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GoogleやFacebookをはじめとした、シリコンバレーの大企業が積極的に取り入れていることから注目を集めているOKR。革新的な目標設定・管理ツールとして注目されるOKRとは、一体どのようなメソッドなのでしょうか。
ここでは、その概要や従来の管理ツールとの違い、設定方法について解説します。
目次
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1.OKRとは?
OKRとは目標の設定・管理方法のひとつで、Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称です。米・インテル社で誕生し、GoogleやFacebookなど、シリコンバレーの有名企業が取り入れていることで、近年注目を集めています。
OKRの主な特徴は従来の計画方法に比べて高い頻度で設定、追跡、再評価すること。
また、OKRのゴールはすべての従業員が同じ方向を向き、明確な優先順位を持ち、一定のペースで計画を進行することとされています。
高い頻度で設定、追跡、再評価を実現するなら、 評価制度を効率よく回すことが重要です。Excelや紙などだと、 評価の頻度が増える分業務負荷がかかってしまいます。
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2.OKRの基本(要素と仕組み)
OKRは一つのO(目標)に複数のKR(主要な結果)が付随するというかたちで成り立っています。
それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
O:Objectives
- 定性的な目標
- チームを鼓舞するようなチャレンジングなもの
- シンプルで覚えやすいもの
- 1カ月~四半期(3カ月)で達成できる目標
- 定量的な指標(数字など)を入れない
OKRのOは組織が達成を目指すObjectives(目標)を意味します。
OKRにおける目標の特徴はシンプルで覚えやすいものであること。
定性的な(数値などで表すことができない)ものであり、基本的に定量的な(数値などの)指標は入れなくてよいとされています。
チームのモチベーションを高めるような挑戦しがいのあるもので、1カ月から四半期(3カ月)で達成できるような目標であると定義されています。
KR:Key Results
- 定量的な指標で、数値で測れる
- 数は3つくらい(2~5個程度)
- ストレッチゴール(ストレッチ目標)
- 60~70%の達成度で成功とみなす
- 自信度10分の5の難易度
OKRのKRとはKey Results(主要な結果)であり、Objectiveへの進捗を図るための具体的な指標を意味します。
Googleの元副社長であるマリッサ・メイヤー氏が「数値がなければKRではない」と言っていますが、KRは定量的な指標、つまり数値的に測れることが必要となります。
一つのObjectiveに対してKRは2~5つ程度あるとよいとされ、多すぎるとチーム内のコミュニケーションを阻害する可能性があると考えられています。
「むずかしいが不可能ではない」「ベストをつくせば達成できそう」という水準のストレッチがかかった目標が望ましいとされ、60~70%の達成度で成功とみなしています。
「自信度」を設定する
自信度という目標に対する主観的な自信を測る指標を置き、およそ自信度10分の5の目標を設定します。
自信度1は「無理、できない」と感じるもの、自信度10は「簡単すぎる」と感じるレベルが目安です。
スコアリング
- 達成度をスコアリング(採点)する
- KRごとに0.0~1.0、もしくは%でスコアリング
- KRのスコアの平均がOのスコアになる
OKRで設定した期間が終了した後は、達成度のスコアリング(採点)を行います。
一つひとつのKRに対して、達成度を0.0~1.0(Google社の方式)、または%でスコアリングします。このKRの平均がOのスコアとなります。
OKRは従業員の成績と結びつくことはなく、評価が低かったOKRは次回のOKRの糧として使用されます。ただし、スコアリングは必須ではなく、「しない方がいい」という意見もあります。
OKRは、目標設定をロジカルにできるので、社員の納得感が増し、エンゲージメント向上が期待できます。
ただ、いきなり新しい評価制度の導入するのは不安な人事担当者の方も多いはず。
評価制度とは良いものを導入すればそれで終わりではなく、運用する中でPDCAを回すことが必要なので、業務を効率化しながらPDCAが回せる目標管理ツールの導入がおすすめです。
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ムーンショットとルーフショット
OKRにはムーンショットとルーフショットの二種類があります。
ムーンショットとは「月(moon)に届くほどのショット」というその名のとおり、非常にチャレンジングな目標です。
基本的に60~70%(スイートスポットと呼ばれる範囲)の達成で成功とみなされますが、これがチーム内で「完璧にできなくてもよい」という認識を引き起こし、パフォーマンスを下げてしまうという危惧もあります。
一方のルーフショットとは「屋根(roof)に届くほどのショット」を意味するように、難しいけれど実現可能なレベルの目標のこと。100%の達成こそが成功であり、100%未満は失敗とみなされます。
・OKRに慣れていない場合
・MBOなど従来の方法から乗り換える場合
・目標達成に慣れていない場合
などは、ルーフショットのOKRを設定するのがおすすめです。
3.OKR導入の6つのメリット・効果
有名企業が次々採用しているOKR。導入の根拠として、以下の6つのメリットがあると言われています。
- 迅速な展開
- 全社的な相互連携
- 目標設定の時間を節約
- 従業員エンゲージメント向上
- 目標に集中
- 大胆な目標設定
①迅速な展開
OKRは目標サイクルが1ヵ月~四半期と短いため、フレキシブルな調整・変更が可能であるほか、革新性を高め、リスクとムダを削減できます。
②全社的な相互連携
企業の中で同じフォーマットで共有されるため、組織内の各チーム間のコミュニケーションを改善します。
③目標設定の時間を節約
前述のとおり、OKRのO(目標)はシンプルなので、設定に時間がかかりません。
上の階層の目標をもとにするので、ゼロから考える必要はありません。
④従業員エンゲージメント向上
全社で目標を共有しているため、企業への貢献を従業員一人ひとりが実感しやすいと考えられます。
また、そもそもエンゲージメントが向上するような目標にすることが重要です。
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⑤目標に集中
限られた目標に集中することで、一つひとつの目標により高いレベルで取り組むことができます。
目標がありすぎると、どれを追いかければいいのかがわかりづらくなります。
⑥大胆な目標設定
報酬制度とは切り離された目標管理ツールなので、良い意味で失敗を恐れることなく、より高い目標に挑戦しやすくなります。
OKRのメリットを最大化するなら、運用のシステム化が大切です。というのも、紙やExcelのシートを使用した場合、人事担当者や社員の負担が大きいからです。OKRを導入する前には、運用の負担とシステム導入によって解消できる負担を明確にしておきましょう。
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4.OKRと他の目標管理との違いとは?(MBO、KPI)
OKR以外の目標管理ツールとしてMBO(Management By Objectives:目標管理制度)やKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)があります。ここでは、これらの目標管理の方法とOKRの違いについて説明します。
MBO(目標管理制度)とOKRの違い
業績評価のための測定ツールとして用いられるMBO。OKRとはどのような違いがあるのでしょうか。
①レビューの頻度
一般的に、MBOを使用している企業は年に一度パフォーマンスの評価を行います。一人ひとりの社員について一年間を通じた目標を設定し、年の最後に業績を分析・評価するのです。
一方、OKRはより高い頻度でのレビューを推奨しています。1ヵ月~四半期という短期間ごとに見直しを行うことで、パフォーマンスのこまめな軌道修正が可能となります。
②測定(達成度の測り方)
MBOのスコアリングは柔軟で定量的、定性的、またはその両方の測定を用いるなど、組織によってさまざまです。
一方、OKRは「SMARTゴール(Specific=具体的に、Measurable=測定可能な、Achievable=達成可能な、Related=経営目標に関連した、Time-bound=時間制約がある)」という目標設定の手法です。定量的なスコアリングを行うので、簡単かつより正確な判定が可能となります。
③共有範囲
MBOの目標は各従業員と上司・人事担当者のみの間で共有されます。一人ひとり個別に設定され、全体に開示されることはありません。これは、業績が直接に報酬に影響を及ぼすことも関係しています。
一方、OKRの目標は企業・チームの中で共有されます。一人ひとりのパフォーマンスは組織内で公開され、目標に合わせて調整されます。OKRの目標とは組織全体の目標であり、それを達成するためにチーム内で連携する必要があるのです。
④目的
MBOは、一年ごとの業績に基づいて従業員の報酬を決定することを主な目的としています。このため、MBOは個々のパフォーマンスに焦点を当てた目標管理となります。
対するOKRの焦点は、企業が高い目標を達成するための可能性を広げることであり、個々の報酬には影響しません。OKRの整合性は、従業員全員が共有する目標の裏にある「なぜ、この目標なのか」という理由を理解するのに役立ちます。
⑤目標達成の期待水準
MBOでは、目標を達成することが報酬と直接関係するため、目標に対して100%以上のパフォーマンスをこなすことが期待されます。逆に言えば、100%に満たなければ報酬が減る可能性もあるのです。
一方、OKRは平均的に60~70%の成果が期待されます。反対に、常に100%達成することができてしまうような目標は、野心的・現実的であることが理想とされるOKRにふさわしくないとみなされます。
なぜOKRでは目標管理と報酬制度を分離するのか?
目標を報酬制度と結びつけてしまうと、管理職を含む従業員が達成率を上げるために目標を低く設定してしまう可能性が出てきます。報酬のために低い目標しか設定できないという状況が定着し、企業の業績が低迷してしまう可能性が高まります。
OKRが報酬制度と結びつかないのは、その目的を企業・組織の業績を伸ばすため、大きな目標を達成することに置いているからなのです。
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KPI(主要業績評価指標)とOKRの違い
ビジネスシーンで日常的に用いられているKPIというツールがあります。では、OKRとKPIはどう違うのでしょうか?
OKRは最終目的地がどこなのか(目標:Objectives)、どこを通っていくのか(主要な結果:Key Results)を示すカーナビのようなツールです。
KPIは車で言えば計器盤(インパネ)。時間内に到着できる速度かどうか、燃料は足りるかどうか、など目的地へ向かう中での過不足・進捗をひと目で確認できます。
「どちらが優れているか」というものではなく、両方を駆使することが目的地到達の近道になると言えるでしょう。
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5.OKRの導入・運用ステップ
OKRの導入から運用は以下のような10のステップで行います(ここでは、四半期ごとにレビューを行うケースを紹介します)。
- 企業OKRの設定
- チームからのフィードバックを元に企業OKRを調整
- チーム(部署)OKRの設定
- チームOKRを共有し合い、調整
- 個人OKRの設定
- 個人OKRを共有し合い、調整
- 週に1度「チェックイン」をして進捗確認
- 中間レビューを行う
- 最終レビューを行う
- 次の四半期の企業OKRを設定
①企業OKRの設定
まずは、企業全体のOKRとして企業OKRを設定します。
基本的には、一つの企業にあたり一つのOKRを設定することがよいとされますが、事業が複数に分かれている場合は複数設けても構いません。
経営陣がトップダウンで決めてしまうのではなく、全従業員から目標を集めたり、各部門からさまざまなアイデアを取り入れたりと、ボトムアップによる意見も参考にして決定するのが理想的です。
②チームからのフィードバックを元に企業OKRを調整
企業OKRを各チームに展開しフィードバックを受けます。このフィードバックをもとに必要に応じてOKRを修正します。
③部門/チームOKRの設定
企業OKRをもとにそれと連動させて各部門、チームのOKRを設定していきます。
これもトップダウンではなく、ボトムアップの意見を尊重した決定が理想です。
④部門/チームOKRを共有し合い、調整
自分のチームのOKRと他のチームのOKR、企業OKRを参照し、整合性を確保するために必要に応じて修正を行います。
⑤個人OKRの設定
部門/チームOKRと連動した個人のOKRを設定します。
マネージャーと相談しながら、状況に応じてメンバーにも相談して決定していきます。
⑥個人OKRを共有し合い、調整
チーム内で各メンバーの個人OKRを確認。整合性を確保するために、必要に応じて修正します。
⑦週に1度「チェックイン」をして進捗確認
週に一度チェックインを行い、チーム内で進捗を確認します。
(チェックインについては後述します)
⑧中間レビューを行う
設定したレビュー期間の中間地点(四半期の場合は1.5~2カ月経過時点)で、全体的なレビューを1、2回行います。このとき、進捗に遅れがあれば改善点を議論し、必要に応じて目標を変更しても構いません。
⑨最終レビューを行う
レビュー期間の最後にスコアリングを行い、各OKRの結果を評価します。
要因を分析し、達成度が低すぎる/高すぎることはないかを確認し、今後同じ目標を続けるか、別の目標に切り替えるかを判断します。
ここで気を付けたいのは、このスコアリングは人の評価ではないということです。
⑩次の四半期の企業OKRを設定
⑨で行った最終レビューを参考に、次の四半期の企業OKRを設定します。
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6.OKRを効果的に運用し、継続させるには?
OKRの運用には高い頻度での進捗確認が鍵となります。この方法として効果的なのがチェックインという短いミーティングです。
ここではチェックインの概要と、そこで確認すべき進捗の内容について説明します。
週次でチェックインを行う
チェックインとは進捗を確認するための短い儀式を意味します。OKRではこのチェックインが大きな役割を果たします。
ペースは一週間に一度、1時間以内の短時間で行います。チェックインの中で確認すべきポイントは以下の4点。
- OKRの進捗
- 自信度の確認・更新
- 課題、達成阻害要因
- 次の一手
注意しなければならないのは、チェックインはうまく行っていない原因について言い訳をするための場ではなく、あくまで結果をよくするための方法について話し合うための場であるということです。
①OKRの進捗
OKRの進捗を定量的に確認します。
目標に対して、現在どこまで進んでいるのかという「実績」と、現状のペースで期間内にどこまで達成できるのかという「見込み」を明確にします。
②自信度の確認・更新
OKRにおいては、①のような定量的な確認だけではなく、定性的な自信度の確認も必要になります。
たとえば、タスクを実際に進める中で、当初仮説として立てていたことが少しずつ検証されていくはずです。
それによって実現可能性が変化していないかを見極め、「これ以上進めても時間の無駄だ」と判断した場合には、目標を変更することもあるのです。
③課題、達成阻害要因
現在の課題と達成を阻害する要因を分析します。
進捗が遅れている場合や、期限に遅れてしまいそうな場合は、原因を考え、どうすれば問題を解決できるかを考えます。
チーム(場合によって他チーム)の助けが助けがあれば解決できるのであれば、積極的にリクエストや提案をしていきます
④次の一手
目標を達成し、結果をよりよいものとするのために、次にやるべきことは何かを確認します。
進捗確認で、現状のままでは達成できない見込みだった場合、今までになかった新しい行動計画がうまれていることが望ましいです。
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