2024年12月18日に新たなバージョン“Ver.1.4”が開幕し、さらなる盛り上がりを見せる『ゼンレスゾーンゼロ』(以下、『ゼンゼロ』)。ついに実装された新エージェント・星見雅を筆頭とした、さまざまなデザイン資料をご提供いただけたので、デザインチームの方々のコメントともにお届けする。
星見雅のデザインについて
星見雅のデザインを決める過程は、『ゼンゼロ』の美術スタイルを探求するプロセスでもありました。彼女の創作には何度も検討を重ね、最終的に現実とファンタジーのスタイルの中間という折衷案に決定。こうして彼女は、都会の洗練された雰囲気を備えながら、所属する陣営の特徴をはっきりと主張するキャラクターになったのです。
スカートの丈についてはチーム内で意見が割れたこともありましたが、最終的には課長というキャラクター設定に最も適した、真面目でストイックな性格を強調できる長いスカートを選びました。
雅のデザインの変遷
また、星見雅の武器“骸討ち・無尾”は妖刀です。“妖”という存在の解釈について、 私たちは“無尾ちゃん”という刀の精霊のような概念をデザインすることにしました。そのため、 実際のゲーム内では“妖”と“刀”のあいだに多くの相互作用や融合が見られるようになっています。(阿兔)
骸討ち・無尾の初期デザイン
対ホロウ6課のコンセプト
対ホロウ6課陣営のデザインにおけるビジュアル面の主要なポイントのひとつは、“サラリーマン”です。確かに、“サラリーマン感”が少し強いかもしれませんね(笑)。ですが、デザイン当初にチームが思い描いていた陣営のイメージは、みんなが仕事終わりにいっしょに食事をするようなシーンでした。
また、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、 対ホロウ6課はH.A.N.D.に所属しているため、対ホロウ6課の各メンバーのデザインには“手”の要素が取り入れられています。星見雅のベルトのバックルが“手”の形をしているのも、対ホロウ6課陣営のビジュアルポイントのひとつなのです。(水熊)
陣営のコンセプト
私たちは『ゼンゼロ』のキャラクターを、登場した瞬間にプレイヤーの記憶へ残る存在にしたいと思っています。豊富な種族の導入に加え、“陣営”の概念を加えることも、この目標を達成するための大きな方法のひとつです。
もしも、キャラクターデザインの豊富さだけを考え、キャラクターの識別のしやすさを考慮しなければ、時間が経つにつれてキャラクターの表現が表面的になり、逆にプレイヤーの“目がくらむ”ような結果になってしまう恐れがあります。(阿兔)
初期の陣営雰囲気イラスト(邪兎屋)
初期の陣営雰囲気イラスト(ヴィクトリア家政)
エージェントや陣営アートの取り組みについて
これらの世界観アートや陣営アートなどの多くは、単なる宣伝のためではなく、プロジェクトチーム内で事前に“方向性”を擦り合わせるためのもので、直感的かつ気軽な方法で、全体のデザインスタイルを理解することを目的としています。
陣営のテーマが明確になった後、IP、シーン、アニメーションなどの各チームは、それをもとに自分たちの特長や創造力を活かして、 多様な形式で異なる気質の個性の表現を実現させています。
各陣営をデザインする際は、映画のような雰囲気の基本設定方針を作成します。例えばカリュドーンの子は、ワイルドな西部劇を彷彿とさせるスタイルを持っています。また、カリュドーンの子が有するすべての乗り物には、実在のモデルが存在しているため、知っている人が見れば思わずニヤリとしてしまうことでしょう。(水熊)
初期の陣営雰囲気イラスト(特務捜査班)
初期の陣営雰囲気イラスト(対ホロウ6課)
カリュドーンの子のメンバーについて
カリュドーンの子の全キャラクターは、彼らの乗り物を中心にデザインされています。たとえばパイパー。彼女は、典型的かつ熱狂的なトラックドライバーとして描かれており、そのキャラクター設定もトラックを中心に展開されています。また、彼女の武器も車の部品で構成されているのが特徴です。
パイパーの初期デザイン
シーザーの初期のデザインも幾度となく改良されましたが、どれも彼女のバイクをインスピレーションの源にしたものという点に変わりはありません。(水熊)
シーザーのデザインの変遷
アイアンタスクについて
現在のところ、 アイアンタスクは登場する機会が少ないですが、じつは完全な設定が用意されています。その内部はパイパーの寝室であると同時に、 決まった拠点を持たないカリュドーンの子にとって重要な活動拠点になっています。チームのメンバーで、「どうすればアイアンタスクに陣営の全員を収容できるか」と考えたこともあるんですよ。(水熊)
アイアンタスクの初期デザイン
魅力的な世界観やエージェントを生み出すための秘訣
キャラクターデザインチームの視点から言えば、『ゼンゼロ』のデザインにおいて、つねにチームの長所を最大限に活かしながら、真新しいスタイルを作り出すこと、そして皆さんの固定観念を打ち破ることを目指してきました。
キャラクターをデザインする際には、プレイヤーのリアルな感情に寄り添う“共鳴”と、豊かな“幻想”とのバランスを取ることに力を注いでいます。その結果として、ゲームの世界の自由奔放な想像力を表現しながらも、プレイヤーの身近な都市生活に完璧に溶け込むデザインを実現できているのです。(阿兔)
キャラクター初期デザインの時の参考用表情集
独特なビジュアルスタイルに加え、私たちは各キャラクターをデザインするとき、まずはそのキャラクターの性格設定を考えるようにしています。そのキャラクターの設定からビジュアルデザインの方向性を展開していき、各キャラクターの外見と魅力的が相乗効果を生むようにします。そうすることで、キャラクターが登場した瞬間に、プレイヤーの心に“刺さる”ようにしているのです。(水熊)
ヴィクトリア家政について
ヴィクトリア家政をデザインを開始した当初、まず水熊さんがカリンというキャラクターを作成しました。その後、彼女をもとに同じ陣営のキャラクターを3~4人デザインすることを考えましたが、陣営のビジュアルスタイルが制服であることから、全員が揃ったときに同じ人型の姿では個々を認識しづらくなるのではという懸念が生じたのです。
そこでキャラクターの識別のしやすさを高めるために、サメや狼などのシリオンの設定を取り入れ、プレイヤーがキャラクターのシルエットを一目見れば、すぐに彼らであると認識できるようにしました。(阿兔)
ヴィクトリア家政の初期デザイン
シリオン(獣人)について
世界観の設定において、『ゼンゼロ』の世界では、大災害を乗り越えた新エリー都にさまざまな種族や豊かな個性を持つキャラクターが共存するという、カテゴライズのない都市ファンタジーを目指しています。 そのため、 最初から種族の多様性という概念がありました。
また、 キャラクターデザインの観点からは、 本作に登場するすべてのキャラクターが生き生きとして立体的であり、 唯一無二の存在になるようにと考えています。 キャラクターのイメージをより鮮明にし、 プレイヤーに強い印象を与えるため、 私たちはふだんからプレイヤーがこれまでに見たことがない、 それでいてゲームに登場すれば非常にインパクトがあるイメージはどういうものかを考え続けています。(阿兔)
ライカンの初期デザイン
シリオンや機械人のデザインについて
『ゼンゼロ』のユニークなスタイルを追求する過程で、単純な模様などの視覚的な細部での区別にとどまらず、キャラクターの識別のしやすさ、ファンタジーの世界設定、構造の合理性などの理由から、ほかのゲームでは見たことがないようなかっこいいイメージを徐々にデザインしていった結果、シリオンや機械人が生まれました。
ビリーのデザインプロセスを例に挙げてみましょう。トレンディーな都市という設定をもとにしたロジックから、最初のデザイン案は機械人ではなく、どこか定番のクールな二丁拳銃使いの青年に近いものでした。
その後、陣営のコンセプトが導入され、ビリーを邪兎屋陣営の中でより際立つようキャラクターデザインの構造的な合理性を考慮し、機械人のデザインに変更になりました。 これにより、 彼は『ゼンゼロ』にしかいないビリーとなったのです。(阿兔)
ビリーのデザインの変遷
ルミナスクエア
モール前のオブジェは、金文(※)“光”と炎を組み合わせたもので、ルミナスクエアのにぎわいを象徴しています。
※金文(きんぶん):青銅器の表面に鋳込まれた、あるいは刻まれた文字のことモール前のオブジェ
川沿いにあるオブジェ。このデザインのインスピレーションは “魯班の錠”という積み木のおもちゃからきています。背後にある広告ボードはつねに回転しますが、注意深いプロキシは全部で何通りあるか気付いていますか?
バレエツインズ
超高層ビル “バレエツインズ”は、類いまれなる財力を誇った不動産会社“バレエグループ”によって建てられます。そのオーナーの独自の趣味で、ビルの中にへんな“モダンアート”のコンテンツが飾られています。
バレエツインズの原画
ステージの中に、油絵が多く飾られた廊下があります。その油絵たちはすべて新エリー都の“名画”です。
廊下の油絵の原価
ブレイズウッド
郊外のブレイズウッドとそのステージには、ユニークな看板が数多く設置されています。その中でも、アンクルヘンリーのガソリンスタンドは、ステージ内にイースターエッグとして登場します。
このブランドは、かつて温かみのあるマスコットを活用して家庭向け顧客の安定的な獲得を目指していましたが、そのマスコットの外見があまりにも不気味だったため、かえって子連れの家族を遠ざけてしまいました。
その結果、業績は急激に悪化し、最終的に倒産にいたります。しかし、マスコットだけが取り残され、現在ではプロキシたちのあいだで人気の“肝試しスポット”となっています。
郊外にある看板の原画の一部
入口にある看板は、昼間は “無辺野火”と読めますが、夜になると“無力野人”に変わります。
ポート・エルピス
都市と海水の境目で、「周辺一帯での釣果を期待するな」の注意書きを目にする。港湾会社の従業員曰く、これは警告ではなく予言だそう。
ポート・エルピスの原画
「あなたが落としたのは金のスマホですか? それとも銀のスマホですか?」