「アバター中傷は名誉毀損」 Vチューバーの訴え認め情報開示命令

松浦祥子
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 実名や顔を明かさない、デジタル上の分身「アバター」への中傷は、アバターを使う本人への名誉毀損(きそん)にあたるか。この点が争われた訴訟の判決が31日、大阪地裁であった。石丸将利裁判官は「アバターの表象を衣装のようにまとって活動している」とし、本人への名誉毀損にあたると判断。プロバイダー側に投稿者の個人情報の開示を命じた。

 原告は、アバターの姿で動画投稿する「バーチャルユーチューバー」(Vチューバー)の女性。SNS上で人気を集め、ツイッターのフォロワーは100万人を超える。アバターへの中傷で自身の名誉を傷つけられたとして、プロバイダー側に投稿者の個人情報の開示を求め、提訴していた。

 判決によると、女性を話題にするために設けられたネット上の無料掲示板に昨年5月、「仕方ねぇよバカ女なんだから」「母親がいないせいで精神が未熟なんだろ」と投稿があった。この投稿について、被告のプロバイダー側は「アバターに向けられたものだとしても、女性へのものとはいえない」と反論していた。

 判決は、アバターの言動は、女性自身の個性を生かし、体験や経験を反映したものだとし、女性がアバターで表現行為を行っている実態にあると指摘。「侮辱の矛先が表面的にはアバターに向けられたものだとしても、アバターで活動する者に向けられたと認められ、名誉感情を侵害されたのは女性だ」と認めた。

 Vチューバーへの中傷を巡っては、東京地裁も今年3月、同じ趣旨の判断を示し、プロバイダー側に投稿者の情報開示を命じた。

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    遠藤謙
    (エンジニア)
    2022年8月31日23時7分 投稿
    【視点】

    数年前からバーチャル空間での経済圏やWeb3.0に代表されるDecentralizedな構造、NFTのような仕組みの誕生、2021年にFacebookのMetaへの社名変更など、急激にインターネット上に新しい社会が広がっている。アーリーアダ

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    磯野真穂
    (東京工業大学教授=応用人類学)
    2022年9月1日7時9分 投稿
    【視点】

    Vチューバーへの中傷が名誉毀損とされたという判決に、一見違和感を覚える人もいるかもしれません。しかし、私たちが普段から、社会的な仮面をかぶって生きていることを考えると、それほど不思議なこととはいえないでしょう。 「社会的な仮面」とは、

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