今は寂しい貴生川駅 「要所」にと期待、甲賀市

仲程雄平
[PR]

 【滋賀】草津市守山市という人口増加エリアの波及効果が、甲賀市まで来ていない――。そんな思いを抱いている甲賀市。波及効果をたぐり寄せる拠点として、貴生川(きぶかわ)駅〈水口町虫生野(むしょうの)〉周辺に期待しているが、現状の駅周辺は寂しい。

 10月の市長選で無投票で3選を果たした岩永裕貴市長。今月1日の定例記者会見で、人口が増加傾向にある草津市や守山市を挙げて、「波及効果がどんどん近江八幡や能登川のほうにいってしまっている」と述べた。

 JR草津駅から甲賀市内へ延びる草津線。貴生川駅はこのJR草津線のほか、近江鉄道信楽高原鉄道が乗り入れる「交通の結節点」になっている。このため、貴生川駅から学校や職場に向かう市民は、市内のほかの駅に比べて多い。

 市は、貴生川駅周辺を整備することで、草津線沿いも波及効果を得られるようにする、というビジョンを描く。2021年には、40年を目標とした「貴生川駅周辺特区構想」をつくり、施策を進めてきた。

 「貴生川駅周辺は甲賀市内では都会」と市の担当者。だが、現状の駅周辺は店が少なく、のどかな空気がただよう。

 とはいえ、多くの人が訪れる貴生川駅の周辺が持つポテンシャル(潜在能力)は高い。

 駅の南口エリアにある広場では、12月25日まで社会実験が行われている。市民や識者らでつくる「貴生川エリアプラットフォーム」と市が主催し、今年で3回目。

 前回の社会実験では、気軽に飲食や休憩などができる場所の需要が高いことがわかった。今回は、自由に利用できるトレーラーハウスを2台設置。WiFi(ワイファイ)を完備した。外の広場では、出店したりイベントを催したりできる。

 社会実験初日の8日。この日は、トレーラーハウス内で市民がドーナツなどを販売したほか、広場ではキッチンカーが出店するなどした。

 ふらりと広場を訪れた男性(37)は、近くに住んでいるといい、「甲賀市では1番、乗り降りする人が多い駅なのに寂しいと思っている。こういうイベントを続けて活気づけてほしい」。

 市内に住む看護師の女性(52)は「駅前が広いのに、何もないのはもったいない。大きな店ができてほしい」と話した。「映画をスクリーンで流したら見に来るのでは」と担当者に提案する市民もいた。

 貴生川エリアプラットフォームのメンバー・西野日菜さん(26)は「人はいるけど、何もないのが貴生川。何もないということは、いろんなことができる可能性を秘めている、ということ。ポテンシャルしかない」と話し、「まちづくりをいっしょにやってくれる人たちが増えたらいいなと思う」と前向きだ。

 市は、南口エリアにあり老朽化が進むコミュニティーセンターの建て替えを検討しており、これを駅周辺整備の第一段階に位置づける。岩永市長は1日の定例会見で「コミュニティーセンターの建て替えと同時に、駅周辺のにぎわいづくりの第一歩を踏み出したい」と話した。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら