
37歳のアンドレ・ネイダー(Andre Nader)氏には、もう9時から5時までの仕事をする必要はないだろうと思えるだけの蓄えがある。
テック業界で15年間(そのうち9年間はメタで)働いた彼は、2023年にレイオフされた。そして、新たな仕事を探すのではなく、2021年から始めていた「FAANG FIRE」というサブスタック(Substack)のコンテンツ発信に力を入れるとともに、マンツーマンのコーチングを始めた。FIREとは「経済的自立と早期リタイア(Financial Independence, Retire Early)」の頭文字だ。
彼と、ウーバー(Uber)でデザイナーをしている妻は、早期リタイアに向けて準備を続けてきて、すでに7桁ドルの貯蓄を築いていた。妻のテック業界での収入と2人の貯蓄で、サンフランシスコで暮らす3人家族の生活を十分維持することができている。ネイダー氏は厳密に言えば30代でリタイアしているが、妻が仕事を辞めるまで、自身は「セミFIRE」だと考えているという。
経済的自立に関するブロガー兼コーチは、お金に関する考え方を変え、富を築くのに役立った3冊の本を紹介してくれた。
『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え(原題:The Simple Path to Wealth)』JL・コリンズ(JL Collins)
コリンズ氏が2016年に発表したこの本は、FIREコミュニティーでは人気の1冊だ。
著者は、富を築く簡単な方法を提供するという約束を果たしている。その主なアドバイスは、バンガード(Vanguard)のトータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド(VTI)を通じた株式の購入だ。ネイダー氏は、元テック企業の社員として、それを高く評価しているという。
テック業界の仕事の多くは、過剰な創造性を発揮したり、非常に分析的になったり、とても複雑なことを行ったりすることが日々求められます。私たちは資金管理に対しても同じアプローチを取る必要があると考えているのです。
ネイダー氏によると、コリンズ氏はその考えを否定し、反対のことを提案しているという。
複雑である必要はありません。他の人がやった計算に頼って、退屈なものにしておけばいいのです。
ネイダー氏は常に物事をシンプルに考えていたわけではない。20代前半にオプション取引でかなりの額のお金を失ったそうだ。低コストのインデックスファンド投資について知ったとき、その効果的で手間のかからない戦略に魅了された。そして、VTIやVXUS(バンガード・トータル・インターナショナル・ストック・インデックス・ファンド)など、主にフィデリティ(Fidelity)とバンガードのインデックスファンドに投資して、彼は富を築いてきた。
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール(原題:DIE WITH ZERO)』ビル・パーキンス(Bill Perkins)
ネイダー氏は、パーキンス氏の型破りな資金管理ガイドを読んでから、自分の消費哲学が変わったと語る。
ネイダー氏にとってお金の節約は自然なことであり、それはFIREを追求する人物にとっては良い資質であったが、その倹約癖のために人生を豊かにするようなことにお金を使えないこともあった。
パーキンス氏の本は「私には良いカウンターパンチになりました」と彼は語った。
もともと倹約家の私は、当たり前のように計算を重ねて暮らしています。でも、この本のおかげで、自分のお金について考えるのと同じように、経験についてもっと考えるようになりました。お金が複利で増えるように、経験によって人生がより豊かになるのです。

ネイダー氏によると、この本で詳述されているフレームワークのひとつが特に心に響いたという。自分の人生を5年間のバケツに分けて考え、その期間で最も意味のある経験を最大化するというものだ。
たとえば、娘が生まれてから最初の5年間は「ディズニーワールドに行くのに最適な時期ではないかもしれません」と彼は話した。
「たぶん、娘が5歳から10歳のときがベストでしょう」
37歳になった彼は、できるうちにもっと冒険的な活動を優先することも考えている。
55歳から60歳という時期では、30代から40代前半の膝と同じような状態というわけにはいかないので、おそらくダウンヒルスキーはやりたくないでしょう。自分のライフステージに合わせた経験をすることが必要なのです。
『人生のダイヤモンドは足元に埋まっている 強欲資本主義時代の処方箋(原題:Enough)』ジョン・C・ボーグル(John C. Bogle)
ネイダー氏がFIREを追求することを決めたとき、彼はバンガード創業者、ボーグル氏の本で読んだ概念である「十分な数字」を設定した。それは本質的に、もう1ドルも稼がなくても済むようになるための金額である。
「『必要』ということが重要です」とネイダー氏は言う。
より多くの収入を得続けることはできますが、目標を達成したり、望むような生活を送ったりするために必ずしも必要というわけではありません。私にとって、「必要」は常に大きなモチベーションの要素でした。
2024年後半の時点で、彼の十分な数字は約560万ドル(約8億4000万円、1ドル=150円換算)だ。サンフランシスコで生活する家族の年間支出に加え、医療費や娘の教育費といった将来の費用を考慮して計算した。
2023年にレイオフを経験した彼は、人生にはいろいろなことが起こり、出費や状況が変化し続けることを自覚している。そういった理由から、「常に数字を計算して、どのくらいあれば十分なのかを計算しています」と彼は語った。