毎日新聞記者の澤田克己氏が朴槿恵大統領辞任要求デモが盛り上がった理由として、大統領の相談役である崔順実氏が、伝統的には最下層の賤民に位置づけられる巫俗(ムーダン)であることを理由の一つに挙げている*1のだが、「まったく専門性のない人間が国政の指南をしていたことが許せん」と言うだけで、巫俗が最下層の賤民である事は関係ない気がしなくも無い。あえて巫俗に問題があるとするならば、まだ李氏朝鮮のときに巫俗が政治に関わった結果の方を、意識している人の方が多いと思う。
2016年11月26日土曜日
2016年11月22日火曜日
「Aを批判するものは、Bも批判すべし」論法の意味すること
ネット左派の「疑似科学を批判すべきならば、優生学も批判すべし」と言う議論からの展開だと思うが、「Aを批判する者は、Bも批判すべし」などと言う主張をする人を、「そもそも何を批判したいかわからない」「人格としては信用しない」と主張している人がいる*1。婉曲的な表現ではあるが、大抵のケースではそう不明瞭な主張ではないので指摘したい。大抵のケースでは「Aを批判する者は場当たりな道徳判断をしている」と主張していると捉えることができる。
2016年11月21日月曜日
優生学と言うよりは優生思想だから、疑似科学批判はできない
2016年11月18日金曜日
朴槿恵を弾劾する事はできるのか?
韓国の朴槿恵大統領が崔順実氏に演説草稿を添削してもらっていた事が発覚し、朴氏の退陣要求デモが繰り広げられており、与野党国会議員から弾劾まで取り沙汰されているここ数日だが、安易に政治的な激動を予言しない方が良いように思える。朴氏の失脚は明らかではない。弾劾審判を行なう憲法裁判所は、李明博氏と朴氏が任命した与党に近い裁判官で占められている上に、任期の関係で実質僅か2名の反対者で棄却されるので、弾劾のハードルは相応に高い*1。しかも、現時点で伝えられている情報からは、全員賛成になりそうな大きな過失が無い。
2016年11月17日木曜日
トランプ支持層とナチス支持層はだいぶ違う
比較すると非都市部の中高年以上の低学歴・高所得層が熱心に支持しているといわれるトランプ氏であるが、低学歴で高所得にひっかかるので地域と年齢のコントロールをしっかり行なった分析を見るまでは、政治分析は信じないぞと心に決めている。特に、ワイマール共和国時代のナチス・ドイツとの類似性を主張している選挙分析は、ほとんど信じるべきではない。それがあなたが信奉しているエコノミストの話であっても、疑ってかかるべきだ。
2016年11月14日月曜日
ポリコレ棒で叩かれているモノ
口が悪いトランプ氏が次期大統領に決まった事で、なぜか世の中に仲間が多いと思ったのか*1、ポリティカル・コレクトネスについての反感を公に唱える人の発言が増しているようだ。ポリティカル・コレクトネスではない事を理由に表現規制を求めるリベラルな人々の行為を、ポリコレ棒と揶揄している。ポリコレ擁護者も出現してポリコレ批判者もポリコレ守られているなどと言い出し、賑やかになってきた。しかし、その擁護者も批判者もポリコレ棒で叩いているモノが何かを曖昧にしていて的の絞れない議論になっている。まずはポリティカル・コレクトネスが問題にしているモノを整理したい。
2016年11月12日土曜日
『21世紀の貨幣論』のヤップ島の話の胡散臭さ
『21世紀の貨幣論』の第1章に、ヤップ島の石貨(フェイ;ヤップ語でライ)の話が出てくる。曰く、人間一人で動かすのは極めて困難な重たい石で出来ており、日常的な売買には使えない。ゆえに、債権と債務を帳簿に記録して信用取引が行なわれており、決済時に石貨の所有権を移転している。石貨は、貨幣ではなく与信残高を表す記録に過ぎない。ヤップ島の本当の貨幣は何かと言うと、債権と債務からなる信用取引である。この説明を素朴に信じている人が多いようなのだが、価値尺度と債権譲渡についての考察が全く無い上に、事実関係がとても胡散臭い議論になっている。
他と比較すれば、日本語と朝鮮語はよく似ている
ネトウヨさんの中でも一部だと思うのだが、日本と韓国に大きな違いがあると言いたいばかりに、朝鮮語を片言も知らないのに、日本語と朝鮮語はまったく違う言語だと言い出す人がいる。どうも「朝鮮語と日本語は基本語彙が全く違う」と言う言説が流布されていて、それから想像力を膨らましたようだ。韓国語を学習すれば信憑性がすぐに分かる話ではあるが、そんな気力もないので『日本語と韓国語』と言う本を読んで確認してみた。
2016年11月9日水曜日
貨幣経済の前は、物々交換経済ではなく、統制経済か贈与経済だった
貨幣の歴史は古い。現代の紙幣は、金や銀の預かり証である金匠手形が、17世紀にスウェーデンで国家承認されたのが始まりとされる。鋳造貨幣は、紀元前7世紀にリディア王国でエレクトロン貨が造られている。商品貨幣はさらに古く、紀元前18世紀頃に書かれたハンムラビ法典を見ると銀を商品貨幣として使っていたのが分かる*1。紀元前36世紀のシュメール人も少なくとも価値尺度財として銀を使っていたようだ*2。
商品貨幣が現れる前はどうかと言うと、物々交換が行なわれていたと漠然と考えている人が多いかも知れない。経済学の祖とされるアダム・スミスは、物々交換経済で分業を推し進めると取引コストがかさむので、貨幣が発明されたと主張していた。しかし現代の人類学者はこれを間違いと考えていて、貨幣経済の前に物々交換を日常的に行なう経済が存在したとはしていない。
2016年11月6日日曜日
2016年11月4日金曜日
欅坂46の衣装のどこがナチス・ドイツの軍服に似ていたのか
配偶者に無断で子どもを連れ去って離婚することを支持する家族社会学者
社会学者の千田有紀氏が、親子断絶防止法案を批判しているのだが、共同親権と面会交流に反対しつつ、離婚時に子供を連れ去った上で親権を主張することを支持するものとなっている*1。その理由は、家庭内暴力が理由で別居するときに被害者が子供を連れて行くことが困難になること、養育をしていない親と面会する事が子供に苦痛になることの二つのようだ。強く現状肯定しているのだが、現状を良く把握していない気がする。
2016年11月2日水曜日
企業献金を禁止したら、教会とマフィアの影響力が強くなった
拙速な制度改正は、予想外の結果を生む。ブラジルでは2015年9月に国営石油会社ペトロブラスの贈賄疑惑*1の余波を受けて選挙法が改正されて、政党及び候補者への企業献金が禁止され、個人献金も課税所得の10%以下に制限されたのだが、その結果、2016年の全国市長選は2012年と比較して6割以上献金が減った一方、教会とマフィアの影響力が強くなったそうだ(The Globe and Mail)。