米・ラスベガスで今年も始まったテクノロジーの総合展示会「CES2020」。毎年、CESの本会場とは別に、目玉製品が集まる報道関係者向けのサテライトイベントが開かれている。
その1つがPepcomの主催する「Digital Experience!」だ。今年はどんな製品が出てきたのか、さっそく見ていこう。
世界初の「見えない」スマートロック
普通の鍵穴があり、一見するとスマートロックらしくない。
撮影:山口健太
世界初のインビジブル(目に見えない)スマートロックという、キャッチーなフレーズで注目を浴びていたのが「Level」だ。スマートロックによくあるボックス状のデバイスはなく、一般的なシリンダー錠と見分けがつかない。
スマートロックの本体はドアの中に埋め込まれている。
それもそのはず、Levelのスマートロックはドアの鍵に内蔵するタイプだからだ。アップルの「HomeKit」に対応しており、アプリやSiriから開け閉めできるのはもちろん、既存の物理鍵もそのまま使える仕組みとなっている。取り付けや電池交換の手間は気になるが、これまでにないスマートロックと言える。
USB PD最高出力の充電器が手のひらサイズに
USB PDとして最大の100Wに対応した充電器。コンパクトだが、ずっしりと重たい。
高出力化と小型化が進むUSB充電器としては、AUKEY(オーキー)が複数の新モデルを展示していた。
いずれも最新素材の窒化ガリウム(GaN、担当者はギャンと発音していた)を採用したコンパクトなモデルだが、中でも目を引いたのがUSB PDの「100W」出力に対応したモデルだ。100WはUSB PD規格の上限となっており、より電力が必要とされるUSB PD対応PCの充電も可能となる。
新しい60Wの充電器(写真左)も並んだ。いま売れ筋の30Wクラスの大きさだ。
USB PD充電に対応したスマホとPCを持ち歩く人に便利なのが2ポートタイプだ。2ポートで最大65W(同時に使う場合は18W+45Wで63W)のモデルのほかに、「2ポートで合計100W(詳細不明)の隠し球も用意している」とAUKEYの担当者は語る。
スマホとPCのUSB PD充電を1台でまかなえる2ポートタイプ。
発売時期は2020年第2四半期とのこと。最近、毎年のように充電器を買い替えている筆者だが、今年も手を出すことになりそうだ。
レノボも採用したノートPCのワイヤレス充電台
レノボの最新PC「ThinkBook Plus」をワイヤレス充電している様子。
Qiによるワイヤレス充電に対応したスマホが増える中、ノートPCをワイヤレス充電に対応させる技術はいくつか存在している。その中でも、レノボが採用に踏み切ったのが仏energysquare社の「Power by Contact」技術だ。
energysquareによるプロトタイプ。300Wの出力にも対応できるという。
対応するノートPCの底面にはレシーバーが装着されており、充電台であるトランスミッターの適当な場所に置くだけで充電が始まる仕組みだ。充電速度は有線のACアダプターに匹敵するレベルで、充電台に指を置いても安全としている。レノボの採用をきっかけに、普及が進むかもしれない技術だ。
スマホからのライブ配信に特化した専用コントローラー
スマホに特化したライブ配信ツール「GO:LIVECAST」。
スマホ1つでいつでもライブ配信を始められる動画サイトは増えている。その中で、電子楽器などで知られるローランドはスマホに特化したライブ配信ツール「GO:LIVECAST」を出展した。
コントローラーにはBGMや効果音、テキストを打つためのボタンが用意されており、忙しいライブ配信中でも迷わず操作できる。ツイキャスやYouTubeの設定はプリセットで入っており、配信初心者でも機材トラブルなく配信できるという。
2台目のスマホの映像に切り替えたり、画面端に表示できる。
家庭に使っていない古いスマホがあれば、2台目のカメラとして利用できる。配信画面の中に取り込む機能により、一味違うライブ配信ができそうだ。日本では1月25日に発売予定となっている。
「投光器」付きの防犯カメラで不審者を撃退
Arlo Pro 3 Floodlight。
アメリカでは玄関先に設置するセキュリティカメラの需要が高まっている。宅配業者が荷物を置いていく「置き配」が普及する一方、荷物を盗まれるトラブルも増えているからだ。
こうした状況の中、さらにアグレッシブな製品も出てきた。「Arlo Pro 3 Floodlight」は、投光器のように強烈な光を発することで、カメラの前方をしっかりと照らせるのが特徴だ。
直視できないほど強烈な光を放つ。
実際に試したところ、それなりに明るい室内でも直視できないほどのまぶしさを感じた。薄暗い玄関先などでは、不審者を撃退する効果も期待できそうだ。まさに「必要は発明の母」と言えるガジェットだろう。
リサイクル素材を活用したPCバッグ
リサイクル素材を使ったPCバッグ「HP Renew」。
CES2020におけるトレンドの1つとして、テクノロジー企業によるサステナビリティー(持続可能性)への取り組みがある。HPのブースには、最新のPCやモニター製品と一緒に、リサイクル素材を使用したPCバッグが並んでいた。
HPは海洋プラスチックごみを回収した再生素材の活用に取り組んでおり、目に見えない部品や商品パッケージなどから採用を進めている。サステナビリティーにもテクノロジーを活用することで、他社よりも先を行こうという競争が始まっているわけだ。
海洋プラスチックごみをリサイクルし、製品に再利用している。
消費者にとっても、商品を選ぶ上でスペックやデザイン、価格はたしかに重要だが、そこに「持続可能か」という視点を加える時期に来ているのかもしれない。
(文、撮影・山口健太)
山口健太:10年間のプログラマー経験を経て、2012年よりITジャーナリスト。欧州方面の取材によく出かけている。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。