第2回「十字架が切り倒され…」背負う迫害の過去 少数民族が抵抗する理由

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 ミャンマーでは1948年の独立以来、内戦が続いてきた。2011年の民政移管を経て、21年2月に国軍がクーデターで全権を掌握した後、内戦は新局面に入った。武器を持つのも初めてという若者らが国軍に武力闘争を挑み始めたのだ。武器をとった人たちの中には、長く迫害に耐えてきた少数民族の人々もいる。

 ミャンマー西部チン州が拠点のゾミ連邦連合(ZFU)のケントン副代表(37)は、米国で暮らして半年が経つ。ZFUは国軍のクーデター後、州内で国軍への抵抗を続けてきた少数民族チンの政治組織だ。

 米国では大学の客員研究員として働くが、それは表の顔。「革命が本業だ」と言う。昨年までは約2年間、タイの首都バンコクで潜伏生活を送った。本名ではなく、活動家名の「ケントン」として取材に応じた。

 英語が堪能で、国外で生活しながら、チン州の現状を欧米や日本の政治家らに伝えたり、人道支援を求めたりする役割を担う。ZFUは軍事部門を持ち、在外の同胞から武器や食料の調達に必要な資金集めにも奔走する。

 ケントン氏は山岳地帯が広がるチン州北部で、キリスト教徒の家に生まれた。牧師だった父の影響で幼少期から本が好きになり、学者になる将来を夢見た。

学術の道を志したものの、少数民族チンの自治を求めて国軍への抵抗に身を捧げるケントン氏。何が彼を突き動かすのか。その思いに迫ります。

 だが民族的にも、宗教的にも国内で少数派のチンの人々は、仏教徒の多数派ビルマ族が主体の軍政から、長く迫害されてきた。「村の丘の上に立っていた十字架は切り倒され、燃やされた」「学校では独自言語の授業が禁じられた」と振り返る。

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