大学生におすすめしたい資格は 就職に有利は本当か?

2025/03/12

■話題・トレンド

コロナ禍以降、資格取得に取り組む学生が増えていると言われています。資格といってもさまざまな種類がありますが、大学時代に取っておくといい資格、あるいは取りやすい資格には、どのようなものがあるのでしょうか。就活への生かし方なども含めて、資格の専門学校TAC(タック)に聞きました。(写真=さまざまな資格講座のパンフレット、2021年11月3日、朝日新聞社撮影)

学生の意識が変化

学生時代に力を入れて取り組んだこと、いわゆる「ガクチカ」は、就活において自分の強みとなります。サークルやアルバイト、ボランティア活動、留学などさまざまな選択肢がありますが、その一つとなるのが、資格取得です。TAC 法人営業4部 大学生協等営業担当責任者の鈴木信一さんは、「コロナ禍の前後で学生の意識が変化している」と言います。

「コロナ禍で学生たちは何もできない学生生活を経験しました。コロナ禍が落ち着き、学生時代にできることはやっておきたいという意識が強まったのではないでしょうか。その一つが資格取得ではないかと思います。もちろん、先行きが見えない世の中に対する不安から、自分に付加価値をつけるという意味で資格取得を考える学生も多いようです」

また、10~20年くらい前と比べると、資格を取得することに対するハードルが下がっている傾向もあると言います。

「かつては大学時代に、例えば難関の公認会計士の資格取得を目指して勉強を始めて、受からないまま卒業となり、就職浪人をしてでも何年もチャレンジするというケースがありました。一方で最近の学生は資格にしがみつかず、卒業までに受からなかったら、きっぱりあきらめて就職する傾向があります。採用が『売り手市場』であることが影響していると思いますが、期限を決めて勉強することは、資格取得に取り組む姿勢として、いい傾向だと思います」

資格取得に取り組みやすくなったのは、オンライン化が進み、大学の授業の合間にTACのような資格学校の講義動画を受講するといったことが可能になった影響もあるようです。

税理士の受験資格が緩和

学生に人気の資格として根強いのは、公務員公認会計士です。公認会計士は合格率10%以下(2024年の論文式試験の合格率は7.4%)の難関資格ですが、近年は目指す人の若年化が目立つそうです。

「高校生のうちから、資格取得に向けて勉強をスタートさせる人が増えています。年内入試で進学先を早めに決める高校生が増えていることも影響していると考えられます。公認会計士の資格を取得できれば、将来的に独立も可能ですし、自分で働き方を選択できるのも魅力です」

さらに最近、人気が上昇しているのが税理士です。2023年度から受験資格が緩和され、一部の科目はだれでも受験できるようになりました。税理士は会計科目2科目、税法科目3科目にそれぞれ合格する必要があります。会計科目は、以前は高校生や大学1、2年生が受験する場合、日商簿記1級合格などの資格が必要でしたが、それが撤廃され、だれでも受験できるようになりました。税法科目も以前は「法律学または経済学」に属する科目を1科目は履修する必要がありましたが、科目が「社会科学に属する科目(法律、経済のほか、政治、行政、社会、経営、教育、福祉、情報など広く社会に関わる多様な分野)」に拡充されました。

「税理士を目指す学生の多くは、一部の科目を学生のうちに取得し、社会人になってから残りを取得しています。一部に科目を合格しているだけでも、就活では十分にアピールできます

そのほか、問い合わせが増えているのが、「中小企業診断士」です。経営コンサルタントに関する国家資格で、取得するには1次試験(筆記)、2次試験(筆記・口述)、実務補習・実務従事の3段階のステップがあります。
「1次試験は、経済学や経営学のほか、法律や情報系の内容が含まれます。これらの学部の学生は、馴染みのある内容を学習することで理解もスムーズです」

資格取得は本当に就活に有利?

学生時代に資格を取るメリットといえば、就活を有利に進められることです。企業からすると、資格はその学生が持つスキルの目安となります。しかし、それ以上に企業が評価しているのは、「将来の自分のことを考えて、学生生活の一部の時間を使って準備を行ってきたこと」と鈴木さんは言います。

「将来のために行動を起こし、合格という結果を出した人材は評価に値すると考えているはずです。さらに面接などで、なぜその資格を取得しようと考えたのか、そのためにどのように取り組んだのかを自分自身のエピソードとして具体的に話せると、説得力があり、評価は高くなると思います

試験が難関で、たとえ合格に至らなかった場合でも、目的や取り組み方をしっかり説明できれば、一定の評価は得られる可能性もあります。

「さらに合格に至らなかった原因に対する自己分析や今後のビジョンも伝えられると、勉強した時間が無駄ではなかったということを示せるのではないでしょうか」

企業が何を評価するかを考えれば、就活に役立つという理由だけで資格取得をゴールにしてしまうと、必ずしも就活に有利とはいえないことがわかります。

就活にあたって有利な資格は何ですか、とよく聞かれますが、それ以前に大事なのは、自分はどんな職業に就きたいのかを考えることです。そこから逆算して必要な資格やスキルを学生時代に身につけておくことが理想的です」

おすすめは「IT・語学・会計」分野

どんな職業に就きたいのかが明確になっていない、でも学生のうちにやれることはやっておきたいという場合はどうでしょうか。

「今のビジネスの共通言語であるIT、語学、会計の分野は汎用性が高く、おすすめです」

 ITでは入門資格として取得しやすいのが「ITパスポート」です。ITに関する基本的な知識があることを証明できる資格で、取得を推奨する企業が増えています。会計については、簿記検定から始めるのがおすすめだそうです。

「将来やりたい仕事が見えていない段階で、難関資格に挑むのはおすすめできません。会計分野なら簿記、不動産なら宅建士(宅地建物取引士)、金融・保険ならFP(ファイナンシャルプランナー)というように、比較的難度の低い資格から入り、上位資格へとステップアップするのがベターです。自分に向いていない勉強は苦痛でしかないので、まずは難度の低い資格の勉強から始めて、向き不向きを見極めればいいのです」

一方で難関資格の合格は、「一発逆転という側面もある」と言います。

「TACを受講する大学生の中に毎年いるのが、志望通りの大学に入れず、その悔しさをバネに難関資格を目指して勉強する学生です。公認会計士などの難関資格を取れれば、学歴は関係ないですから。そういう強さが資格にはあります」

なりたい職業に就くため、就活でライバルに差をつけるため、自分の向き不向きを知るため、一発逆転を狙うため……。それぞれの資格の特性を理解できれば、活用の仕方は自分次第なのも資格の魅力といえます。

>>【連載】話題・トレンド

(文=中寺暁子)

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