汚れたAmazonレビュー 数珠が家電に化ける時

    横行するステマの実態を追った

    Amazonで横行する、偽レビューによるステルスマーケティング。FacebookやLINEなど、SNSを舞台にしたレビューの取引も盛んに行われている。

    BuzzFeedは、「大量の数珠を格安で出品し、高評価レビューを集めた後に家電に変える」という新たなステマの手口を確認。実態を追跡調査した。

    大量の数珠、メチャクチャな商品名

    7月19日、A社が17個、B社が18個の数珠を一律50円で出品していた。

    写真はすべて同じ数珠だが、商品名の欄には「消臭」「クッション」「疲労回復」(A社)、「滑りにくさを追究」「メイン素材」「衝撃吸収」(B社)などと書かれている。

    「価格の安い順番」に並びかえると、画面上が数珠で埋め尽くされた。意味不明な商品名とのチグハグさも相まって、かなりシュールな光景だ。

    見た目は明らかに数珠なのに、レビュー欄にはドライヤーや補聴器、照明機器などを思わせる感想が寄せられている。

    ヘアアイロンや集音器に

    これらの数珠は翌20日にいったん「在庫切れ」となり、21日の午前6時ごろ復活。9時半ごろには再び「在庫切れ」に戻った。

    早朝などのアクセスの少ない時間帯を見計らって、作業している様子が伺える。

    23日に各商品のURLにアクセスすると、B社の「衝撃吸収」はヘアアイロンに、「日常着用」は集音器に化けていた。

    Amazonの商品には、「ASIN」と呼ばれるアルファベットと数字からなる番号があるが、ヘアアイロンも集音器も数珠だった時とはASINが異なる。

    ASINが変わると元の番号では検索できなくなってしまうが、URLは変わらない。怪しい商品のURLを控えておけば、その後の変化をつぶさに追うことができる。

    上記の商品はAmazon 売れ筋ランキングで、「ヘアアイロン」部門の23位、「補聴器」部門の3位に入っていることが確認できた。

    星5満載のレビューで部門1位

    不審な出品は数珠だけに限らない。「画像はありません」という表示が出たまま、50円で出品されている商品もある。

    7月13日付でA社が出品した「快眠」という画像なしの商品は、ミシンに化けた。

    無名メーカーにもかかわらず、183件ものレビューが集まり、20日には「電動ミシン」部門で堂々の1位に輝いている。

    183件のうち星5が166件を占める、「星5一極集中型」。怪しいレビューの典型だ。

    出品直後の13日に20超、15日に40超のレビューが一斉に寄せられ、まったく同じ投稿者名で内容の異なるレビューを3、4本連投しているケースも散見される。

    色違い商品を悪用?

    よく見るとこのミシンにはカラーバリエーションがいくつかあり、メインと思しき「Black」のほかに、4種類の色違い商品が用意されている。

    いったいどんな色なのかよくわからないが、4種のうちのひとつに「white;nbsp;nbsp;nbsp;」という色があり、「快眠」はこれに化けていた。

    Amazonレビューは、色違いのものも含めて、同一商品への感想としてまとめて表示される。

    この仕組みを悪用し、後から色違い商品をつくってレビューを「ドーピング」した可能性がある。

    突然レビュー数が激減

    「色違い」を悪用したと疑われるケースはほかにもある。

    C社が画像なしのまま、13日に50円で出品した「リラックス」は、アイマッサージャーの「black ; ;」という謎のカラーに。

    この商品は24日、「アイマッサージャー」部門で2位にランクイン。232レビューのうち、星5が実に215に達した。

    こちらも18日に40超、19日に30超と、特定の日にレビューが急増している。同じ投稿者による連投が目立つのも、ミシンのケースと同様だ。

    8月1日午前に改めて確認したところ、Amazon側が何らかの対策を講じたのか、ミシンのレビュー数は118件、アイマッサージャーが99件に激減。色違いの商品もすべてなくなっていた。

    だが、ランキングはそれぞれ3位、6位と、依然として高い順位にとどまっている。

    「数珠が届いた」苦情も

    「目元マッサージャーとはほど遠い、変な数珠のようなものが送られてきました」

    「届いた商品はぜんぜん違うもので、100円ショップで売っているような数珠が入っていただけ!」

    アイマッサージャーには、高評価レビューに混じって、星1の苦情の声もあがっている。

    BuzzFeedでも、A、B 、C社が取り扱う、数珠や「画像なし」の商品を実際に注文してみた。

    しかし、到着予定日を過ぎても家電はもちろん、数珠すら届くことはなかった。

    住所の学生寮は「無関係」

    そもそも、これらの会社に実態はあるのか。

    A社とC社は、京都市内の中国人向け日本語学校の学生寮に住所を置いている。B社の現在の拠点は中国・深センだが、かつては同じ学生寮を住所としていたとする情報もある。

    この日本語学校に問い合わせると、A社記載の部屋番号は実在せず、B社の旧住所、C社の現住所には無関係な学生が住んでいると回答があった。

    取材に対し、担当者は「学生寮であり、ここに会社があるということは絶対にない。ウチの学生とは関係がないので、住所として悪用されているのではないか」と語った。

    規約違反の疑い、返答は…

    Amazonの出品者利用規約には「自分自身について虚偽の情報は決して登録しない」と明記されている。

    また、不公正な行為を禁じ、具体例として以下のような行為を挙げている。

    • 購入時または出品時のすべての側面で、「不正な操作(ギャンブル)と見なされる」可能性のある行為
    • カスタマーレビューを改ざんしたと見なされる可能性のある行為(偽の内容、誤解を招く内容、または虚偽の内容を直接的または間接的に指定するなど)
    • Amazonの検索結果や売上順位を操作しようとしたと判断される可能性のある行為


    A、B、C社は、これらの規約に抵触している可能性が否定できない。

    BuzzFeedは3社に加え、関連が疑われる複数の企業に日本語と中国語で質問を送った。

    数珠を大量出品している理由や、偽レビューによるランキング操作の可能性、住所に実態がないことなどについてただしたが、回答はなかった。

    大量出品の狙いは?

    なぜ、数珠や「画像なし」の商品を大量出品するという奇怪な手法をとるのか。

    回答が得られなかったため推測するしかないが、狙いのひとつに「Amazonで購入」したレビューを増やすことがあるのではないか。

    レビューはAmazonで購入していなくても書くことができるが、レビューの全体数と「Amazonで購入」のレビュー数の落差があまりに大きい場合、本当に買ったのか信頼性に疑義が生じる。

    身内ないし自作自演で取引を重ね、見かけ上「Amazonで購入」のレビューを水増しすることで、「信頼のおける高品質なレビュー」を偽装する――。

    そういう目論見があるのだとしたら、50円の破格で大量出品するという一見迂遠なやり口もうなずける。

    Amazon「不正なレビューは1%未満」

    今回の調査で、想像以上に深刻なAmazonレビュー汚染の実態と、ランキング操縦の可能性が浮き彫りになった。

    こうした手口は少なくとも5月ごろから問題視されており、Amazonの出品者同士が情報交換する「セラーフォーラム」では、具体的な企業名を挙げてAmazonに対応を求める声があがっていた。

    多くの利用者を抱えるECプラットフォームとして、Amazonはどのような偽レビュー対策を講じているのか。また、今回取り上げたような不正の手口を認識しているのか。

    BuzzFeedの取材に対し、アマゾンジャパン広報本部はメールで次のように回答した。

    《Amazonは、多くのお客様が日々、カスタマーレビューを参照して購買判断をされていることを認識しています。

    Amazonでは、この責務を重視しており、レビューシステムの不正利用からお客様を保護するために積極的な措置を講じることで、カスタマーレビューの信頼性を守ります。

    2018年上半期に日本でAmazonにおいて検知された不正なレビューの割合は全体の1%未満でした。

    Amazonは、不正なレビューを容認しません。Amazonではカスタマーレビューに関する通報を24時間365日受け付け、調査しています。

    Amazonは、ガイドラインに違反するレビューを削除するとともに、アカウントの一時停止や閉鎖、法的措置を講じるなど、レビュワーおよび不正行為を行った者に対して厳正な措置を講じています。

    不正なカスタマーレビューを検知するために、Amazonはマシーンラーニングとオートメーションシステムに多大な投資をしています。

    マシーンラーニングにより、Amazonはすばやく検知範囲を拡大し、より迅速に不正に対処しています。

    レビュワー、カスタマーレビュー、商品、販売事業者、それぞれにこのシステムを活用しています。

    不正行為を行った者や不正の原因を排除しながら、Amazonのシステムは更なる課題に取り組み、革新し続けています。

    Amazonでは、事前の検知に加えて、レビューの不正に関して世界中で1,000人以上に対して訴訟を提起しています。

    さらに、不正なレビューを要請する不正行為を行った者や、報酬と引き換えにやらせのレビューをする個人や事業者に対して、アカウントの一時停止や閉鎖、または法的措置を講じ続けて参ります。

    さらに、より新しく、より有用なレビューに重点を置き、「Amazon.co.jp で購入済み」ラベルの資格を得るために厳格な基準を適用しています。

    また、Amazonのコミュニティに参加するために必要なAmazonでの購入金額要件を引き上げています。

    カスタマーレビューは、情報に基づいた購買判断ができるようにするための最も価値ある機能のひとつであり、Amazonはその価値を確かなものとするために懸命に取り組んで参ります》


    BuzzFeedは、この問題について引き続き報じていく予定です。情報をお持ちの方は、担当記者までメール([email protected])にてご連絡ください。


    BuzzFeed JapanNews