考え抜かれたデザイン。
ヒラリー・クリントン氏の大統領選出馬が表明されました。が、それは予想通りも予想通り、何も意外ではない話。驚いたのは、なんとも巧妙な彼女のキャンペーンロゴです。ブルーのHに、真っ赤な矢印。矢印の先に彼女が見るのは勝利でしょう。
ロゴ自体は、大胆かつ現代的なデザイン。また、全米で行なわれるキャンペーンで繰り返し目にすることになるので、飽きのこないシンプルさ、フラットさも好感触。大統領選あるあるの国旗をあしらうデザインを脱したところもナイス。オバマ氏の「O」ロゴも好評を博しましたが、ヒラリー氏だって負けていません。鍵となるのは、Hの文字に上手くミックスされた矢印。
ネット上ではロゴが公表されるやいなや話題となり、Twitterではちょっとした祭状態に。やれ、病院の標識だ、旧NBCロゴだ、イギリスのスーパーだ、WikiLeaksの真似だ、はたまた9.11を思わせるロールシャッハテストだ…。中には、ヒラリーロゴスタイルでフォントを作った強者まで。
ロゴは、グラフィックデザイナー・Michael Bierut氏によるデザインだと報じられていますが、本人から、肯定も否定も正式コメントはなし。ロゴの大きなH、色、形といろいろデザインのポイントはありますが、なによりも矢印。ロゴに矢印がある意味は大きいのですが、それはその使い勝手の良さにあります。
ロゴにおける矢印は、動き、スピード、正確さを表現することから、スポーツ関連ブランドでよく使われます。
矢印を含んだ最も有名なロゴといえば、FedExではないでしょうか。Exの間のネガティブスペースに隠された白い矢印は、見事の一言。動きと早急さを表現するロゴは、配達サービスにピッタリ。矢印はロゴデザインにおいて、非常に愛されるアイコンなのです。
インターネットを主とした企業にとって、矢印はまた別の意味を持ちます。そう、カーソルですね。送信、ロード、購入。現代では、矢印はオンラインでのアクションを表すという意味もあるのです。
ヒラリー氏の矢印Hロゴは、ポスター、 Tシャツ、バッジと多くのものにプリントされます。が、本領を発揮するのはインタラクティブ性のあるネット上。現代の選挙ではより多くの有権者にリーチできる必須の場であるインターネットで、このロゴの真価が問われます。
動き、スピード、未来を表現するロゴが、インタラクティブなネット上でさらに表現できるものは何でしょう。それは「YES」という有権者の動きです。候補者が有権者から何よりも勝ち取りたい「YES」を、矢印は表現し促すことができるのです。
もちろん矢印は矢印ですから、その先に何があるかで意味が変わってしまうことがあります。デザイナーの意図しない大誤算が生じることもあるでしょう。が、今のところ、ヒラリー氏の矢印Hロゴは非常に上手く使われ、配置されています。
例えば、ツイッター。矢印はヒラリー氏自身をさしています。また、彼女が発信するツイートをさしているとも言えます。同じくフェイスブックでも。
ヒラリー氏のウェブサイトでは、ボランティアや寄付を募るのに有効な働きを。まさに「YES」を促してます。
カスタマイズしても、ほらこの通り。
Hillary's in Iowa today! Check back here for updates as she travels across the state. #HillaryInIApic.twitter.com/NGG9swSZRA
— Hillary for Iowa (@HillaryforIA) April 14, 2015
このロゴで、世間が注目しているのはHではなくまさしく矢印。この矢印が何を指し、どこへ向うのかということです。キャンペーンにおけるロゴの成功は、開始直後の今はまだなんとも言えません。ただ、すでにハッキリ言えることは、このロゴによって、ヒラリー・クリントン氏は、矢印を用いたビジュアル文化に足跡を残したということでしょう。
Alissa Walker - Gizmodo US[原文]
(そうこ)