ErgoDashを使い始めて1週間後の現状と感想
9月5日に組み立てが完成したErgoDashですが、現状は以下のようになっております。
本来ErgoDashはキー数が70個あるはずなのですが、現状ほとんど40%キーボードと化しています。なぜこうなってしまったのか、ちょっと紹介したいと思います。
組み立て直後に何が起きたのか
ErgoDashを手に入れる前までは、僕はFILCOのMajestouchファンでした。もう6,7年は使ってきています。このFILCOのキーボードに対して、小学生時代から培ってきた「自己流のキータイプ」を組み合わせて、今までコンピュータライフを過ごしてきました。自己流のキータイプ手法とは、もちろんブラインドタッチではありません。ほとんど人差し指と中指のみで全てのキーをタイプします。
つまり、僕は今まで、キーボードを見ないと、キータイプができない人間だったのです。
それでも、キータイプの速度は、他の人々よりも早かったと思っています。完全に全てのキーの位置を人差し指が覚えていますし、今まで打ち込んできたフレーズに対する指の使い方は確立されたものがありますので、その今までの経験から、高速に打ち込むすべは身につけていたわけです。
ただし、ホームポジションとか意味わからないし、FとJのキーについているポッチが役に立った試しはないので、超変則的、ということになります。
その状態で、ErgoDashというー「分割キーボード」を組み立て、そして使い始めたというわけです。その結果、何が起きるか、想像できますでしょうか?
そう、「全く打てない」という状況に陥ります。
タイピング練習のためのウェブサービスがいくつかあって、それを使うと、自分のタイピングの速度を計測することができます。ErgoDashを組み立てた後に、初めて計測した結果は、以下でした。
毎秒たったの1回です。ふざけていた訳でありません。かなり真剣に取り組んだ結果の数値です。何度やっても、お、ちょっと速かったんじゃない今!って思っても、せいぜい 1.2回とか、そんな程度でした。
明らかに初心者です。初めてパソコンを買って、初めてキーボードを人差し指でキーを探しながら打っている初心者の状態です。
タイピングの練習を開始
最初は本当にひどい状況で、これはもうFILCOに早々に戻ったほうが良いのかな、とも思いましたが、これは僕の人生を変えるチャンスです。ここを乗り越えなければ、一生「お前ブラインドタッチもできないのか」って言われます。それでも良いと思っていましたが、克服すべく、タイピングを位置から勉強し直すことにしました。
myTyping という良さそうなサービスがあったので、その中にあるホントに基礎の基礎のコースから、練習していきました。
最初は散々な結果になりましたが、いつかは乗り越えられると思い続けて、ひたすら練習を繰り返しています。もちろん、今も継続中です。暇さえあれば、練習をしています。
練習を始めてから2日間くらいは、全く効果が見えず、心が折れかけましたが、本当に徐々にですが、5本の指が言うことを聞いてくれるようになってきました。人差し指以外の神経が本当に通っていないんじゃないか、って思うくらい最初は動きませんでしたが、今ではちゃんと独立して動くようになってきています。
打てるようになるに連れて、ホームポジションの重要性がわかってきました。ははーん、なるほど、たしかにこのポッチは重要だ、FとJのキーを見失うと、たしかにキータイプがズレますし、指が迷子になってしまいます。さらに、ErgoDashの場合は、手首の角度も重要で、ズレの原因となります。
「やっぱりプロは無刻印っしょ!」と当時の自分が何を考えていたのか本当に恥ずかしいのですが、無刻印でしかもDSAプロファイル(キートップに傾斜がまったくない全部のキーが平らの形)で作ってしまったので、ポッチがありませんでした。そこで、ポッチを自作した話は、以下のエントリに書いたとおりです。
UVレジン液でキーキャップにホームポジションのポッチを作った話
ポッチによってポジションが安定し、指も練習の成果が出始めて動くようになり、練習開始から1週間後には、シャアになりました。そう、初期から比べて、3倍程度の速度では打てるようになってきました。
世間から比べると、きっとこれでも遅く、おそらく毎秒4回程度には打てないといけないんだと思います。ただ、組み立てたErgoDashを使い続けられる程度には、速くなってきたかな、と思っています。
気がついてしまった「最上段の遠さ」
数日間の特訓の後に、何とか「ホームポジションとは」を語れるようにはなってきたのですが、どんどんとタイピングが安定してくるに従って、言い換えると、どんどんとFとJのキーの位置の重要性を感じるようになってきて、明確に気がついたことがあります。それは、
「数字キー、遠いっ!!!」
ということです。つまり、ErgoDashで言うところの最上段のキーたちが非常に遠い位置にあるぞ、ということに気が付きました。
それだけではありません。ErgoDashでは、キーボードの内側にもキーが3個配置されているのですが、これらも遠く、手首をかなり捻らないと届きません。また、親指については、わざわざ「親指あり」のErgoDashを選択したのですが、最も内側にある2uの大きさを配置したキーについても、遠くてほとんど打たないことが判明しました。
図にすると、以下のキーたちは、遠くて叩けないと言うか、叩きに行きたくありません。
ホームポジションを守るということは、こうも数字や記号が叩きにくくなるのか、と、気がついてしまったのです。
小学生の頃からずっと毎日叩いてきたキーボードが、今では別のものに感じています。45歳になって初めて気が付きました。遅すぎですね。
40%キーボードにむけたキーマップ
ErgoDashを組み立て、そして使い始めて1週間。早くも「ErgoDash作ったけど、こんなにキーの個数いらなかったんじゃね」問題に行き着いてしまいました。ホームポジションからできるだけ動かずに、全てのキー入力を完結させたい、そう思うようになりました。
そうなってしまうと、キー数がもっと少ないコンパクトなキーボードが欲しくなってきます。そう、40%キーボードに憧れが出てきたわけです。遊舎工房さんのページに行くと、以下のようなラインナップとなっています。これらのような、行数が3行の配置のキーボードが、40%キーボードです。
ただし、そう簡単には40%キーボードに移行できるとは思えません。今まで使ってきた数字キーや記号の入力について、最上段のキー群に頼ることなく、打ち込めるようにならないといけないわけです。
そのためには、40%キーボードで存在するキー群に対応したキーマップを考え出さなければなりません。レイヤをうまく駆使して、数字や記号の入力を実現するわけです。
これがまた、無限の配列のパターンがあるわけで、決め手に欠けます。自分で何とか編み出そうと試行錯誤をしましたが、どれもうまく行きませんでした。そこで、他の人はどういう配置を採用しているのか、探し出し始めました。
一番自分にあってそうだったのは、Claw44を設計した yfuku さんが公開されていたキーマップでした。
Corne(crkbd)で使う42キーのキーマップを作ってみた
まずは完全に同じ配列にして、加えて余計なキーは全て無効(何も割り当てていない状態)にしました。これでしばらく使ってみて、自分には合わない箇所について修正を加えていく、ということを行っていきました。
そして、現状落ち着いた配列が、以下となります。
デフォルトレイヤー
Lower レイヤー
Raise レイヤー
Adjust レイヤー
keyboards/ergodash/rev1/keymaps/yoichiro/keymap.c
ホームポジションの行に数字が配置されていることが、yfuku さんオリジナル版での特徴かと思います。これは踏襲させていただいております。記号については、特にカッコの位置については、コードを書く作業が一日の大半を占めていることもあって、細かく調整していった結果、左手のホームポジション付近にまとめる感じとなりました。
あと、カーソルキーについては、最初はVimのように横一列に並べてみたのですが、どうしても慣れることができず、一般的なカーソルキーの配置にしてあります。右手だけで、カーソルの移動と、行頭行末への移動、そしてページアップダウンができるのも工夫の一つです。
このキーマップによって、ErgoDashを使っているのに、利用しているキーはほぼ40%キーボードのものになってる、という状況になりました。これで数日使ってみたのですが、かなり気に入っています。
そしてキーはいなくなった
このようにキーマップから無効化された外周のキーたちは、押しても何も起きないものになりました。でも、そこにキーがある限り、押してしまうのが人間です。押しても何も起きないけれど、押したからには何かが起きることを暗黙的に期待していて、結果何も起きずにストレスになる、という状態が数時間続きました。
「そこにキーがあるからいけないんだ」と我慢ならなくなり、キーキャップを抜いてしまう決断に至りました。
そして、最初にご紹介した写真の状態になった、という経緯でございます。
キーキャップを抜いてしまったので、嫌でも指はそれを押すことを避けるようになり、今では間違って範囲外のキーを押してしまいそうになることもなくなりました。これで、いつでも40%キーボードに移行する準備が整ったかな、と思っています。
外周のキーのキーキャップを抜いた副作用で、バックライトが一部フロントライトとして機能するようになり、とてもきれいに輝いています。
まとめ
さて、まとめです。
ErgoDashは、最初に組み立てた自作キーボードとしては、大正解だった。組み立てに関する多くの学びと、品質の高さ、どんな仕様にも耐えうるキー数の多さを僕に与えてくれた。
初めての分割キーボードということで、僕にブラインドタッチとホームポジションの大切さを教えてくれた。
その結果、僕には全てのキーを使いこなすのではなく、ホームポジションを崩さずに全てのキー入力をしてみたい、という新しい目標ができた。
その目標を目指した結果、ErgoDashらしからぬ状況になりつつも、大きな満足感を得ながらErgoDashで日々コードを書いている。
とは言え、まだ使い始めて1週間程度です。もっともっとErgoDashで修行を積む覚悟でいることと、それと並行して、次はどのキーボードを組み立てようかな、と楽しく迷う日々を送ろうと思っています。また、ファームウェアでまだ遊んでいないので、今やってみたいアイディアを早く試してみたいとも思っています。