ベルギー人はレンジを使わない…自炊し夜10時に寝る生活で得た「心のゆとり」

雨宮百子[日本・ベルギー2拠点エディター]

雨宮百子[日本・ベルギー2拠点エディター]編集:横山耕太郎

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ベルギー料理の写真
スペインで食べた味を思い出しながら作ったパエリア。
撮影:雨宮百子
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ベルギーに来てから3年目に突入した。

東京にいた当時、週3日は外食していた私だが、ベルギーに来て大きく変わったのは自炊ばかりになったことだ。

ベルギーに来てからも、勉強や仕事をしている時間は日本にいた頃とは変わらないが、それでも、毎日1時間ほどをかけ、家で料理をするというのが日常になった。

東京では「作業」だった料理だが、自炊が当たり前というベルギー社会に暮らすなかで、意外にも「心の余裕」を手にいれることができたと感じている。

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料理に「効率」などいらない

ベルギーでの肉の写真。
塊で売られているお肉。自分で小分けにして冷凍保存している。
撮影:雨宮百子

私がベルギーで外食をするのは、年に数回程度になった。

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それは日本や外国から友人が来たときで、典型的なベルギー料理などを紹介するためにレストランに行くだけだ。東京では、週の半分は外食をしていたのが信じられない。

自炊が多くなったのは、交通の利便性による面もある。ベルギーは車社会なので、ブリュッセルの一部を除き、電車は非常に不便だ。日本でいえば、ブリュッセルが東京だとすると、埼玉や千葉に住んでいるくらいの距離なのに、目的地への電車は30分や1時間に1本しかこない。しかも交通費は決して安くはない。

近所にスーパーもあるが、より安い大型スーパーに買い物に行っているため、今は土曜に1週間分の食材を買い出しにいく。スーパーで売られている肉は、日本のように小間切れ肉や薄切り肉はない。私がいつも購入するのは、パックに入った500グラム以上の肉の塊だ。一度では食べきれないので、肉のかたまりにフォークをさして肉切り包丁でカットする。一食分を残して、あとは冷凍保存する。

当初は親子丼などの日本食ばかり作っていたが、あきてきたので、最近では世界各国の料理のレシピを調べ、挑戦するようになった。お菓子でさえも自分で作ってしまう。「スタバのチョコチップクッキーが食べたいな」と思って店に行くよりも、自分で作ってしまったほうが健康的だしはるかに早くて経済的だ。

レストランでは軽く1人6000円超え

ベルギーのハンバーガーの写真。
ごくまれに夕食にバーガーを食べることもある。
撮影:雨宮百子

ベルギー人の家庭に泊まった際に「夕食を作る気力がないからハンバーガー買ってきて」という日も何度かあった。ちなみにベルギーでハンバーガーのセットを買うと、1セットで10ユーロ(約1570円)は平気で超えてくる。

円安ということもあって日本人には割り高に感じる面があるが、もともとベルギーでの外食は安くない。

一般的なディナーでも、前菜とメインを頼み、ドリンクを頼んだだけであっという間に1人40~50ユーロ(約6280~7850円)するという事情もあって、日本のように「連日外食している」という人にはあまりあったことがない。

ただ自炊するといっても、当然毎食凝ったものをつくるわけではないし、夜も基本的には1品料理だ。カレー、タコライス、パスタ、ケバブなど、1個作って終わりだ。

「日本人はレンジで料理するんだね」

ベルギーのオーブンの写真。
ベルギー生活で欠かせないものになったオーブン。
撮影:雨宮百子

料理の仕方にも、日本とベルギーでは違いがあると感じる。

ベルギーでは「便利さ」「手軽さ」を売りにした商品があまりないのだ。日本のスーパーでは必ず見かけるような、「混ぜるだけ」「レンジで調理できる」「5分で完成」というようなよくある表示は、ベルギー人からすると「奇妙なもの」に映るらしい。

「日本人ってレンジで調理するんだね」と驚かれ、私のあだ名はしばらく「チン(電子レンジ)・マスター」になった。

ベルギーでは料理の作り置きもしないことが多く、ベルギー人が電子レンジを使用しているシーンをあまりみたことがない。ベルギーだけでなく、欧州の多くがそうかもしれないが、レンジではなくオーブンが主流で、私も使っているうちにオーブンは生活になくてはならないものになった。

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夜7時には夕食を終え、10時に就寝

バルカン半島のあたりで食べられるレモンスープの写真。
バルカン半島のあたりで食べられるレモンスープ。
撮影:雨宮百子

私の朝ご飯は時間がないのでオートミールやバナナで済ませるが、昼や夕食は30分から1時間程度かけて自炊している。

東京でも健康のために自炊をすることはあったが、料理は楽しみではなく「作業」のように感じていた。しかし、こちらでは娯楽も少ないせいか、毎日の食事の時間が楽しみでしかたなくなった。

スーパーに行けば、日本ではあまり見ない芽キャベツやルバーブなどの食材をみかけることもあって、こうした未知の食材を使って、何を作ろうかとレシピを検索しながら考えるのは想像力を刺激して面白い。

もちろん、料理の好き嫌いは人によってあるが、私の知っているある家庭ではいつもお父さんが料理を作る。レシピを見ながら機械も使い、色々な料理にトライしている。いずれにせよ「料理を作る時間がない」というような生活ではないというのがポイントだろう。

食事の時間は午後6時頃から作業をはじめ、遅くても午後7時30分には食べ終わっている。夜は10時すぎには寝て、朝は6時には起きる。

東京にいたときは、8時頃から食べ始め、寝るのは午前1時や2時も珍しくなかったが、ベルギーではそもそも「遅くまで出歩く習慣」がない。電車は地域によっては10時から11時には終電になってしまう。

もちろん、友人宅やバーで深夜まで飲む人もいる。しかし、家族やパートナーと過ごす時間のほうが一般的には重視される。

来たばかりの時は、一時帰国のたびに「お茶づけ」「カレールー」などを大量に買って帰っていたが、今では使わなくなった。

そもそも、自分の身体をつくる「食べる」という行為よりも重要なものって何だろうか、と今では思う。

ベルギーでの生活を通して「効率」を最重視していた私の時間の使い方や食生活は大きく変わった。慣れない土地での生活は、確かに不便なことも多いが、その不便さの中で得たものも多い。

手間をかけることで見えてくる豊かさや、日々の小さな変化を楽しむことができるようになったのだ。これからも、ベルギーで学んだ時間の使い方を楽しみながら、ゆっくりと歩んでいきたい。

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