英外相、パレスチナ国家の承認を「前倒しする用意」示唆 和平には「不可逆的進展」必要と

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相

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イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は30日、同国にパレスチナ国家を正式に承認する時期を前倒しする用意があることを示唆した。

昨年11月の外相就任後、4度目となる中東訪問を前にキャメロン氏は、中東での和平を促進するにはパレスチナ人に政治的地平を与える必要があると、与党・保守党の中東評議会 (CMEC)で述べた。

キャメロン氏はまた、イギリスにはパレスチナ国家がどのようなものかを示す責任があると語った。

そして、パレスチナの人々に対して「2国家解決」に向けた「不可逆的な進展」を示す必要があるとした。

「そうなれば、我々は同盟国とともに、そして国連も含め、パレスチナ国家の承認という問題を検討することになるだろう」

「それが、このプロセスを不可逆的なものにする一助となりうる」

援助物資を乗せたトラックの列(ガザ地区南部のケレム・シャローム検問所)

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画像説明, キャメロン英外相はガザ地区への人道支援を拡大するようイスラエルに求めている。画像は援助物資を積んだトラックの列(ガザ地区南部のケレム・シャローム検問所)

キャメロン氏はまた、パレスチナ自治区ガザ地区へのさらなる人道的支援を許可するよう、イスラエルに求め、イギリスやそのほかからの重要な援助が、ガザの境界で送り返されているのは「ばかげている」と述べた。

キャメロン氏はさらに、イスラエルは市民に安全を提供することができなかった、イスラエルにとってこの30年間は失敗の物語だった、と述べた。

そして、その失敗を認めることによってのみ、平和と進歩が生まれるとした。

イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領(右)とイギリスのキャメロン首相(2023年11月)

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交渉段階で承認する可能性

イギリスは長らく、イスラエル人とパレスチナ人が異なる国家で共存する「2国家解決」策を支持してきた。

しかし、キャメロン氏は、最終的な和平交渉の一部としてではなく、もっと早い段階で、つまり交渉そのものにおいて、イギリスが外交上、パレスチナ国家を正式に承認する可能性を示唆した。

同時に、ガザ地区を統治できる「高度の知識を持った、優れた指導者たち」を擁する新しいパレスチナ当局を「素早く立ち上げる」必要があるとも、キャメロン氏は述べた。

「パレスチナの人々に政治的地平を与え、2国家解決と、特に重要なパレスチナ国家の樹立に向けた不可逆的な進展を見せることが、最も重要と言っていいだろう」

「我々には責任がある。パレスチナ国家がどのようなものになりうるか、どのような構成になるのか、どのように機能するのか、そして特に重要なのは、この問題が起きたときに我々が同盟国とともに、国連を含め、パレスチナ国家承認の問題に目を向けるということを示し始めるべきだ」

「それが、このプロセスを不可逆的なものにする一助となりうる」

キャメロン氏は、長期的な取り決めの一環として、イスラエルは人質全員を取り戻すとともに、ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けられなくなること、そしてハマス指導者がガザ地区から撤退することを保証される必要があると述べた。

そして、合意に至るのは「難しい」が不可能ではないとした。

国内外の反応

駐英パレスチナ常駐総代表部のフサム・ゾムロット大使は、イギリスがパレスチナ国家の承認を「結果ではなく、平和的解決に寄与するものとして」検討するのは初めてのことだとし、キャメロン氏の発言は「歴史的」なものだと述べた。

しかし、パレスチナ国家の承認を前倒しするというアイデアは、英国内で一部の保守党議員の怒りを買った。

環境・食糧・農村地域相などを歴任したテリーザ・ヴィリアーズ氏は、「パレスチナ国家の一方的承認を前倒しし、加速させることは、ハマスの残虐行為に報いることになる」と下院で語った。

外務省のアンドリュー・ミッチェル開発・アフリカ担当相は、英政府はパレスチナ国家を「二国間で」承認するつもりはないが、「和平という目的に最も適した時期に」承認するつもりだと述べた。

イスラエル政府はキャメロン氏の発言についてコメントしていない。

「失敗の30年間」

キャメロン氏は、戦闘の一時停止が今こそ必要であり、現在進行中の交渉には「希望の兆し」があると語った。

「単に紛争を終結させるだけでなく、数カ月間ではなく数年間の平和を意味する政治的解決策を見いだす中で、本当に前進できるという道筋が見えてきた」

キャメロン氏はまた、「(戦闘の)一時停止を、戦闘に逆戻りすることなく持続可能な停戦に変えることが」真の課題だと述べた。

「それこそが、我々が求めるべき目標だし、さらに言えば、一時停止から持続可能な停戦に移行する方法だけでなく、そこからどのように、長期的な政治的解決を実現するための政治的な動きや取り決めへと移行していくのかを示すことが必要だ」

「これはとてつもなく難しいことで、過去には努力が失敗に終わったこともある。それでも我々は諦めるわけにはいかない」

「この30年間が、何かを物語っているとすれば、それは失敗の物語だ」

「結局のところ、これはイスラエルにとっての失敗の物語だ。確かにイスラエルは経済成長を遂げ、生活水準も向上した。防衛や安全保障、(ガザ境界の)壁などにも投資してきた。しかし、すべての家庭が望むもの、つまり安全を提供することはできなかった」

「だからこの30年間は失敗だった」

「この失敗を認め、平和と進歩がもたらす恩恵が戦闘に逆戻りすることによる恩恵を上回る場合に真の平和と進歩はもたらされると認識することによってのみ、それは実現する」