米の10歳少女、地元で中絶できず他の州へ 強姦疑いの男を訴追

Gershon Fuentes

画像提供, Franklin County Jail

画像説明, 10歳少女を強姦した罪で起訴されたフエンテス被告

妊娠の人工中絶が禁止されたばかりの米オハイオ州からイリノイ州へ移動して中絶手術を受けた10歳少女について、少女を強姦した疑いで逮捕・訴追された男が13日、オハイオ州コロンバスの裁判所に出廷した。

アメリカでは米連邦最高裁が6月24日に長年の判例を覆し、人工中絶を受ける権利は憲法で保障されているものではないと判断を示した。オハイオ州ではその数時間後に州議会が、妊娠6週以降の中絶処置を一切禁止した。強姦や近親相姦で妊娠した場合も、中絶が認められない。

地元紙インディアナポリス・スターによると、強姦されて妊娠した少女は、妊娠6週間と3日の時点で児童虐待に詳しいオハイオ州内の医師に相談し、その医師の紹介で、インディアナ州で6月30日に中絶手術を受けた。

この少女については、ジョー・バイデン米大統領が今月8日、最高裁判決を批判した演説の中で言及し、「10歳の子だ。10歳で強姦されて、妊娠6週で、すでに衝撃を受けているのに。別の州に移動しなくてはならなかった。自分がその小さい女の子だったらと想像してみるといい」と強調していた。

この演説を受けて、少女について世界的な注目が集まっていたものの、保守派の野党・共和党議員などの間では本当のことなのかと疑う声も出ていた。

そうした中で13日、オハイオ州コロンバスの法廷に、少女を強姦した罪で起訴されたハーション・フエンテス被告(27)が出廷した。オハイオ州フランクリン郡の地裁判事は、被告に逃亡の危険があり、少女にさらに危害を加える恐れがあるとして、被告の勾留を命じ、保釈金を200万ドル(約2億8000万円)に設定した。

インディアナポリス・スターによると、被告の罪状認否手続きで捜査員は少女の証言として、自分が妊娠したのはフエンテス被告のせいだと述べていることを明らかにした。

地元紙コロンビア・ディスパッチによると、コロンバス市内在住の被告は、少なくとも2回にわたり少女を強姦したと認め、12日に逮捕され、強姦罪で起訴された。捜査員らは逮捕時に、被告の唾液を採取。捜査当局は、少女が中絶手術を受けたインディアナポリスの中絶クリニックで採取されたDNAと照合して鑑定する方針という。

米移民・関税執行局(ICE)は米FOXニュースに対して、フエンテス被告はグアテマラ国民で、アメリカに不法滞在していると明らかにした。

被告に有罪判決が出た場合は、終身刑を言い渡される可能性がある。

事件の初報は7月1日付のインディアナポリス・スター記事。そのような事件が確かにあったと他社がなかなか確認できずにいると、複数の保守派から内容を疑う発言が相次いだ。オハイオ州選出のジム・ジョーダン下院議員(共和党)は12日に、「またもやでまかせだ」とツイートしていたが、翌日に被告の初出廷が報道されると、ジョーダン議員はそのツイートを削除した様子。

ジョーダン議員はその後、被告を「法が許す限り最大限に訴追すべき」とツイートしている