イギリス先史時代、「人間を殺して食べる集団がいた」という衝撃の事実

  • author Margherita Bassi - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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イギリス先史時代、「人間を殺して食べる集団がいた」という衝撃の事実
Image: Schulting et al. 2024 / Antiquity

根っこにあるものに既視感が…。

1970年代、イギリスのサマセットにある竪穴で発見された先史時代の人骨は、ただの考古学的発見じゃなかったみたいです。最近になって、その人たちに起こったとんでもない事実が明らかになりました。

明らかになる暗い食人の過去

イギリスとヨーロッパの考古学者たちが、イギリスの初期青銅器時代紀元前2500~1200年頃)の37体の遺骨を分析したところ、史上最大級の虐殺事件の証拠を発見してしまったそうです。

この初期青銅器時代の比較的平和なイメージを覆しかねない衝撃的なオープンアクセスの調査結果は、学術誌Antiquityに掲載されています。

サマセットにあるチャーターハウス・ウォーレンという考古学遺跡の深さ15メートルの竪穴に、3,000点を超える人骨や骨片が眠っていました。

男性、女性、子どもも含まれ、研究者はコミュニティの可能性もあるといいます。そして恐ろしいことに、彼らは竪穴に放り込まれる前に、殺されて解体され食べられた可能性が高いそうです。

A childs mandible with cut marks
Image: Schulting et al. 2024 / Antiquity

オックスフォード大学のRick Schulting氏を中心とする研究チームによると、頭蓋骨には鈍器で殴られた跡死亡時にできた骨折、さらには肉をそぎ落とした跡と思われる切り傷(上の画像参照)が見つかったそうです。後者2点は特に、虐殺と食人が意図的なものであったことを示唆しているそうです。ガチか…。

でも、飢えていたためとか、何らかの儀式だったという可能性はないみたいです。明らかに暴力的で、争った形跡もないため、不意を突かれたのではないかと考えられています。また、同じ竪穴から牛の骨が発見されていることから、食料不足ではなかったとされています。じゃあ、なぜ?

社会的要因が引き金の非人間化が食人につながる

Skull injuries
Image: Schulting et al. 2024 / Antiquity

研究チームは、調査結果のプレスリリースで次のように述べています。

「食人は、死者を『非人間化』する手段だったのかもしれません。肉を食べ、動物の骨と人骨を混ぜることで、殺した側は敵を動物と同一視し、非人間化していたのでしょう。」

さらに謎なのは、この暴力行為の動機です。当時のイギリスでは、気候変動や資源を巡る競争といった、争いを引き起こすような出来事はなかったとのこと。また、民族紛争を示す遺伝的証拠も見つかっていないんですよね。

研究者たちは、社会的要因によって対立が起こった可能性を指摘しています。最終的には、窃盗や侮辱などが引き金になったかもしれないそう。さらに、以前の研究でペスト感染が確認された子どもたちの存在も、緊張をさらに悪化させたかもしれません。

研究チームはプレスリリースで

「結局のところ、この調査結果は先史時代の人々の姿を描き出しています。彼らにとっては、侮辱や復讐の繰り返しが、不釣り合いな暴力的行動につながった可能性を示しています。」

と述べています。

残念ながら、こういう状況って、近年もよく見られる気がしますね…。

紀元前2500年から1500年のイギリスにおける暴力的な争いの直接的な証拠はほとんどありませんが、今回の発見によってこの時代が比較的平和だったとする説に疑問が生じるのは間違いなさそうです。

復讐の連鎖を止めるヒントは先史時代にあり?

Schulting氏はこう話しています。

「この時代は、多くの人が考えるよりもかなりダークです。……チャーターハウス・ウォーレンは、過去についての考え方を私たちに問いかけてくる貴重な遺跡のひとつです。……一度限りの出来事であった可能性が低いことから、この物語を伝える重要性はさらに高まります。」

研究論文は、次のように結論づけています。

「現段階において、私たちの調査は答えと同じくらい多くの疑問を提起しています。イギリス先史時代の明らかに暗い出来事をより詳しく解明するための作業は継続中です。」

先史時代の不可解な残虐行為に対して、私たちにできることは何もありませんが、おそらく、歴史からだけでなく先史時代からも学ぶことで、現代を生きる私たちが直面する復讐の連鎖を止めるきっかけにできるかもしれません。