Global HSI Equity Innovation Hubは「成功するために学生が何をすべきか」から「学生のためにHSIが何をサポートすべきか」へのパラダイムシフトを象徴する存在です。組織や体制、ポリシー、慣習に公平性が保たれているか目を光らせる責任をリーダーたちに課し、学生、教職員、スタッフに教育機関を変革する力を与えます。Quintero博士によると、この力こそが公平性を重視して教育に効果的にアプローチする鍵です。もう一つの重要なポイントは、学生たちの大学生活から切り離されることが多い第一世代の家族にも、キャンパスとのつながりを感じてもらうこと。「私の家族が初めて大学のキャンパスを訪れたのは、私の卒業式の日でした」と彼女は言います。「ほかの学生には、こんな体験をしてほしくありません」。学生とその家族全体を対象とするカリキュラム作りや働きかけにより、高等教育を受ける機会や学位取得が偶然に左右されない未来がやってきます。
Eva Corbett氏(Terence MacSwiney Community College)の言葉
「創造力が、革新と 機会に満ちた 世界の扉を開きます」
Eva Corbett氏
Terence MacSwiney Community College
コーク、アイルランド
創造と革新のカルチャー。
Terence MacSwiney Community College
アイルランド、コーク市。その郊外にあるホリーヒルには、Appleのヨーロッパ本社があります。ここにはコーク教育・訓練公立学校として知られるTerence MacSwiney Community Collegeもあり、12歳から18歳の生徒たちが学んでいます。カレッジのリーダーは2015年にAppleとパートナーシップを締結しました。
このパートナーシップの一環として、Appleのボランティアはカレッジの教師と一緒に「Everyone Can Code」と「Everyone Can Create」というカリキュラムを始めました。コーディングとクリエイティビティを通して、生徒たちの積極性を高めることが目的です。そしてAppleは、生徒たちが実践的な学習体験を積むために必要な資金とテクノロジーも届けました。
コミュニティにはポジティブな影響がありました。Terence MacSwineyの生徒たちは最新のテクノロジーとクリエイティビティを体験し、Appleのボランティアと活動することで彼らの多くが知らなかったキャリアについて学べるようになりました。「とても面白い人たちが私たちの学校にやってきて、生徒たちの心を開いて自らの可能性と夢に気づかせてくれました」とTerence MacSwiney Community Collegeの中等教育教師であるEva Corbett氏は言います。
「ほとんどの子どもたちは『Everyone Can Create』のクラスを受けるまで自分がクリエイティブだと思っていません。 でも、彼らはiPadですらすらと絵を描き始め、 最後にはイノベーションの新しい世界を発見 するのです」
Appleのカリキュラムをベースにしたコースを教え、パートナーシップの効果を目の当たりにしているCorbett氏は、生徒たちの成果について無数のエピソードを持っています。その一つが「Everyone Can Code」のクラスで、生徒たちが「Food Fund」というアプリのプロトタイプを開発したことです。「このアプリは、生徒たちが始めた社会貢献プロジェクトをスムーズに管理するために設計されたものです。地域の学校で食品ロスを減らし、余った食品を地元のチャリティー団体『Penny Dinners』に提供し、町の食料ニーズへの意識を高めることが目的です」とCorbett氏は言います。
Corbett氏は「Everyone Can Create」のクラスにいる女子生徒たちが「Live Out Loud」というオリジナル曲を作ったエピソードも教えてくれました。その合唱曲はとてもパワフルだったので、LGBTI+の若者をたたえる政府主導の全国キャンペーンの一曲に選出。彼女たちは今、GarageBandとiMovieを使って音楽やビデオを好きなように制作しています。「この体験が未来の彼女たちに与えるのは、新しいことに挑戦する自信です」
「AppleのパートナーシップはTerence MacSwiney Community Collegeに創造と革新のカルチャーをもたらしました」とCorbett氏は言います。「ほとんどの子どもたちは『Everyone Can Create』のクラスを受けるまで自分がクリエイティブだと思っていません。でも、彼らはiPadですらすらと絵を描き始め、最後にはイノベーションの新しい世界を発見するのです」
Eva Corbett氏(右)と、生徒のMichaela Fitzgerald氏(左)、Sarah Thompson氏(中央)
ボイシ、アイダホ州
Sarah Strickley氏(Onramp)の言葉
「公平性を実現するには、 世界に目を向けるリーダーを育てる必要があります」
Sarah Strickley氏
Onramp
ボイシ、アイダホ州
言語が 道を作る。
Onramp
アメリカで暮らす多くの移民や難民にとって、新しいコミュニティに参加することは極めて困難になりがちです。特に就職や進学で、言葉の壁はいつまでも越えられない障害になる場合があります。アイダホ州で結成されたイニシアチブのOnrampは、教育者を育成して学生たちが学ぶ機会を増やすことで、州の労働力を構築することを目指しています。州全体を対象としたこのプログラムは、Appleとボイシ州立大学、Idaho Digital Learning Alliance、College of Western Idaho(CWI)のユニークなパートナーシップによるものです。Sarah Strickley氏のようなCWIのインストラクターは、移民や難民が英語のコミュニケーションスキルをもっと身につけられるように支援しています。これにより地域のコミュニティを身近に感じ、変化を起こす力を与えることができるのです。「公平性を実現するには、世界に目を向けるリーダーを育てる必要があります」とStrickley氏は言います。
CWIの「英語学習者(ELL)と第二言語としての英語プログラム」は、英語を母国語としない話者に英語とデジタルスキルを無料で学べる機会を届けています。これはAppleの地域教育イニシアチブチームの支援のもと「Everyone Can Create」のカリキュラムと「Develop in Swift」入門、そしてデジタルスキルの習得をサポートするデバイスが組み込まれたプログラムです。10年以上もELLに接しているStrickley氏は、プログラムの中にコーディングを通して英語を教え、英語を通してコーディングを教えるコースを作りました。30の国と地域で生まれ、31以上の言語を話す150人以上の学生たちを相手に彼女は仕事をしています。学生たちの教育レベルやテクノロジーの利用経験は様々です。iPadを触ったことがない学生もいれば、母国で高度な資格を取得してきた学生もいます。彼らに共通しているのは、コミュニケーションの壁が就業の障害になっていること。「目指しているのは、教育レベルに関係なく、すべての学生たちが利用できる持続可能なプログラムです」とStrickley氏は言います。言語とコーディングを同時に教える彼女のアプローチは、学生一人ひとりの強みとスキルを伸ばしています。
Strickley氏は、人々とコミュニティの距離を近づけるには創造力が大きな役割を果たすと考えています。そこで彼女は、現実世界の問題を解決するためにテクノロジーを活用する「Challenge Based Learning」というアプローチを取り入れました。これは、多くの学生たちにとって自らのコミュニティに関わるための最初の一歩です。彼らは人とつながって創造的に問題を解決する方法を積極的に学びながら、同時に自信をつけ、地域での暮らしを支える力を身につけます。ほとんどの移民や難民がアイダホに到着した時、彼らにはネットワークもサポート体制もありません。その中でStrickley氏とCWIの取り組みは、彼らが自分の声を見つけ、自分のホームになったコミュニティに居場所を作るための力になります。
このコースは、テネシー州立大学とAppleのパートナーシップから生まれたイニシアチブのHBCU C2が実現したものです。Historically Black Colleges and Universities(HBCU:歴史的黒人大学)を支援し、学内と周辺コミュニティにコーディングとクリエイティビティを学ぶ機会を届けています。イノベーションと教育の公平性を促進し、アプリの設計とAppleのSwiftプログラミング言語を通してコミュニティの課題に取り組むことも目標です。
Telayne Keith氏(Boys & Girls Clubs of Southeastern Michigan)の言葉
「教育は、異なる経験や 視点を一つにします」
Telayne Keith氏
Boys & Girls Clubs of Southeastern Michigan
デトロイト、ミシガン州
デトロイトで 開発と進化を。
Boys & Girls Clubs of Southeastern Michigan
オハイオで生まれ育ったTelayne Keith氏は言います。「私は学生たちを心から信じています。そして、彼らの可能性も。それが彼らに見えても見えなくても、私には見えるのです」。Keith氏はどこに行っても、その場所の教育とコミュニティに情熱を注いでいます。彼女はデトロイトに数多くいる才能にあふれた人間の一人であり、現在のテクノロジー主導の世界で新たな道を切り拓いている人物です。以前は、Boys & Girls Clubs of Southeastern Michigan(BGCSM)のファシリテーターとして、人間中心設計とアプリ試作の原理を教えていました。
2021年7月、AppleはBGCSMとGrow Detroit’s Young Talent(GDYT)と協力し、学生たちが就職や進学に必要なスキルを身につけるプログラムを立ち上げました。6週間の「Code to Career」プログラムには、18歳から24歳まで20人の学生たちが集まり、持続可能なファッションとモビリティに関するコミュニティの課題に取り組みました。
ファシリテーターであるKeith氏は「Challenge Based Learning(CBL)」を採用しました。これは、現実世界の問題を解決するためにテクノロジーを活用するAppleのアプローチです。彼女は学生たちのグループがコミュニティのニーズを特定し、クリエイティブなソリューションを開発できるように指導しました。「知識を広げずに、知っていることだけを頼りにしてもうまくいきません。好奇心がとても大切なのです」とKeith氏は言います。学生たちは、自分のクリエイティブな可能性を見つけ、自分も変化を起こせることに気づきました。そんな中で彼女が思い出すのは、自分の生い立ちです。母親は、調べ物や博物館での校外授業を通して答えを見つけることをすすめていました。それは、まさにCBLのようなメソッドです。
Apple Developer Academyは、デトロイトを成長させるパワフルなエンジンです。起業家精神や創造力のハブとして、学生たちがiOSアプリエコノミーの一員になれるようにトレーニングの機会を作っています。Keith氏は自身の情熱に突き動かされ、ユーザーエクスペリエンスとユーザーインターフェース(UX/UI)設計のメンターとしてAcademyに参加しました。そして、テクノロジーの新たなチャンスに学生たちを導きながらインスピレーションを与えました。とどまることを知らない情熱を胸に、彼女はケント州立大学に進学し、2022年8月にはUX/UIの修士号を取得。BGCSMからApple Developer Academyまで、テクノロジーがもたらす変革の力が、デトロイトでさらに多くの才能をサポートしています。
「人生を切り拓く方法は必ずある。それを可能にするのが教育だ」と信じているKeith氏。彼女とBGCSMのApple Professional Learningスペシャリストは、デトロイトのコミュニティ全体でポジティブな発展のサイクルを作り出しています。Apple Developer Academyの学生たちはそれぞれの母校に戻り、自分の体験を伝えて若い世代を刺激しています。GDYTは、BGCSMの6週間「Code to Career」プログラムを小学生から高校生を対象にした1年間の取り組みに拡大することを目指しています。Keith氏にとって「教育は真の力」であり、すべてのコミュニティの人々に力を届けてデトロイトをさらに発展させるものです。
2015年、Assembly of First Nations(AFN)はカナダの各地からファーストネーション教育のリーダーたちを集めました。そして、ファーストネーションの視点でカナダの歴史を教える時に役立つように、工芸品や寄宿学校の地図などの資料を展示したのです。このコレクションの需要は圧倒的でした。
Appleは、先住民族と非先住民族の生徒たちが学べる教材を増やすために、AFNとパートナーシップを締結しました。「教師や生徒たちは、文化と歴史について信頼できるリソースを必死に探しています」とAFNの言語と学習担当のディレクターであり、Rama First NationsのメンバーであるRenee St. Germain氏は言います。彼女はファーストネーションの歴史に関するデジタルリソースを作るためにAppleの継続中のプロジェクトに参加しました。そして、ファーストネーションの権利、文化、歴史を実践的に学べるツールをダウンロードできるリソースが完成したのです。無料の「It's Our Time: The AFN Education Toolkit」には、インタラクティブなApple Booksのコレクションが用意され、その数は今も増え続けています。これは先住民族と非先住民族の教育者が教室に新しい視点を取り入れ、協力、理解、行動の精神を育てることを支援するものです。
St. Germain氏は言います。 「大きな問題に取り組んだり、制度的な人種差別や 区別をなくすために教育は欠かせません。 私たちはみんな教育を受けますが、 そのシステムは現在の社会や文化に合わせて 適切に変える必要があります」
St. Germain氏は現在、このツールキットを普及させるために教育委員会とのパートナーシップに取り組んでいます。ファーストネーションは多様なので、AppleとAFNはファーストネーションの教育リーダーと協力しながら、それぞれの伝統、言語、文化を一段と深く反映させたツールキットの開発を地域ごとに続けているのです。
St. Germain氏によると、住まい、平等な権利、生徒と教師の文化的な安全の保障まで、ファーストネーションのために解決すべき問題はまだまだあります。教育は、解決のプロセスの一部にすぎません。「教育が公平でなければ、何が公平だと言うのでしょうか」と彼女は言います。
2015年、Appleは中国扶貧基金会(CFPA)への支援を始めました。農業従事者の協同組合への加入をサポートして、より効率的な生産物の販売方法を教えるためです。協同組合のリーダーたちは、中国のeコマースエコシステムで農業従事者がスキルを身につけ、起業家として事業を拡大できるように手助けしています。2020年にはAppleの支援により、CFPAはMengdingshan Cooperative Development Instituteを設立。毎年1,000人以上の農業協同組合のリーダーたちがデジタルスキルのトレーニングを受けられるようにしています。
「植樹のベストタイミングは20年前。次のベストタイミングは今」ということわざがあります。アラバマ州バーミングガムでは、Ed Farmが次の世代のためにデジタルスキルの養成とテクノロジー分野の人材育成に取り組んでいます。2020年初め、AppleはBirmingham City Schools、Alabama Power Foundation、TechBirminghamと提携し、教育の公平性を推し進めて未来の労働力を育てるためにEd Farmを立ち上げました。現在、このコミュニティ主導型の教育エコシステムは、より多くの人々に機会とテクノロジーを届けています。
バーミンガム地域では、あらゆる年齢層の住民が様々な方法でED Farmに参加できます。Apple Professional Learningのスペシャリストが支援するTeacher Fellowsプログラムは、学習のイノベーションに熱心な教育者を生み出し、Appleの「Everyone Can Code」カリキュラムを授業計画に組み込むサポートをします。Student Fellowsは、中高生のスキルを「Challenge Based Learning」で育てるプログラムで、現実世界の問題を解決するためにテクノロジーを活用します。そして、PathwaysプログラムはAppleのプログラミング言語であるSwiftの無料コースで、中等教育修了後の資格取得も促進します。Ed Farmとバーミンガムは、コミュニティを支援し、コミュニティに支援されるユニークなつながりを形成しており、そのすべてがテクノロジーで教育を再構築するためのものです。
Ed Farmの影響は小学生から高校生、高等教育、そして労働者にもおよび、バーミンガムを「南のシリコンバレー」に変えることをサポートしています。このパートナーシップは、バーミンガムの住民が存在も知らなかったであろう機会に光を当て、成長のための新しい扉を開きます。「成長するためには、自分を取り囲む小さな箱を抜け出し、新しい世界に飛び込むことが必要です。そこで自分の枝葉を伸ばし、本来あるべき姿の大きな木になれるのです」とHackworth氏は言います。