2025年春闘を前に、大手企業の間で大卒初任給を相次ぎ30万円台に引き上げる動きが広がっている。これは優秀な人材確保を目指す企業間競争の激化を示すものだが、一方で中小企業との格差拡大が懸念されている。
長年20万円台が主流だった大手企業の大卒初任給は、2022年頃から大幅な引き上げの傾向が見られるようになった。この背景には深刻な人手不足がある。具体例として、ファーストリテイリングは2025年3月以降に入社する新卒社員の初任給を33万円に引き上げると発表した。これは前年から3万円の増額となる。金融業界でも、三井住友銀行が2026年4月から大卒初任給を30万円に引き上げることを決定し、大手行として初めて30万円台に到達する。
一方、中小企業の初任給上昇は緩やかなペースにとどまっている。産労総合研究所の調査によると、2024年度入社の大卒初任給は、従業員300人未満の企業で平均21万8118円となっており、前年度比3.1%の増加にとどまっている。これに対し、従業員1千人以上の企業では平均24万1082円で、5.5%の増加となっている。
この状況について、専門家からは中小企業と大手企業の格差がさらに拡大する可能性が指摘されている。中小企業の多くは大手企業ほどの賃上げ余力がなく、優秀な人材の確保がますます困難になる恐れがある。
2025年春闘では、労使が賃上げの「定着」に向けて協調する姿勢を見せている。連合は2025年の賃上げ目標として、ベースアップ3%以上に定期昇給分を加えた5%以上を掲げている。
今後、初任給の引き上げ競争がさらに激化する可能性がある中、中小企業の人材確保や経営への影響が注目される。政府や経済団体には、企業規模間の格差是正に向けた取り組みが求められている。
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