「またよみがえる」 激しくひび割れた輪島・白米千枚田、復活への思い
2024年1月15日 21時37分 (1月24日 20時07分更新)
「国名勝」(文化庁)や「つなぐ棚田遺産」(農林水産省)に指定されている石川県輪島市の「白米千枚田」には、能登半島地震による爪痕が残された。
記者が千枚田に隣接する「道の駅千枚田ポケットパーク」を訪れると、30台ほどの車が乗り捨てられていた。地元のナンバープレートに交じり「八王子」や「三河」「岡崎」などの県外の車も多くあった。車は元日に千枚田を観光で訪れた人のもので、一時は孤立し道の駅で過ごした。
道の駅の展望台から眺めると原形をとどめているように見えた千枚田だが、下りてじっくりと見ると、無数のひび割れや直径約1メートルの落石があった。2007年の地震ではほとんど被害のなかった千枚田。しかし海岸線の間際まで田んぼが広がる特徴的な景色は、地盤が隆起して海底が現れ、大きく様変わりしていた。
「今年の米作りは無理かな」。地元の耕作者団体「白米千枚田愛耕会」の小本隆信代表(76)=輪島市=は、近所の人から無料通信アプリ「ライン」(LINE)で送られた画像を見てそう思った。「水が命」の千枚田にとってあぜのひび割れは大敵だ。
「千枚田は市民の誇り」と話す小本代表。今は同県内灘町に避難しているが「先人たちの遺産をなくすことは考えられないし、耕作を手伝ってきた千枚田のオーナーにも申し訳ない」とし「一致団結してやらなければ」と自らを奮い立たせるように語った。
千枚田は元来、地滑りが発生しやすい地域にある。道の駅で働く山下博之さん(64)は、幾何学的な田んぼは、地震や土砂災害のたびに形を変えて残してきた「証し」と言い切る。「2次避難によって作り手の確保は難しいだろう」としつつも「千枚田はまたよみがえる」と力強く話した。
(鈴木義人)
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