エヌビディアの本社「ボイジャー」を見てみよう…「障壁も境界もない」という企業哲学を反映

Polly Thompson原文翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue

Nov 25, 2023, 3:00 PM

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エヌビディア本社のオフィスは生産性向上を目指した設計となっている。
エヌビディア本社のオフィスは生産性向上を目指した設計となっている。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco
  • アメリカの半導体メーカー、エヌビディアは昨年、「ボイジャー」と呼ばれるオフィスを開設した。
  • 7万平方メートルのスペースには、「障壁も境界もない」という同社の哲学が反映されている。
  • Business Insiderは、このプロジェクトの設計責任者に話を聞いた。

半導体メーカーのエヌビディア(Nvidia)はここ数年、大きな成功を収めている。AIフィーバーが世界を席巻する中、同社のGPUチップの需要は急増した。

エヌビディアはAIのトレンドにいち早く着目し、ChatGPTなどの発展著しいテクノロジーで使われるチップの生産で大きくリードするようになった。

同社の株式は年初来250%近く上昇し、時価総額は瞬く間に1兆2000億ドル(約180兆円)に達した。

エヌビディアが成功した一因として、そのフラットな組織構造が考えられる。

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「これほど動きが速い状況では、社内の情報の流れもできるだけ速くしたい」と、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOはハーバード・ビジネス・レビューのインタビューで語っている。

エヌビディアでは、可能な限り効率的に事業を運営するため、3層から4層の管理層を取り除き、フラットな構造にするために全力を注いでいると、フアンは述べている。

同社の「障壁も境界もない」というアプローチにおけるもう1つの鍵は、そのオフィスにあるという。

2022年初頭にオープンしたカリフォルニア州サンタクララ本社は、約7万平方メートルの堂々とした建物で、会社のビジョンに合わせて社員のパフォーマンスを高めるように設計されている。

エヌビディアのサンタクララ本社、「ボイジャー」。
エヌビディアのサンタクララ本社、「ボイジャー」。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

建築事務所ゲンスラーによって設計されたこのビルは、「スタートレック」に登場する宇宙船にちなんで「ボイジャー」と名付けられた。

このプロジェクトの設計責任者であるハオ・コ(Hao Ko)がInsiderに語ったところによると、このオフィスのアイデアは「人は選択肢を与えられたときに最高の仕事をするという考えに根ざしている」という。

ボイジャーの屋外ワークステーション。
ボイジャーの屋外ワークステーション。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

仕事の集中力を高めたり、メンターシップ(先輩社員から支援される関係性)を深めたり、対面ミーティングをしたりするためにデザインされた個々のスペースなど、オフィスには社員それぞれのニーズに合わせた多様なスペースがある。

「成功する職場とは、義務として行く場所ではなく、目的を持っていく場所である必要がある。だからこそ企業カルチャーを反映した快適な場所をデザインすることも非常に重要だ」とコは言う。

見晴らしのいい「鳥の巣」はミーティングスペースとして利用されている。
見晴らしのいい「鳥の巣」はミーティングスペースとして利用されている。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

ゲンスラーが行った調査によると、コラボレーションはチームが同じスペースで行うのが最も効果的だとコは説明する。

「パンデミックの際に、仕事はどこででもできることが浮き彫りになったが、同時に人が集うことで最高の仕事ができるようになることも再認識させられた」

エヌビディアでは、社員にさまざまな仕事環境を与えている。
エヌビディアでは、社員にさまざまな仕事環境を与えている。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

以前のエヌビディアのエンジニアは、従来通りの孤独なワークステーションで仕事をし、他のチームは同じフロアどころか、同じビルにさえいないような状況だった。それを解決するために、ゲンスラーはエヌビディアの全チームを1つの大きなスペースに移動させることにした。

しかし、このような広大なオープンスペースでは、音と光に関する問題に直面した。

「ベースキャンプ」と呼ばれる受付エリア。
「ベースキャンプ」と呼ばれる受付エリア。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

「音を残響させることなく跳ね返すような形状の屋根を設計し、雑音を吸収しやすい天井材を選んだ」とコは言う。

「この広いスペースでも自然光を均等に取り込み、誰もがそれを楽しめるようにすることも課題となった。そこで、多くの天窓を設け、座席の配置をガラス窓に近づけ、大きな床面に段差を設けることで解決した」

エヌビディアの中央ホールは「マウンテン」と呼ばれている。
エヌビディアの中央ホールは「マウンテン」と呼ばれている。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

また、オフィスでも自然とのつながりを感じてほしいと考えたとコは述べ、ボイジャー・オフィスにおける真の革新性は、屋内にいながらまるで外で仕事をしているかのように感じさせるだと付け加えた。

「サンタクララの気候は間違いなく世界有数のすばらしさであるということや、我々の裏庭は家庭生活の延長だという事実にインスパイアされ、このエヌビディアのプロジェクトでは、周囲の自然の美しさとインスピレーションを取り入れ、一日中外にいるような気分で仕事ができるオフィスをつくることに挑戦した」

「バレー」と呼ばれるスペースには、オーソドックスなオフィススペースと閉じられたミーティングエリアがある。
「バレー」と呼ばれるスペースには、オーソドックスなオフィススペースと閉じられたミーティングエリアがある。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

「4エーカー(1万6000平方メートル)のワークスペース」には、公園や集会用の「ツリーハウス」があり、ソーラーパネル付きのトレリスが建物の構造に溶け込んでいる。

建物内の各エリアには、地形的なニックネームがつけられている。

例えば「マウンテン」の階段はラボスペースのある上層階に通じている。その外周には「バレー(谷間)」という自然光がさし込む廊下があり、そこには寛いだ雰囲気のミーティングスペースや食事スペースが並んでいる。

オフィス全体に自然光が行き渡っている。
オフィス全体に自然光が行き渡っている。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco

これからのワークスペースは、人々が多様な選択肢から働く場所を選べるようになることや、より健康的で快適な環境整備を推進することに重点が置かれるだろうと、コウは述べている。

「ワークプレイスがどのように利用されるかということに基づいて、そのデザインを洗練させることで、より多くのイノベーションが生まれ、レジリエントな未来につながるだろう」

エヌビディアのオフィスは「スタートレック」にインスパイアされたという。
エヌビディアのオフィスは「スタートレック」にインスパイアされたという。
Jason O'Rear / Gensler San Francisco


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