最近のちょっとしたマッチョブームを受けて、言いたいことがある。
父はこの中にいる。
いた。父(55)です。
1. まず大前提として、マッチョは自分の肩に触れない。なぜなら上腕部と前腕部の筋肉がぶつかり合うから。
2. そのせいで1人で服をスムーズに脱ぎ着できない(要介助)。
首元のボタンを自分でとめられないし、自分で襟も直せない。スーツなんて絶対に1人で着られない。
そのため服装も限られる。マッチョはアンダーアーマーがないと生きていけない。
3. もう1つ大前提。マッチョは床に座れない。
背もたれのある椅子に座らないと、上半身が重いため後ろに転がってしまう。
そのため座敷の飲食店には入れない。こたつにも入れない。
どうしても座敷に座る場合、壁に一番近い場所に座れるように配置を考えなければならない。
4. 写真を撮られると、筋肉の写りが気になって気になって仕方がない。
5. 胸ポケットにiPhoneを入れておくと、胸筋が勝手にiPhoneを操作して無差別に電話をかける。
たいてい家族にかかるため、家族はみんな無言電話に慣れている。
「もしもし?もしもーし?……あーなんだまた胸筋か」
6. 寝返りがメガトン級。
木造の我が家で父が寝返りをうつと、家中でミシミシ音がするため別室にいてもすぐにわかる。最悪の場合父の寝返りで起こされる。
寝返りの勢いで、肘で壁に穴を開けたこともある。壁の穴は長年カレンダーで隠されていた。
7. 乗客の視線が痛いので満員電車には乗れない。
8. 食べ物を名前ではなく「タンパク質〇〇〇グラム」と呼ぶようになる。
「今日の夜ご飯はカレーがいいな」みたいな会話は我が家にはない。
「今日の夜ご飯、タンパク質200グラムは欲しいな」、「明日の朝ごはんはタンパク質150グラムね」が当たり前。
こうなると朝ごはんに卵を10〜12個使うことになるが、これも当たり前。
9. 口癖は「高タンパク低カロリー」。
とにかく栄養にうるさい。
他にも「疲労回復にはビタミンE」、「ビタミンCは摂取しすぎても排出されるからたくさんとっとけ」が口癖。
我が家には常にサプリメントがビュッフェ状態で置いてある。もちろんプロテインも。
10. 家での食事は基本「大皿に大量の肉」。
11. 日本人とぶつかって「ソーリー」と謝られる。
グアムにて、現地のチャモロ人に何度も間違われる。しばらくあだ名が「チャモロ」に。
12. 「ハグリット」とか「シュレック」とかめちゃくちゃな呼ばれ方をされる。
どちらもマッチョではないが、「大きい」という共通点だけで色々なあだ名がつく。
13. シートベルトが苦しい。
14. 将来の夢は「ランボルギーニに乗ること」だが、身体のサイズ的に乗れないため断念。
15. ダイビングも断念。
まずウェットスーツを着るのに1時間くらいかかる。
いざ潜っても脂肪がなく体が重いためどんどん沈んでいってしまう。
一度家族で初心者用のダイビングに参加したことがある。
みんなで一本のロープに繋がれた状態で潜るのだが、先頭の父が海底に向かってまっしぐらに沈んでいくため全員が死にかけた。
16. 飛行機はもっと辛い。エコノミー席は地獄。
17. 旅行先のホテルを選ぶ基準はジムがあるかどうか。あるとすればジムの質が良いかどうか。
トレーニングを欠かすと禁断症状が出るため、たとえ旅行中でも気を抜くことはできない。
もちろんトレーニンググッズやウエアーも持参するため、大荷物になる。
旅行先が海外(特にアメリカ)だとプロテインを大量購入して帰るため、帰りはもっと大荷物。
18. 「マッチョなのに」がついて回る。
たとえば瓶のフタをあけられないと、「使えねえな…!!」くらいの勢いで残念がられる。
父は極度の高所恐怖症なのだが、何かを怖がると普通の人の何倍も笑われる。マッチョ=スーパーマンなわけではない。そこはご理解いただきたい。
加えて父は超インドア派。BBQやキャンプよりも、カフェに行ったり映画を見たりショッピングをしたりするのが好きなのだが、それを知られるたびに「マッチョなのに…ww」と高確率で笑われる。
19. 世界の終わりが来ても、絶対に生き残れない。なぜなら筋肉が多すぎて自壊するから。
よく映画にあるような、ゾンビウイルスが蔓延した終末世界を思い描いてほしい。
まずマッチョは素早く動けない。狭い所に隠れられない。しかも普通の人よりも早くエネルギーを消費してしまう。
結果、自分の筋肉に殺されるのだ。
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