真珠養殖のアコヤガイ、宮城県沖で初確認 生息域北上か、県が調査へ

福留庸友
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 主に西日本の海に分布する真珠養殖の母貝・アコヤガイが、宮城県沿岸で初めて見つかった。生息域が北上している可能性が高まったとして、県は真珠養殖への期待を高めており、詳細調査に乗り出す。

 昨年10月下旬。石巻市竹浜沿岸で漁業者が、アコヤガイに似た二枚貝を見つけた。養殖しているカキに付着していたという。

 この漁業者は、たまたま初夏に真珠養殖の盛んな三重県を訪れ、アコヤガイを目にしていたため気づき、一つを県水産技術総合センター(石巻市)に持ち込んだ。センターの職員が貝を開けると、貝殻の内側に身を囲むようにキラキラと光る「真珠層」があった。

 センターは日本真珠振興会に鑑定を依頼。DNAを調べたところ、12月17日に天然のアコヤガイだと判明した。三重県の水産研究場の職員にも殻を見てもらったところ、職員は「このサイズだと、おそらく宮城沿岸で一冬は越えているのでは」との見解を示したという。

 県はアコヤガイ発見後、県漁協組合を通して漁業者に情報提供を呼びかけた。すると、石巻市の他の浜や南三陸町の養殖カキの棚の主に表層2~3メートル部分で、漁師がアコヤガイとみられる貝を次々と発見。センターはそれらの貝を漁師から入手し、昨年12月20日時点で26個を集め、水槽で飼育中だ。

 県は、黒潮に乗って運ばれてきたアコヤガイがこの数年、海水温が高くなった県沿岸で生き延びられたのではとみる。県は、新たな養殖品目となる可能性があると期待している。

 「本当にタイムリー」。村井嘉浩知事は昨年12月の会見で、アコヤガイの初確認に顔をほころばせた。その半年前、温暖化に対応した新たな県産品として、真珠養殖の可能性を探ると明らかにしていたからだ。

 ただ、その一方で知事は「すぐに養殖に取りかかるのではなく、5年10年の長期で考えるべきだ」とも述べた。アコヤガイは病気も多く、他の地域から安易に持ち込むと危険とされ、カキなど他の水産物への影響も出かねない。センターは今後、養殖の可能性を慎重に調べるとしている。

 日本真珠振興会の田坂行男専務理事(70)によると、アコヤガイは、真珠の産地として知られる三重県や愛媛県、九州など西日本に広く分布している。冬場の海水温が12度以下になる冷たい海では生息しにくく、これまでは福井県沖が北限で、太平洋側では神奈川県葉山町沿岸あたりまでが生息域と考えられていたという。

 「アコヤガイの生息域が北上している可能性が強まった」と田坂専務理事。「今後はカキやホヤの養殖に及ぼす影響も含め、詳細な生態状況の調査が必要。加えて、養殖を始めるにはどの漁業者がどの海域で始めるのかといった調整も必要で、実現は簡単ではない」と指摘している。

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この記事を書いた人
福留庸友
仙台総局|おもに行政担当
専門・関心分野
東北、東日本大震災、メディア論