ボーイングとエアバス、5Gの安全性に懸念 航空機器に悪影響か
航空機製造大手のボーイングとエアバスの経営陣が21日、アメリカ政府に対し、第5世代移動通信システム(5G)の導入を遅らせるよう求める書簡を発表した。5G技術が「航空業界に多大な悪影響」を及ぼす可能性があると警告している。
5G通信はかねて、使用するCバンドの周波数帯が航空機器に干渉する可能性があると指摘されていた。
アメリカの通信大手AT&Tとヴェライゾンは、来年1月5日に5Gサービスを始める予定となっている。サービス開始は本来今月だったが、これを1カ月遅らせ、干渉リスク排除のための対策を進める。
ボーイングのデイヴ・カルフーン社長とエアバス・アメリカズのジェフリー・ニッテル社長は、ピート・ブタジェッジ運輸相宛ての共同書簡で、「5Gによる干渉が、航空機の安全な運航に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘した。
また、業界団体エアラインズ・フォー・アメリカによる調査を引用。連邦航空局(FAA)が定めた5G規則が2019年に適用されていた場合、旅客機34万5000便と貨物機5400便に遅延や迂回(うかい)、欠航といった影響が出ていたとした。
電波高度計などに影響か
航空業界とFAAはかねて、5Gが電波高度計などの精密機器に干渉する可能性への懸念を表明していた。
今回の共同書簡でも、「エアバスとボーイングはアメリカの航空業界のステークホルダー(利害関係者)と協力し、5Gが電波高度計に干渉する可能性について理解を深めている」と述べた。
また、運輸省に航空安全のための提案書を提出し、リスクを最低限に抑えるよう求めたと発表した。
FAAは12月、5Gによる干渉で航空機が航路変更を迫られる可能性があると発表。1月5日の5Gサービス開始前にさらなる情報を提供するとしていた。
また、航空業界の団体は、通信各社が導入した対策は十分ではないと指摘。ボーイングとエアバスは、空港や航空安全上の重要な場所で、携帯電話の電波を制限する対案を示したという。
米ユナイテッド航空のスコット・カービー最高経営責任者(CEO)は先週、FAAの5Gに関する命令によって、アメリカの主要空港40カ所で電波高度計が使えなくなる可能性があると述べている。
通信業界は批判
一方、ワイヤレス通信の業界団体CTIAは、5Gは安全な技術であり、航空業界がいたずらに恐怖心をあおり、事実をゆがめていると批判した。
CTIAのメレディス・アットウェル・ベイカー会長は11月に投稿したブログで、「5Gサービスの遅延は悪影響を及ぼす。アメリカがパンデミックから回復・再建しようとしている中で、サービス開始を1年遅らせれば、経済成長に500億ドル(約5兆7000億円)の損失が出るだろう」と述べた。