「がんばれトレーシー」「見た目ほど悪い人じゃありません」「ラテン男はバリカンが決めて」「キューバの椿三十郎」――これらのコピーが表紙にズラズラ並ぶ雑誌、何かわかります?
答えは『NHKテレビ スペイン語会話7月』。おなじみ外国語講座番組との連動テキストだが、表紙コピーからは中身がまったく想像できないので、気になって購入してみたところ、展開される会話のシチュエーションの細かさ、リアルさに仰天した。
毎回あるシチュエーションでの会話VTRでのやりとりがメインの内容っぽい。
7月6日、11日放送分のそのコーナーのタイトルは、「市役所で」。これは、市役所の職員とのやりとりで、「職員はみんなスペイン語が話せるが、トレーシーさんは話せない」ということを聞く設定。
トレーシーは役所に勤めて3年の女性のようだが、表紙の「がんばれトレーシー」って、そういうことか!
ただし、世間話は弾むが、何の用事で市役所に行ったのかははっきりしていない。
13日放送分の「葉巻工房で」では、葉巻工房を訪ね、社長から「私は彼ら(職人さん)を芸術家だと思っている」といった講義を聞く。ずいぶん深い話である。
次が20日放送分の「理髪店で」だが、「(バリカンは)1号がいいですか? 2号、それとも3号がいいですか?」「上の方は2号で」って……どんな会話じゃい!? シチュエーション、細かすぎ! バリカンのこだわりを知ってどうなるのかと思っていると、こんな解説が。
「マイアミのキューバ系の人々が多く住むリトル・ハバナ地区。(中略)特にはやっている理髪店に入ってみて、謎が解けました。ここでは、髪型はもちろん、バリカンの号数までこだわるお客さんの注文に、きめ細かく対応してくれます」
へえ〜!! 一般の教科書などと違い、本当に「実際に使う言葉」のようなのだ。
そして、27日放送分の「DVD店で」では、「『用心棒』『椿三十郎』など、三船敏郎がずいぶん人気がある」ことなどを店員が説明している。
総じて言えるのは、この『スペイン語会話』では、言葉だけでなく、価値観や文化、流行までおさえようという、欲張りな狙いがあるらしいということ。
ただし、細かすぎて、これを使えるようになるには、それまでの基礎を自分で積んでおく必要はありそうだが。
ところで、気になったのは、表紙に書かれた「トレーシー」「バリカン」「椿三十郎」は内容がわかったが、「見た目ほど悪い人じゃありません」は何のことだろう? ということ。
テキスト内を全部丁寧に見返したが、会話の中にも説明文にも、一切、このコメントは出てこない。しいて言うなら、引っかかったのはただ一つ。
葉巻工房の、坊主頭でサングラスをかけている老人(たぶん社長)の写真だ。もしかして、この人の見た目が「柄が悪そう」というだけで、会話に無関係なのに、表紙に書いちゃったのだろうか。
だとしたら、ユニークすぎる『NHKテレビ スペイン語会話』。スペイン語が全くわからない私のような人でも、一つの謎解き本として、十分楽しめました。
(田幸和歌子)
答えは『NHKテレビ スペイン語会話7月』。おなじみ外国語講座番組との連動テキストだが、表紙コピーからは中身がまったく想像できないので、気になって購入してみたところ、展開される会話のシチュエーションの細かさ、リアルさに仰天した。
毎回あるシチュエーションでの会話VTRでのやりとりがメインの内容っぽい。
7月6日、11日放送分のそのコーナーのタイトルは、「市役所で」。これは、市役所の職員とのやりとりで、「職員はみんなスペイン語が話せるが、トレーシーさんは話せない」ということを聞く設定。
トレーシーは役所に勤めて3年の女性のようだが、表紙の「がんばれトレーシー」って、そういうことか!
ただし、世間話は弾むが、何の用事で市役所に行ったのかははっきりしていない。
13日放送分の「葉巻工房で」では、葉巻工房を訪ね、社長から「私は彼ら(職人さん)を芸術家だと思っている」といった講義を聞く。ずいぶん深い話である。
次が20日放送分の「理髪店で」だが、「(バリカンは)1号がいいですか? 2号、それとも3号がいいですか?」「上の方は2号で」って……どんな会話じゃい!? シチュエーション、細かすぎ! バリカンのこだわりを知ってどうなるのかと思っていると、こんな解説が。
「マイアミのキューバ系の人々が多く住むリトル・ハバナ地区。(中略)特にはやっている理髪店に入ってみて、謎が解けました。ここでは、髪型はもちろん、バリカンの号数までこだわるお客さんの注文に、きめ細かく対応してくれます」
へえ〜!! 一般の教科書などと違い、本当に「実際に使う言葉」のようなのだ。
そして、27日放送分の「DVD店で」では、「『用心棒』『椿三十郎』など、三船敏郎がずいぶん人気がある」ことなどを店員が説明している。
総じて言えるのは、この『スペイン語会話』では、言葉だけでなく、価値観や文化、流行までおさえようという、欲張りな狙いがあるらしいということ。
ただし、細かすぎて、これを使えるようになるには、それまでの基礎を自分で積んでおく必要はありそうだが。
ところで、気になったのは、表紙に書かれた「トレーシー」「バリカン」「椿三十郎」は内容がわかったが、「見た目ほど悪い人じゃありません」は何のことだろう? ということ。
テキスト内を全部丁寧に見返したが、会話の中にも説明文にも、一切、このコメントは出てこない。しいて言うなら、引っかかったのはただ一つ。
葉巻工房の、坊主頭でサングラスをかけている老人(たぶん社長)の写真だ。もしかして、この人の見た目が「柄が悪そう」というだけで、会話に無関係なのに、表紙に書いちゃったのだろうか。
だとしたら、ユニークすぎる『NHKテレビ スペイン語会話』。スペイン語が全くわからない私のような人でも、一つの謎解き本として、十分楽しめました。
(田幸和歌子)
編集部おすすめ