石破茂・自民党総裁、第103代首相に選出 30年ぶり決選投票

決選投票で首相に指名された石破氏(11日、衆議院)

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郭悠(コー・ユー)BBC記者(シンガポール)、岡崎恵理BBC記者(東京)、シャイマ・ハリルBBC東京特派員

日本の衆参両議院は11日午後、本会議で首相指名選挙を行い、自由民主党の石破茂総裁(67)を第103代首相に指名した。参院では最初の投票で過半数を獲得した石破氏が指名されたが、衆院では1回目の投票で決着がつかず、石破氏と最大野党・立憲民主党の野田佳彦代表による決選投票が行われた。衆院での決選投票は1994年以来30年ぶり。

この日午前、石破内閣が総辞職した。これを受けて臨時国会が召集され、首相指名選挙が行われた。

参院の首相指名選挙では、石破氏が過半数の142票を獲得。立憲民主党の野田氏が46票、日本維新の会の馬場伸幸氏が18票、国民民主党の玉木雄一郎氏と共産党の田村智子氏がそれぞれ11票、れいわ新選組の山本太郎氏が5票などの順で、石破氏が過半数に達した。

一方、投票総数465票の衆院では1回目の投票で過半数に達した候補がいなかったため、石破氏(221票)と野田氏(151票)の上位2人による決選投票となった。

午後3時30分ごろから行われた決選投票の結果、石破氏が221票、野田氏が160票、2人以外の氏名が書かれた無効票が84票となり、石破氏が第103代首相に指名された。

石破氏は直ちに組閣に着手し、11日中に第2次石破内閣を発足させる見通し。

石破氏は首相指名を受けて午後4時46分、ソーシャルメディア「X」に、「103代内閣総理大臣を拝命いたしました。厳しい内外の環境の中、国家国民のために、微力を尽くして参ります」と投稿した。

衆議院での決選投票で票を投じる自由民主党の石破茂総裁(11日)

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石破首相は今後、自民党内の対抗勢力、経済の諸問題、そして不安定な国際情勢の間をかじ取りしていかなくてはならない。

さらに少数与党のトップとして今後、国会の空転や膠着(こうちゃく)を回避し、あらゆる法案や予算案を成立させるため、野党の要求に耳を傾けていく必要がある。

元防衛相の石破氏は、故安倍晋三氏など自民党関係者を公然と批判したことでも知られ、党内で反発を招く一方、有権者の間ではそうした「党内非主流派」としての姿勢が支持されることもあった。

石破氏は9月27日に、岸田文雄首相(当時)の後継となる自民党の党首に選出された。その3日後、首相に正式就任する前に、解散・総選挙の方針を発表した。

10月27日に投開票された衆議院議員(定数465)選挙では、自民党と公明党の与党は計215議席にとどまり、過半数(233議席)を下回った。石破氏は「与党による過半数維持」を勝敗ラインに設定していたが、これをクリアできなかった。

選挙の翌日に石破首相は記者会見で、「国民の皆様方から、極めて厳しいご審判を頂戴をいたしました。痛恨の極みであります。これを真摯に厳粛に受け止め、わが自民党は心底から反省し生まれ変わっていかなければなりません」、「今回の厳しい結果は、自由民主党の改革姿勢に対する国民の皆様方の厳しいご叱責と受け止めております」と述べていた。

インフレ率の上昇、景気の停滞、円安といったさまざまな経済の問題に日本が直面するなか、自民党は支持を失っていた。

さらに近年では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や、政治資金パーティー収入が政治資金収支報告書に不記載だったとされる問題など、相次ぐスキャンダルで自民党に対する国民の批判が相次いだ。今年8月に岸田文雄前首相が任期満了に伴う総裁選不出馬を発表した際には、旧統一教会の問題や不記載事件など「政治とカネ」の問題を挙げ、「国民の政治不信を招く事態が相次いで生じた」と述べていた。

石破首相はこのほか、外交面でも新たな課題に直面する。アメリカ大統領選の結果を受け、トランプ次期政権がこれまで以上に保護主義的な政策を日本にも向けてくる可能性があり、日本を含めた多くの国の鉄鋼輸入に高い関税を課すことも考えられる。

石破氏はかねて、政治改革、経済再生、防衛費増額などを掲げてきた。同性婚や選択的夫婦別姓については、9月の自民党総裁選で「同性婚を認められないことで不利益を受けているとすれば、救済する道を考えるべきだ」、「選択的ということなんだから、それを否定する理由はない」と述べるなど、それまでは柔軟な姿勢だったものの、首相就任後には「国民一人一人の家族観とも密接に関わるもので、国民各層の意見や国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況も注視していく必要がある」、「さらなる検討をする必要がある」と慎重姿勢に変わっている。