米最高裁、TikTok禁止法を全員一致で支持 差し止め請求を退ける
動画投稿アプリ「TikTok」について、運営会社に事業売却かアメリカでのサービス停止を迫るアメリカの法律について、米連邦最高裁判所は17日、同法の差し止めを求めたTikTok側の訴えを退けた。
TikTok側は、この法律が違憲で、アメリカの1億7000万人ユーザーの言論の自由を侵害するものだと主張していた。
しかし、最高裁はこの日、TikTok禁止法は言論の自由を保障する合衆国憲法修正第1条に違反しないとして、同法を全員一致で支持した。
最高裁は、「1億7000万人以上のアメリカ人にとって、TikTokが表現や、交流手段、コミュニティの源としての、特徴的かつ広範な手段を提供していることに疑いの余地はない」としつつ、「連邦議会は、TikTokのデータ収集活動や、外国の敵対勢力との関係について、十分な根拠に基づき国家安全保障上の懸念を抱き、それに対処するためには事業売却が必要だと判断した」とした。
アメリカ政府は、TikTokを運営する中国企業バイトダンスが中国政府と関係があると指摘。連邦議会は昨年4月、バイトダンスがTikTokのアメリカでの事業を売却しなければ国内での利用を禁止するとする法案を可決した。
バイトダンス側は、中国政府と情報を共有している事実はないと繰り返し主張している。
最高裁の判断を受け、バイトダンスは19日までに、アメリカでの事業を第三者に売却するか、アメリカでの使用禁止に直面することになる。
米アップルとグーグルは19日から、新規ユーザーへのTikTokアプリの提供を停止する。既存ユーザーには、セキュリティ・アップデートを提供しなくなる。
バイトダンスはTikTokを売却するつもりはなく、法律の差し止めが認められなければ、19日にアメリカでの事業を停止するとしている。
「トランプ新政権に委ねる」
ホワイトハウスは同法の施行について、20日に発足するドナルド・トランプ新政権に委ねられることになるとした。
ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は声明で、ジョー・バイデン大統領の立場は数カ月前から明確だったとした。
「アメリカ人へのTikTokの提供は今後も続くべきだが、(TikTok禁止法を)策定時に議会が特定した国家安全保障上の懸念に、しかるべく対処するアメリカ人所有者かそのほかの所有者のもとで行われるべきだ」と報道官は説明した上で、「ひたすらタイミングの問題」によって、「この法律を施行するための行動を、20日に発足する次期政権に委ねなくてはならない」のだと、バイデン大統領は理解しているとも付け加えた。
一方、トランプ次期大統領は、「そう遠くない将来」に決断を下すと約束している。
トランプ氏は17日、「最高裁がこのような判断を下すことは予想されていた。誰もがこれを尊重しなければならない」と、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
「TikTokに関する私の決断は、そう遠くない将来に下されるだろう。しかし、状況を見直す時間が必要だ。乞うご期待!」
トランプ氏は、TikTokを含む複数の問題について、中国の習近平国家主席と話し合ったことも明らかにした。
TikTokの周受資最高経営責任者(CEO)は、同アプリのアメリカでの利用を継続するために尽力してくれているトランプ次期大統領に感謝したいと述べている。同CEOは、トランプ氏の大統領就任式に出席するとみられる。
中国の諜報活動に懸念
TikTok禁止法は、アメリカ国内で、中国の諜報活動への懸念が高まる中で成立した。
TikTokはアプリ上でのユーザーの閲覧情報以外のデータも収集できると、複数のサイバーセキュリティ企業は示唆している。
メリック・ガーランド米司法長官は、権威主義的な政権がアメリカ人のデータに「無制限にアクセス」できる状態はあってはならないとして、今回の決定は中国が「アメリカの国家安全保障を損なうためにTikTokを武器化」することを防ぐものだと述べた。
中国は2017年、国外で暮らす中国国民に対し、情報機関への強力を強制する法律を制定した。
しかし中国政府は、国の代わりに情報を集めるよう企業側に圧力をかけている事実はないと主張し、TikTok禁止法を批判した。TikTokも、データ提供を求められてはいないと、繰り返し強調している。
TikTok側は、同法は言論の自由を危険にさらし、ユーザーや広告主、コンテンツ制作者、従業員に打撃を与えるものだと主張した。TikTokは7000人のアメリカ人従業員を抱えている。
TikTokとバイトダンスの弁護人ノール・フランシスコ氏は、米最高裁で、このアプリは「アメリカで最も人気のある、言論プラットフォームの一つ」だと主張。TikTok禁止法は、バイトダンスがアプリを売却しない限りTikTokを「使えなくする」ものだと批判した。