元グーグルCEO、リモートワークが会社に損害を与えているとの主張を撤回。しかし多くのCEOは同様の発言をしている。
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- グーグルの元CEOエリック・シュミットは、2024年8月にリモートワークの方針がAI競争でグーグルを苦しめていると講演会で話した。
- その後、シュミットの広報担当者はBusiness Insiderに「エリックはグーグルの労働時間について誤った発言をした」と述べている。
- だがOpenAIのサム・アルトマンを含む多くのCEOたちは、在宅勤務には限界があると考えている。
グーグル(Google)の元CEOは、「グーグルはリモートワークを認める方針のために、OpenAIなどのスタートアップ企業にAI競争で負けている」という以前の主張を撤回した。
2001年から2011年までグーグルのCEOを務めたエリック・シュミット(Eric Schmidt)は、2024年4月にスタンフォード大学(Stanford University)で行われた講演会で、「グーグルはワークライフバランスを推進することで不利な立場に置かれている」と発言した。この講演会の録画が2024年8月13日にYouTubeに投稿され、瞬く間に拡散された。
「グーグルは勝つことよりも、ワークライフバランスや早く帰宅すること、在宅勤務をすることが重要だと判断した」とシュミットはその動画で語っている。
「スタートアップが成功しているのは、社員が必死に働いているからだ」
シュミットは、起業する人たちは「他のスタートアップと競争したいのであれば、在宅勤務や週に1日しか出社しないような働き方は従業員にさせないだろう」と推測している。
元グーグルCEOはその後、自身の主張を撤回したようだ。
シュミットの広報担当者はBusiness Insiderへのメールで、「エリックはグーグルとその労働時間について誤った発言をし、その誤りを後悔している」と記している。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が最初に報じたシュミットの声明は、以前の発言を撤回したような内容だった。広報担当者はBusiness Insiderに対し、それ以上の詳細は語らなかった。
しかし、この元グーグルCEOは、リモートワークについて多くのテック企業のCEOがこれまでも言ってきたことを指摘しただけだ。ただし、この件に関する調査はまだ決定的なものではない。
OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOは2023年、フォーチュン(Fortune)に対し、テック業界の「最悪の過ち」の一つは、従業員に「永遠にフルリモート」を許してしまったことだと考えていると語った。
「実験は終わったと言っていいだろう。特にスタートアップでは、人々が永遠に完全なリモートでいられるほど、テクノロジーはまだ十分ではない」とアルトマンは同誌に語っている。
そのOpenAIでは、ハイブリッドポリシーとリモートポリシーを組み合わせて実施している。
OpenAIの広報担当者はBusiness Insiderに対し、同社は対面勤務の従業員に週3日の出社を義務付けている一方、リモートワーカーも一部雇用していることを認めていることを認めている。
グーグルも同様の方針で、ほとんどの労働者に週3日以上の出勤を義務づけていると自社のブログに記されている。
セールスフォース(Salesforce)のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)CEOは、かつては彼自身も慢性的なリモートワーカーだと公言していたが、オフィスにいる必要がある社員もいるという考えを強調していた。
ベニオフは、「対面とリモートワークを組み合わせる必要がある」と述べた。
「当社のエンジニアは在宅勤務をすると非常に生産的だ。家で非常に生産的に仕事ができる人がたくさんいる。だが、オフィスで生産性が高い営業担当者も必要だ」
メタ(Meta)のマーク・ザッカ―バーグ(Mark Zuckerberg)CEOは、「在宅勤務者は効率的ではなく、エンジニアはオフィスに来た方がより多くの仕事をこなせる」と述べ、自身の見解を正当化するために社内の業績データを引用した。
テスラ(Tesla)のイーロン・マスク(Elon Musk )CEOは2023年、CNBCのインタビューで、リモートワークを「道徳的に間違っている」と話した。
しかし、リモートワークが生産性に与える影響に関する研究はその結果が一致していない。生産性の向上を明らかにした研究もあれば、マイナスの影響を示した研究もある。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の分析によると、この食い違いは生産性の測定方法に起因している可能性があるとBusiness Insiderは以前報じている。
しかし、世界中の2000万件の科学研究と400万件の特許出願を調査し、対面で仕事をする方がイノベーションにつながると明らかにした研究論文をBusiness Insiderのアキ・イトウは紹介している。
「すべての企業が完全な現場主義に戻るべきだとは言わない」と、オックスフォード大学(Oxford University)の経済学者であり、この研究論文の共同執筆者であるカール・ベネディクト・フレイ(Carl Benedikt Frey)はBusiness Insiderに話した。
「だが、純粋に画期的な技術を開発しようとする観点から考えるなら、できる限り現場にいた方がいい」