写真の美しさを判定する技術、ゼロックスが開発

  • author 福田ミホ
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写真の美しさを判定する技術、ゼロックスが開発

ゼロックスの研究部門が、写真の良し悪しを判定するプログラムを開発しました。高く評価される写真作品には何か特別感というか、言葉で表現するのが難しい「何か」があるものです。このプログラムでは、ある写真にそんな「何か」があるかどうかを判定してくれるんです。

そんなこと機械にわかるの? って思われるかもしれませんが、ちゃんとうまく行っているようです。少なくともアルファ版で判定された実例を見る限り、なかなかの審美眼があるようです。

このプログラムAesthetic Image Searchに「良い写真」と判定されたものと、「悪い写真」と判定されたものの違いは、並べて見るとすぐわかります。上の画像の左側の写真群には、はっとするような美しさが感じられます。特別な写真にある「何か」がそこにはあります。ぱっと目を引く何か。一方、右側の写真はそうでもありません。ぼやけてるとかものすごく構図が悪いとかではなく、ちゃんと撮れてはいます。でもなんだか平板で、ちょっと退屈な感じがします。

ゼロックスが判定しようとしているのはまさにそこです。Aesthetic Image Searchは、開発メンバーいわく「画像を特別にする要因、写真愛好家がハイクオリティだと評価する要因は何かを学習しようとしている」のです。

Aesthetic Image Searchは、現在のところどんな写真にでも使えるものではありません。いくつかの被写体、たとえば「ビーチ」「空」「花」などに特化されています。そのアルゴリズムでは被写体に合わせて複数の変数を使い分けるようになっており、確かな判定結果を導き出そうとしています。以下は「鳥」(なんか鳥じゃないものも混ざってますが)と「ポートレート」です。

111125_aestheticimage2.jpg

111125_aestheticimage3.jpg

これらの判定結果に対し、必ずしもすべて妥当だと思えない人もいると思います。美しいかどうかは人それぞれ微妙に違うものです。でも大体において、このプログラムは他より抜きんでている写真と、ありきたりな写真をうまく選別していると思います。

で、ふと疑問に思ったんですが、このプログラムに実際に高く評価されている写真作品を判定させるとどうなるんでしょう? たとえば、今年5月時点の世界最高額(3億1500万円)で落札されたシンディ・シャーマンの作品とか、その半年後に最高額記録を3億3000万円で更新したアンドレアス・グルスキーのランドスケープ写真とか。評価の指標は金額だけじゃないとは思いますが、たとえばということで。

ちょっと問いかけの形を変えると、ある写真家(アンリ・カルティエ=ブレッソンとか)が撮った写真を未公開のものを含めて何ロール分か判定させてみたら、どうなるんでしょう? 実際には写真家本人が良いと思って公開した写真と、公開しなかった写真があるはずです。プログラムによる「良い」「悪い」の判定は、そんな写真家の判断と一致させられるんでしょうか?

そこまでできるコンピューターを作れるんなら、ただ処理が速いとかだけじゃなく、人間と同じように美を理解できる、魂のある機械を作るのに近づいたことになるのでしょうね。

[Open Xerox-Thanks Oscar!]

Jesus Diaz(原文/miho)