ロサンゼルス火災で見えたEVの難点。リチウム電池は鎮火も処理も難しい

  • author Thomas Maxwell - Gizmodo US
  • [原文]
  • 中川真知子
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ロサンゼルス火災で見えたEVの難点。リチウム電池は鎮火も処理も難しい
Image: Ringo Chiu / Shutterstock.com

カリフォルニア州ロサンゼルスの大火災で甚大な被害が出ています。

住む場所だけでなく、大切な思い出まで失ってしまったといった報道を見聞きするたびに胸が痛くなりますよね。

大規模火災の原因は1つではないようですが、消火に手こずる要素はいくつもあり、その中にEV(電気自動車)の存在があるのだとか。

環境にやさしいと言われているEVですが、何があったのでしょうか…?

有害物質も発生

EVとは、エンジンの代わりにバッテリーと電動モーターで駆動する車のこと。環境にやさしいといわれているのは、ガソリンやディーゼル燃料を使わないからです。

でも、リチウムイオンバッテリーを使っているのが、今回は裏目に出てしまったみたい。というのも、リチウムイオンバッテリーは燃焼中に酸素を生成してしまうため、消火には大量の水が必要です。それだけでなく、大量の有害廃棄物も発生。適切に処理しなければ、雨が降ったら有害物質を含んだ水が海に流れ込む可能性もあります。

そういった消火活動の複雑さから、EVを製造販売しているTesla(テスラ)は、EVの消化方法を記したガイドを公開していますし、ゼネラルモーターズも火災への対応方法について、救助隊を対象に4時間の訓練を提供しました。

カリフォルニア州はEVの普及が進んでおり、今回の大規模火災でもたくさんのEVが燃えたのだとか。そして、都市部でも火事が増えた原因の1つがEVだと予想されています。

良い側面ばかりが語られがちのEVですが、難点が浮き彫りになったかもしれません。

マウイ島火災の経験を生かす

2023年、マウイ島で大規模火災が発生し、その際にも多くのEVが燃えてしまいました。このときの経験が、南カリフォルニアでのバッテリー処理にどのように役立ったのかについて、Bloombergは消防士にインタビューしています。

「2023年のマウイでの火災時に開発された対応プロトコルが、今回のロサンゼルスでの処理に活用されます。しかし、今回の規模や危険性は、それをはるかに上回るものです。

これまでにも州内で火災は起きていますが、これほど都市部かつ住宅や構造物が多い地域で発生した火災は初めてです。そのため電気自動車やその他のエネルギー貯蔵システムが、多く関与していると予想されます」

こう話したのは、サンディエゴの消防士で、リチウムバッテリーの危険性に詳しいロバート・レゼンデ氏。「今回の作業は相当な規模になると予想しています」とも語りました。

マウイでは、環境保護庁(EPA)が1,400台以上のEVから30トン以上のリチウムバッテリーを回収し、リサイクルのために輸送したと伝えられています。

カリフォルニア州のケースはこれを上回るのでしょう。

それでもEVが人気なワケ

環境への配慮が叫ばれる中、売り上げ台数をメキメキと伸ばしたEV。しかし、火災発生時における消火のしにくさに加え、重要による道路インフラへの負担、同時充電時の電力網への負荷などの可能性が懸念されており、プラス面ばかりではありません。

それでも人気なのは、生産、使用、廃棄までの行程で排出される温室効果ガスの総量が、ガソリン車やディーゼル車のそれと比較した場合、70%低いことなどが評価されているから。将来的にはリサイクルシステムやインフラ整備が進み、課題が徐々に解決されるだろうと期待されています。EVの消火に大量の水を使わずに済むための技術の開発も進んでいるため、過渡期と捉えている人も多いようです。

とはいえ、トップ画像のように激しく燃えたEVを見たり、都市部にまで広がった火災の原因の1つがEVかもしれないといわれたりすると、「過渡期」の一言で済まされず、一刻も早いインフラ整備が望まれるところ。

それにしても、ロサンゼルス火災、本当に心配です。