は自分で選べなくて、25年程前から瑤子さん(大村さんの奥さん)が担当してくれてたんですが、「なんでジーンズはかないの?」と聞かれて、阪急百貨店へ買いに行ったんです。ところが、試着を勧められたのはおなかまわりが1mのサイズだったんですわ。おなかまわりが大きいということは、足も長すぎてどうしようもない。当時、おなかまわりが91cmもありまして、ポッコリ出ていたんですわ。あきれてもう衣装を担当できないと匙を投げられたんです。お腹を引っ込めるために瑤子さんから「ライザップへ行こう。私も通うし、近所だし」と誘われたんです。たしかトレーナーが一対一で運動のやり方を指導してくれるやつやとはわかっていたんですが、まったく乗り気じゃなかったんですわ。まあ、瑤子さんがいうならと付いていったわけです。
ザ・おじいちゃん生活からの脱却
誘われてしぶしぶだったんですね。それまで運動はされていたんですか?
大村
食べて寝る生活で、虚弱体質でもあったんで行きたくはなかったんです。ただ、ライザップで、最初に迎えてくれた受付のお姉さんが親切でねえ。にこやかで感じがよいので、ついつい入会するいうてました。
即、入会となったわけですが、最初はなかなかきつかったんじゃないですか?
大村
最初は、スクワットも4回が精一杯で、それ以上続けられない。こら、あかんわって。しかも筋肉痛で。でもね、その筋肉痛のかわりに新しい筋肉がつくんですよ。週に2回、通っているんですが、トレーナーのスーパーマン(大村さんは、トレーナーのことをスーパーマンと呼んでいる)とは笑いながらやってます。ずっと僕は見て覚える芸をしてきたんです。人の芝居を舞台袖で見て覚えてきた。スーパーマンも見本を見せてくれるし、うまいと褒めてくれる。
大村
今では、バーベルを肩に背負ってスクワットをしているんですが、バーベルの重さは35キロになりました。少しでも重たいバーベルを背負えるのが嬉しいんです。まともにスクワットもできなかったんですから。ちょっと、僕の太ももを触ってみますか?
(触らせてもらったのですが、パンパンに硬かったのには驚かされました)
通い始めて2,3か月経った頃ですかねえ。体重が減ってきたんですが、「まわりから崑さん、どっか悪いの?」って聞かれるんです。みんな無茶無茶いいよる。筋トレ効果でお腹はへっこんできたんですが、顔も痩せてしまって。顔は商売道具なんで、これは困るでしょ。トレーナーのスーパーマン(大村さんは、トレーナーのことをスーパーマンと呼んでいる)に筋トレメニューをお腹まわりに集中させ、顔はあまり痩せないようにと献立を変更してもらいました。
筋肉がついてきたら黒い髪が生えてきた
白髪だったのに、最近は黒い髪が生えてきたという大村さん。ジムに通うだけでなく、自宅でも気が付いたら筋トレをしているという。ゴルフボールやゴム製のトレーニングチューブなど、部屋のいろんな場所に置かれていた。朝起きた時、テレビを見ながらと、自宅でできる運動を次々に実演を交えて教えてくれた。
大村
お金もかかるし、誰もがジムに通えるわけじゃないでしょ。家でも簡単にできる健康法があるんです。僕は、気が付いたらやってます。
発声練習
「アエイオウー、アエイオウー」
足指の筋肉の鍛錬
ゴルフボールを5本の足指で握る
大村
よく、年取ったらペタペタ歩いて転倒しやすくなるでしょ。足の指の筋肉を鍛えるといいんです。瑤子さんは足の指を使って「グーチョキパー」ができるんですよ。瑤子さんは「人間出来ないことはない」って言うんですよ。筋トレをするまでは、朝起きてベッドからトイレに行くまで長い廊下を歩くとき、腰が曲がってたんです。今は、大きな鏡を置いて、立ち姿を見ることで姿勢をチェックしています。
腹筋を鍛える
寝たままで足を浮かせたまま上げ下げをする運動
20回→休憩→20回
大村
これなら、お金もかけずに誰でもできるでしょ。生きていくということは、お金と人間関係が大事やけど、もうひとつは筋肉です。僕、この間、計測したら健康年齢は、66歳でした。40歳で死ぬと言われてた体が信じられないでしょ。
筋肉がつくとええことだらけ。102歳まで生きられそうな気がする
筋肉がついたことで、できることが増え、どんどん元気になっている大村さんですが、
虚弱体質で、結核、肺の切除と数々の病に見舞われてきました。足腰も弱り、ヨタヨタ歩きだったそうです。86歳で筋トレを始めるまでは。筋トレを始めてから、気持ちにも変化が出てきましたか?
大村
筋肉がつくとええことだらけ。筋トレによって、肺がなくてぺちゃんこだった右胸にもたっぷり筋肉がつきました。指も筋肉で動いてる、筋肉を鍛えると骨が丈夫になるし、血流がよくなるので、歯も頑丈になりました。血流が滞ると、体のどこかに支障がでてきます。第一に髪の毛が抜けにくくなり、白髪だらけだったのに、90歳にして黒い髪の毛が生えてたんですよ。髪の毛も太くなったと美容師さんに言われました。今が一番健康です。気持ちも明るくなってきました。40歳までしか生きられないと言われたが、今は102歳までは生きられるような気がしているんですよ。筋肉よ、おおきに。
笑うことで幸せな気持ちになる
大村
僕は喜劇役者なんで人を笑わすために生きてきた。笑うことで幸せな気持ちになるんです。
常にサービス精神旺盛な大村さんは、こんなこともするそうで…
大村
沖縄の首里城の守礼門前で修学旅行生が記念撮影をしている最中にこっそり、はしっこで何度か写り込んで、眼鏡をずらたりしてね。誰か気い付いたら連絡してきよらんかと思ているんやけど、いまだに誰も言うてこんわ。駅の売店とかでね。オロナミンCくださいいうて、その場で飲んでるなーとみせかけて、こうやって、眼鏡をおろすんです。(※注1)
※注1 大塚製薬のオロナミンCドリンクのCMキャラクターとして知名度を瞬く間に押し上げた。「元気ハツラツ!」「うれしいと眼鏡が落ちるんですよ」のセリフも大流行した)
笑いながら食べるごはんは、ものすごくおいしいでしょ。怒りながら人生を送っている人は、みんな僕が見送った。香典だけでもとんでもない金額よ。笑えるのは人間だけや。
100歳になったらやってみたいことは昭和のおばあちゃん役
これから、どんな役をやってみたいですか?
大村
昭和のおばあちゃん役ですね。スマホも知らん、人情に厚いおばあちゃんを今やったらおもしろいと思うんですよ。喜劇役者として人を笑わすために生きてきた。笑うと幸せな気持ちになるでしょ。最後まで元気はつらつなジイさんでいたい。それまで筋トレ続けます。葬式の演出も決めていてね。コスモスの咲く時期がいいなと。コスモスが好きなんです。強風で倒れても次の日にはちゃんと起き上がってくる。丹波にある畑に6月くらいに種を撒いて、秋になってコスモスが咲くころに『頓馬天狗』の曲をかけてね。乗るんやったら赤い霊柩車(山村美紗ミステリー『赤い霊柩車』シリーズは、2022年に30年目に突入)に乗せてもらってね。挨拶は先に撮っておいて「長生きして、ようけ香典提供してきたさかい、この際、回収せんことにゃ。天国でみとくでぇ~、なんてね」それまでは筋トレを続けて元気で生きたいです。
取材後、「どんな仕事でも負けたらあかんでえ~」と大村さんに逆に励ましていただきました。102歳といわず、105歳、110歳とずっと元気でいてください。
楽しいお話をありがとうございました。