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いよいよ動き出したスマートホームの標準規格「Matter1.0」とは

2019年にスタートした、スマートホームの標準規格策定。ところがなかなか実際の規格が発表されず、さらに延期を繰り返していたこともあり「実現しないのは?」と思われるような状況でした。
しかし2022年5月に「Matter1.0規格」が発表され、にわかに動き始めてきました。今回の記事では「Matter1.0規格」のニュースを元に、関連する話題をまとめてみましょう。

この記事でわかること
・標準規格「Matter1.0」について
・CSAへ参加する企業について
・Googleが対応デバイスをリリースした件について

IoTを加速する標準規格「Matter1.0」とは

そろそろスマートホームにしようかな?と考えた時、悩ましいのは「何を軸にするか」です。
最初の1台をAmazon対応で導入した場合、その後の選択肢もAmazon対応機器に制限されてしまいがちです。メーカーごとに異なる規格を採用している現状では、個別製品の性能云々の前に「対応状況」が重要となってしまいます。

そんな状況を改善し、家電などに搭載されるIoTの標準規格となるのが「Matter1.0」です。2019年に有力メーカーが集結し規格策定へ動き出したのですが、その後予定は延期が繰り返され、いったいいつ実現するのか多少危ぶまれていました。

しかし今年(2022年)になって、急に動きが加速しました。
まず5月に最初の標準規格である「Matter1.0」が発表され、さらに10月になってGoogleが対応機種を発表しました。

IoT標準規格策定への動き

2019年 Apple・Google・Amazonなどがスマートホーム規格標準化「CHIP」を始動

Apple・Google・AmazonとIoTのオープン規格標準化を目指す団体であるZigbee Allianceが立ち上げメンバーとなり、Connected Home over IP(CHIP)プロジェクトがスタートしました。
このプロジェクトでは、規格の標準化とともにセキュリティの強化を目標として掲げています。

AppleはHome Padシリーズ、AmazonはEchoシリーズ、GoogleはGoogle Nestシリーズというスマートスピーカーを展開しています。これらは家庭内でIoT対応機器をコントロールする中心となるデバイスであり、それぞれ独自規格で動作します。

このような事情から「最初の1台を何にするか」が重要であり、後続の機器もそれに対応したものを選択せざるを得なくなります。

しかし、この三大メーカーが標準化規格の中心メンバーとして活動を始めたのですから、独自規格による囲い込み戦略は断念し、ユーザーにとって利便性の高い方向へ舵を切ったということになります。
自社製品と独自規格でエコシステムを構築し、ユーザーの囲い込みに明け暮れていた三大メーカーが、足並みを揃えて標準規格策定の初期メンバーとなったのは、それだけ本気で取り組むという姿勢の現れでしょう。
また、参加メンバーは三大メーカーだけではありません。Zigbee Allianceには、IKEAやSamsung SmartThingsなど多数のメーカーが参加しており、規格の策定に期待が持たれています。

スケジュールの遅れが問題に

こうして意気揚々とスタートしたCHIPですが、当初の予定よりもスケジュールが大幅に遅れ始めます。
当初は2021年後半に仕様をリリースするとしていましたが、SDK・認証プログラムの準備が間に合わないことを理由に、半年ほど延期を発表。さらに2022年3月には参加企業が増加したことで、SDKの改善が必要になったとして再度延期しています。

当初の予定よりも参加する企業やプラットフォームが増加しているという点は、それだけ多くの企業がこの規格に期待しているということです。しかし、こうした度重なるスケジュールの遅延は外部から見ると「混乱」とも思えますので、先行きに不安を感じさせます。

規格の発表と団体名の変更

2022年5月になって、団体名をCHIPからCSAへ改めるとともに、最初の標準規格である「Matter1.0」を発表しました。3月に延期が発表されたばかりでしたので、急な展開に驚いた方も多いのではないでしょうか。
現在は「Matter1.0」の仕様やSDKもダウンロード可能な状態になり、8つのテスト機関で認証が確認できるなど、本格的に動き始めました。

GoogleやAppleもすでに開発者環境の提供を開始するなど、早くも「Matter1.0」への対応を進めています。IoTが提唱され、さまざまなメーカーが規格の提案や普及を進めながら成功を納めることができなかった状況が、これで打破できそうです。*注1

インターネット接続できない状態でも機器の操作ができる仕様

「Matter1.0」の特徴的な仕様として、インターネット接続なしでもWi-Fi環境下で機器を操作できるというものがあります。クラウド接続に依存しない完全ローカル環境での動作が保証されていますので、それぞれの機器を提供する企業のサービスが停止しても影響がありません。

将来的には、Apple・Google・Amazonのスマートアシスタントにも対応可能になる見込みですので、「Matter1.0」を使って音声アシスタントを操作できるようになります。
もう「最初の1台」を何にするかで頭を悩ませる必要はありません。純粋に性能や価格を比較し、欲しいものから順番に揃えていけばいい事になります。

CSAへ参加する企業

CSAは3つのグループに分かれています。Apple・Google・Amazonなどの中心メンバーのグループは「Promoters」であり、現在29社が確認できます。
次に「Participants」がありますが、これは規格策定へ積極的に参加するメンバーということでしょう。現在271社が参加しており、arm、BUFFALO、ubuntu、dyson、mastercard、Bosh、Qualcommなど名だたるメンバーが名を連ねています。
日本企業では、MITSUBISHI ELECTRIC、Panasonic、TOSHIBAなどの参加が確認できました。
最後に策定した規格を採用する「Adopters」というグループがあり、現在232社が参加しています。これらの参加者は今後も増加していくと思われます。 
ちなみに、Sonyで検索をかけてみましたが、Participants・Adoptersどちらのグループにもヒットしませんでした。

通信機器、家具・家電、決済関連など非常に多くの分野で業界をリードする有名企業がこの規格に賛同し、何らかの形で参加していることがわかります。
あとは実際に規格に対応した製品を各メーカーが発売し一般に広く普及すれば、事実上のスタンダードとしてその地位を確立することができるでしょう。*注2

いち早くGoogleが対応デバイスをリリース

新たに策定された規格が、IoT分野におけるTCP/IPのように事実上のスタンダードとなり普及が加速するかどうかは、規格を採用した製品がユーザーに受け入れられるかどうかにかかっています。
「Matter1.0」の仕様については公開されていますが、実効性の有無は製品の使い勝手に大きく左右されます。いずれにしても、プロダクトが重要なキーとなります。

CSAの動きも素早く、2022年11月にアムステルダムで開催されたイベントで、既に190に及ぶ機器が認定済み、もしくはテスト段階であることを発表しました。
Amazonは12月にも、17のEcho端末がMatterをサポートすることを発表しました。当面はAndroid端末のみ対応としていますが、いずれはiOSにも対応するなど、より多くの端末へ拡大していく予定です。

今後、主要メンバーであるApple・Google・Amazonを中心に、「Matter1.0」の対応機器がリリースされて来るでしょう。日本ではまだ、海外に比べてスマートホームシステムの普及がまだ進んでおらず、これを機に普及していくことが期待できます。
そろそろスマートホームの導入を考えている方は、もう少しだけ様子を見てもいいかもしれません。*注3

【まとめ】

冬になると、外出先からエアコンやお風呂の操作ができればいいなと思いながら、なかなか実現させることなく過ごしていました。今回の記事をまとめながら、いよいよ本格的に取り組む環境が整ったような気がしています。
これからどんな製品がリリースされてくるのか?どんなサービスが新たにスタートするのか?
IoTのメリットをやっと享受できそうで、ワクワクしてしまいます。

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■参考文献
注1
Gigazine 「IoT用の新規格「Matter1.0」が始動しネット接続がダウンした状態での利用などが実現、Googleは早速Matterサポートを含む新製品を発表」
https://gigazine.net/news/20221005-matter-launch/
「Apple・Google・Amazonがスマートホーム規格の標準化プロジェクト「CHIP」を始動、メーカーごとの互換性の垣根を破壊する取り組み」
https://gigazine.net/news/20191219-apple-google-amazon-chip/
IT Media News 「スマートホーム標準「Matter 1.0」ついにリリース」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2210/05/news068.html
注2
CSA ”The Power of Membership”
https://csa-iot.org/members/
注3
IT Media News 「AmazonのEcho端末、12月にはスマートホーム規格「Matter」サポートに」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2211/04/news073.html

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