能登半島地震からまもなく1年。奥能登では9月に豪雨災害が発生し、二重災害となった。避難生活などでの精神的なストレスや肉体的な疲労による災害関連死は増え続けている。住まいや暮らしの再建に時間がかかる現状は、被災者の心にどう影響するのか。どうケアしていけばいいのか。災害時の心のケアに詳しい福島県立医科大の前田正治教授に聞いた。
二重被災の衝撃
能登半島地震の被災地では震災関連死が増えており、とても心配しています。発災後しばらくは、生きるのに精いっぱいの時期で、長期的なことは考えられません。被災者の心理も高揚しています。それから仮設住宅に身を寄せるなど、一応の衣食住が保証された状況になる。ようやく周りが見え始め、災害で失ったものの大きさを実感することになります。
そうした状況を受け止め、心が回復に向かう人はいます。一方で、回復しづらい人たちもいます。例えば、高齢者や遺族です。自宅が全壊するなど被災性が高い人もそうです。元のコミュニティーが壊れてしまったことをつらいと感じたり、身を寄せた先で孤立した状態が数カ月続いたりすると、希望を失ってしまいます。すると、生活が不活発になり、健康に影響が出ます。うつ病のリスクも高まります。
奥能登では豪雨災害もありました。人によっては二重被災のような状況になりました。この衝撃はすさまじい。何をしても災厄は避けられないのではないか、自分は無力だと強く感じてしまうかもしれません。
つらい経験を乗り越えられるのでは、と思えてきたときに、心は回復に向かいます。しかし、また災害に遭ってしまった。希望の奪われ方は格別にひどいといえます。避難生活はさらに長引くことが予想されるし、無力感も強まります。
自治体職員の疲弊も
被災者の心にこうした影響が出始めているのが今であり、今後も続きます。だからこそ今から対策を打っていくことが大切です。
また、支援者の疲弊がより強まってくる時期でもあります。特に地方自治体の職員が心配です。
燃え尽きや疲れだけでなく、職…
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