仏デカトロン、ランニング用ヒジャブの販売取りやめ 「中傷の波」受け

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フランスのスポーツ用品大手デカトロンは、同国でのランニング用ヒジャブ(ムスリムの女性が頭髪を覆う布)の販売を取りやめると発表した。販売を発表した後に「中傷の波」と「前例のない脅迫」を受けたためとしている。
ランニング用ヒジャブをめぐっては、一部の政治家がフランスの世俗主義的価値観に反すると指摘し、デカトロン製品をボイコットするよう促すなどしていた。
このヒジャブはすでにモロッコで販売されており、デカトロンも当初はフランスでの販売を擁護していた。
フランスでは、ムスリム女性の公共の場での服装についてたびたび論争が巻き起こっている。

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デカトロンの広報担当を務めるクサヴィエ・リヴォワ氏はRTLラジオで、「我々はこの製品をフランスで発売しないことを決めた」と発表した。
リヴォワ氏はAFP通信の取材で、「世界中の女性がスポーツをできるようにする」のがそもそもの決定だったと話している。
簡素で軽い素材のランニング用ヒジャブは頭髪だけを隠し、顔は隠さないもので、今年3月から49カ国で発売される予定だった。
アメリカの大手ナイキは2017年に、フランスでスポーツ用ヒジャブを販売している。
物理的な脅迫も
デカトロンによると、同社には「ランニング用ヒジャブ」についての苦情のメールや電話が500件寄せられたほか、店舗スタッフが侮辱されたり、物理的に脅迫されたりしたという。
アグネス・ブジン社会問題・保健相はRTLに対し、こうした製品はフランスで禁止されてはいないものの、「私が共有していない女性像だ。フランスのメーカーがスカーフを販売するのは感心しない」と述べた。
また、エマニュエル・マクロン大統領率いる「共和国前進」のオロー・ベルジェ報道官もツイッターでこの問題に触れ、ボイコットを促した。
「私は女性として、また市民として、我々の価値から外れるブランドはもう信頼しない」
ベルジェ氏のツイートに対してデカトロンは、「我々の目標は簡単なもの。何であれ(ランニングにそぐわないヒジャブを被って走る女性に)適したスポーツ製品を届けること」と返信した。
デカトロンはその後、「暴力的な」反応が「消費者のニーズに応えたいという我々の思いを越えてしまった」ため、平和を取り戻したいと話している。
フランスとムスリムの衣服
フランスは厳しい世俗主義の法律の下、児童や公務員などに求められる中立性を表していないとして、スカーフといった目に見える宗教的象徴に疑問を投げかけている。
ムスリム女性のスカーフは公共の場での着用は禁止されていないが、2004年以降、公立の学校や一部の公共機関で禁じられている。

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2016年、複数のフランスの地方自治体が、イスラム教徒の女性が全身を覆う水着「ブルキニ」を禁止して問題となった。この禁止措置は後に、行政裁判の最高裁にあたる国務院が「信教と個人の自由という基本的自由を、深刻かつ違法に侵害する」と判断し、凍結を命じた。
フランスは2010年に欧州で初めて、イスラム女性の顔をすべて隠す「ブルカ」と、顔を部分的に隠す「ニカブ」の公共の場での着用禁止を決定し、2011年春から禁止措置を実施した。
権利保護団体はフランスのイスラム嫌いを糾弾し、一連の禁止措置がムスリムの女性を傷つけたと述べている。