米国の「TikTok難民」、避難先の中国系アプリで「検閲」初体験
香港(CNN) 中国のソーシャルメディアアプリ「小紅書」は最近、意外な業務の担当者を雇用している。英語のコンテンツに対する監視役だ。
背景にあるのは同アプリでアカウントを新設する米国人ユーザーの増加だ。中国系の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を禁止する法律が19日に施行される中、「TikTok難民」を自称するそうしたユーザーの拡大に拍車がかかっている。
現状を受け、小紅書は新たな課題に直面している。中国の厳格なコンテンツ監視規則に準拠しつつ、一方では非中国語話者の新参ユーザーに対して良質なアプリ体験を提供するという、バランスの取れた運営が求められているからだ。
現在のところ、多くはアプリの利用に満足している。米国人アーティストでTikTokでは3万2000人以上のフォロワーを抱えるヘザー・ロバーツさんは小紅書に新たなアカウントを立ち上げたが、利用を楽しんでいると話す。CNNの取材に対し、「誰もがとてもいい人で、非常に親切」「中国人も私たちとそう変わらないことが分かってきた」と述べた。
しかし小紅書の利用開始からほんの数日で、同アプリの検閲ルールに不満を感じているユーザーもいる。そのルールは単に暴力的な内容やヘイトスピーチ、ポルノグラフィーを禁止するだけではない。中国のネット空間は、検閲対象となる機微な言葉のリストが日々拡大し続けていることで知られる。それらは政治に絡むものもあれば、それ以外の事柄を指す場合もある。
検閲ルールを設定するのは中国当局だが、それらの執行は通常プラットフォームに委ねられている。各プラットフォームはしばしば大掛かりな監視担当チームを雇用し、指針に違反するコンテンツの削除に当たらせている。検閲を厳格に執行しなければ、罰金や営業停止、さらにはサイト閉鎖といった罰則が科される恐れもある。
性自認が男女のどちらでもない「ノンバイナリー」を自称するある米国人ユーザーは、14日の小紅書への投稿で検閲を受けた。小紅書が同性愛者を歓迎するプラットフォームなのかどうか尋ねる内容だったが、数時間足らずで投稿が削除されたと当該のユーザーはCNNに明かした。
翌日、同ユーザーが新たな投稿で小紅書の利用を止めると告げたところ、すぐに同性愛者を嫌悪する内容のコメントが寄せられた。中にはユーザーに対し、文化を押しつけていると非難するコメントもあった。