「うるさい」「住宅街では音を消して」――。
救急車のサイレンに対する苦情が、全国の消防本部に寄せられています。サイレンの音量基準は法令で定められており、一定の音量より小さくできません。メーカー側も音の負担を減らすため、様々な工夫を凝らしています。
コロナ禍でストレスも?
東京消防庁によると、同庁の管内に2021年、救急車などのサイレンに対する苦情や要望が402件(速報値)寄せられた。このうち約190件は同一人物によるものだった。17~19年はいずれも100件近くだったが、20年は142件と増加傾向。その理由は、「はっきりしたことは分からない」という。
同庁に次いで規模が大きい横浜市消防局や大阪市消防局でも、同様の声が毎年寄せられているという。この2消防局では、増加傾向は確認できなかった。
いずれも苦情の内容は「深夜の住宅街でサイレン音を消してほしい」「サイレンやマイクのアナウンスがうるさい」などが多いという。「眠った子どもが起きてしまう」「病院が近いため何度も聞くと不安になる」といった具体的な理由もあるという。
九州地方の30代の男性消防士は、年に数回、サイレンに関する苦情の話を聞くという。「公務員になら文句を言ってもいい、と矛先が向いているようにも感じる。最近はコロナ禍でストレスがたまっている人も多いようだ」。それでも以前より、音や呼びかけに気を使うようになったという。
緊急走行中はサイレンと警光灯、法令で義務づけ
救急車などの緊急自動車は、現場に急行するときなどの緊急走行中、サイレンを鳴らすことと赤色の警光灯をつけることが法令で義務づけられている。
サイレンの音量は「前方20メートルの位置において90デシベル以上120デシベル以下」と定められており、これより小さな音量に下げることはできない。
東京消防庁は「夜間の住宅街であっても、歩行者や自転車などの通行が考えられ、事故防止のためにサイレンで注意喚起をする必要がある」と理解を求めている。
メーカーの努力で、サイレンは進化を続けています。あの「ピーポー」音も約半世紀前、市民の声を受けて開発されました。記事後半では、進化したサイレンの音を動画で聞くことができます。また、むしろサイレン音は「聞こえづらくなった」と指摘する研究を紹介。その背景も取材しました。
フェードイン・アウト機能、出動予告機能……
メーカー側も、工夫を重ねている。
大手の大阪サイレン製作所(…