小中校と市立図書館、一体運営に 蔵書50万冊で読書機会拡大へ

青田秀樹
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 静岡県袋井市が1月、市内三つの図書館と16ある小中学校の図書館の運営を一体化する。1校あたり平均1万冊の蔵書が一気に50万冊になる。子どもたちは、市の図書館や他校にある本も通学先で借りられ、大人も学校にある本を読めるようにする。「ハコもの」に頼らず、読書の機会を広げる。

 いつでも、どこでも本に触れられるようにとの願いを込めた「まちじゅう図書館」として、1月23日から順次、運用する。

 小中学校には1校あたり1万冊の蔵書があるが、古い本がそのまま残されている例も目立っていた。「子どもたちの読書環境の改善につなげたい」(小久江暁子・袋井図書館長)と準備を進めた。

 児童・生徒は、学校の端末や1人1台行き渡っているタブレットから校外の図書館の本や雑誌を検索したり、借りたい本を予約したりできる。「注文」があれば、市内を巡回する市の職員が届ける仕組みだ。

 大人も学校にある本を借りて図書館で受け取れるようにするほか、電子書籍も1千冊導入する。そのうち小中学生向けの約270冊は「読書会」や「調べ学習」で使うことを想定して何人でも同時に読めるようにする。

 袋井市では、お金の出し入れや残高を記録する預金通帳そっくりの「ふくぶっくつうちょう」を2019年から導入し、希望者に配っている。借りた日や書名、著者に加えて本の値段も記される。まちじゅう図書館のスタートにあわせ、学校でも記帳できるようにした。読書の楽しみを増やす狙いで、11月末時点で5600冊だった発行が急増しているという。

 また、50万冊すべてにシール状のICタグを貼り付けて管理する。盗難防止に加え、学校でも図書館でも人手を介さずに簡単に貸し出し手続きが済み、どんな本を読むのかというプライバシーが守られるようにした。

 図書館の一体運営には、システム構築などに約2億円を投じた。単純比較はできないが、県が整備する新しい図書館は総事業費が298億円。大場規之市長は「大型の総合図書館があればいいが、財政の制約がある。(一体運営は)今ある環境を生かし、なるだけ早く効果を生む手法だ」と説明した。

 全国的に書店が減り続け、本との出会いの場は乏しくなっている。市によると、袋井でも20年ほどの間に市内の書店は三つ減って現在は6店。営業を続けていても、本や雑誌を扱う売り場が小さくなっているという。

 日々の楽しみだけでなく、情報の伝達の便利さでも動画が重視されつつあるが、大場市長は「活字に親しみ、読み書きの力を育んでいく必要がある」と話す。

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