ロシアが日本との北方領土交渉を含む平和条約交渉について「継続する意思はない」との声明を発表したことで、日本は対ロ外交の戦略の練り直しを余儀なくされる。交渉進展に強い意欲を見せた安倍元政権は、ロシアのプーチン大統領に接近して交渉を重ねたが、この路線は行き詰まった形だ。当時の安倍晋三首相はプーチン大統領とどう交渉を進め、何を得たのか。
「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」
2019年9月、ウラジオストクを訪れた当時の安倍首相は、プーチン大統領との27回目の首脳会談を終え、式典の演説でこうプーチン氏に語りかけ、「両国関係には無限の可能性がある」と強調した。
12年に首相の座に返り咲いて20年に退陣するまで、約8年にわたる安倍政権が「戦後外交の総決算」として力を入れたのが、対ロ外交だ。安倍氏は「領土問題を解決し、平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきた課題を、次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ず終止符を打つ」と訴えた。
クリミア併合でも経済協力
安倍氏は、プーチン氏と個人的な信頼関係をもとに、ロシアが望む極東での経済協力をテコにして領土交渉を進めるという道筋を描いた。しかし、交渉は難題続きだった。
最初の誤算は、14年のロシ…
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