こんなにうまい肉料理があったのか
上の写真は私が愛してやまないネパール料理店「バルピパル」(東京・西小山駅そば)で提供されるマトンチョエラを撮影したものです。
チョエラは簡単に言えば、肉を焼いて、スパイスをまぶした料理です。
バーベキューをイメージされるかもしれませんが、まあ、そんなに遠くはありません。
でも、これがべらぼうにうまい。普通のバーベキューとも違う。
なぜうまいかと言えば、その調理過程に秘密があるから。今日はその作り方を簡単に説明していきます。
今回の記事制作にあたり、バルピパルを経営する友人ラジェに調理のコツを教わって参考にしました。レシピや分量は私のオリジナルですのであしからず。
まず、近所の輸入食材店で冷凍のマトンを買ってきました。
ちなみに、チョエラはマトンの他にも鶏肉を使ったものもありますので、どちらでも問題ありません。個人的にはマトンの肉肉しさがスパイスとよくマッチすると思っています。
チョエラには「ゆでる」「焼く」の2パターンがあります。
本日は肉のうま味と歯応えが楽しめる「焼き」系のチョエラを試してみようと思います。
【材料】(2人前)
- 肉(マトンか鶏肉) 500g
- 塩 大さじ1
- パクチー お好みで適量
(A)
- クミン 小さじ1
- レッドペッパー 小さじ1/2
- ターメリック 小さじ1
- コリアンダー 小さじ1
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- しょうが 1かけ(みじん切り)
(B)
- 油 大さじ2
- にんにく 少々
- しょうが 少々
- クミン 小さじ1/2
- ターメリック 小さじ1/2
- フェネグリーク 少々
まずは、肉に合わせるスパイスを用意します。
肉500g に対してこれくらい。塩はお好みに応じて少し少なめにしてもいいかもしれませんが、バチッと味を決めたほうがおいしいです。
冷凍のマトンを解凍します。
私は前日から冷蔵庫に移して自然解凍させておきました。焼いてからスパイスをまぶす料理ですので、これくらいのアバウトさも大事です。
一口大にカットした肉を、油を引いていないフライパンに入れ、中火で熱していきます。
まだ半解凍だったようで、白い煙が上ります。幻想的ですね。ちなみに肉は比較的小さくカットするのがおすすめです。その理由は後ほど。
だんだん火が入ってきました。
ここで完璧に火を入れる必要はないので、数分炒めたらフライパンから取り出して、魚焼きグリルに入れましょう。最初から魚焼きグリルに入れればいいんじゃないのという意見もありますが、時短のためです。いきなり魚焼きグリルでも大丈夫です。
魚焼きグリルに入れて、中火で焼き目をつけます。
本場のネパールでは炭や薪で肉を焼き上げるので香ばしく仕上がります。それと同じ目的でグリルを使います。肉がかなり縮んだのがわかりますね。このくらい肉に熱が入ったら、再び肉をフライパンに戻して、スパイス(A)と塩を合わせてしっかりと混ぜていきます。
スパイスと塩をあえるイメージで、中火で軽く炒めます。
こちらのマトンには下味をつけていませんから、この調味が味の決め手になります。
大きくカットして調理をすると、口に入れて噛み締めた時に、肉の味わいがメインになり、せっかくたくさんスパイスを効かせたのに全体的に味がぼやけてしまうかもしれません。
ということで、肉は小さくカットしたほうがいいというわけです。この時点で十分おいしそうですが、まだ完成ではありません。
さて。次のこの工程がチョエラのキモと言っていいでしょう。
別に用意したフライパンで(B)の材料を中火で炒めていきます。(B)のスパイスをサラダ油などの油で、中火で炒めます。熱を加えて芳醇(ほうじゅん)な香りが立ってきたらOKです。
炒めたこちらの(B)を、ジュジュッと先ほどの肉に回しかけます。
食材から出た油分や煮汁をかける「アロゼ」という技法がありますが、同じようにスパイス油でマリネする感覚でしょうか。
こうすることで、肉にうま味としっとり感が加わり、なんとも言えないおいしさを演出してくれるのです。
食べやすく切ったパクチーをお好みで混ぜたら完成。
本日はチウラ(分量外)と呼ばれるお米を乾燥させたものと一緒にいただくことにします。もちろんご飯と合わせてもばっちり。エスニックなお皿に盛り付けました。
今回使った肉はマトンなので、歯応えがあります。
口に入れた瞬間、クミンやターメリックなどのスパイスの香りが強烈に鼻腔をくすぐります。それと同時にジュワッとしたうま味があふれてきます。これは最後に回しかけたスパイス油でしょう。
噛み締めるとマトンとスパイスの味わいが混然一体となって口の中であふれ出します。とりわけクミンのさわやかな香りが、マトンの濃厚な味わいを引き立ててくれます。
ともすればボソボソとしがちなマトンですが、焼いたあとに油を回しかけたことで、こんなにジューシーな食感になるとは。とにかくお酒が進むつまみの完成です。
チョエラの作り方、簡易バージョン(鶏肉編)
せっかくなので鶏肉のチョエラも作ってみます。
こちらは簡易バージョンで、少し作り方を変えてみますね。一口大にカットした鶏肉を、そのまま油の中に入れて、中火で5分ほど熱を通します。
【材料】(1人前)
- 鶏肉 200g
- カレー粉 小さじ1
- クミン 小さじ1
- 塩 小さじ1
- 油 適量
- パクチー お好みで適量
火が通った鶏肉がこちら。しっかりと火が通っていることを確認してください。
火の通った鶏肉にスパイス(カレー粉とクミン)、塩をまぶします。
今回はカレー粉とクミンを混ぜたものをかけました。
それをよく混ぜましょう。すでにおいしそうな見た目になってますね。チョエラのキモ、スパイス油の回しがけは、先ほど油通しをしたことで、すでにしっとりジューシーに仕上がっているので必要ありません。
でも、これだけだと少し香ばしさが足りないんです。
チョエラのおいしさはあの香ばしさにあります。どうしよう。ここで登場するのがトーチバーナーです。こちらで鶏肉の表面をあぶっていきます。食欲をそそる香りがして、きれいな焦げ目がついたら完成。最後に、お好みでパクチーをのせます。
さていただきましょう。
こちらも間違いなくおいしいことはわかっていました。鶏肉の舌ざわりとクミンの芳香が相まって、どこかタンドリーチキンを思わせる仕上がりです。
でも、タンドリーとはまた違った、鶏肉のしっとり感。異次元のうまさです。これは確実にお酒が進むことでしょう。
こちらの簡易版でしたら、ものの10分もあればできます。
マトン、鶏肉どちらも最高なので、ぜひ一度試してください。
そして、お店で食べるチョエラはやはり一味違うので、ぜひお近くのネパール料理店に足を運んでください。お酒がとにかく進むから気をつけて。
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)