日本では格差拡大が話題になっている。世界に目を向けてみよう。冷戦の終結後、世界の大部分は(表向きの)平和の恩恵を享受して、90年代には経済成長を遂げた。著者の分類によると、最先進国(10億人)に次ぐ40億人のグループでは特に成長が顕著で、年平均4%の成長を遂げたそうだ。一方、最貧国10億人はどうなったか。この10年の平均は、マイナス0.4%成長だそうである。彼らは1970年代よりも貧しくなった。筆者の問題意識は、貧困それ自体というよりも、それが固定化・拡大している動的な構造に向けられている。
筆者は最貧国における低成長の原因となっている構造的な「罠」として、4つの要因を挙げている。紛争、資源、輸出港へのアクセスの欠如、ガバナンスの効かない政府、である。このうち、資源は一般に国を富ませると思われているのでぴんと来ないかもしれないが、実際には、以下のルートで健全な経済成長に悪影響を及ぼすらしい。
・ 資源の発見→市民の税負担の軽減→税金の賦課・分配に対する確認のプレッシャーの低下→民主制の妨げ→外国資本の逃避(などいろいろな成長の妨げ)
・ 資源の発見→資源の輸出→外貨獲得・輸出超過→自国通貨安への圧力→その他資源以外の輸出産品への悪影響(通称、オランダ病=北海油田発見後のオランダが陥った「罠」)
著者は、この罠からの脱出についても論じている。詳しくは本書を読むべきだが、通説とは異なることがいろいろ書かれていて興味深い。
援助の効果は限定的である。官僚的な援助団体は、「効果」よりも「実績」を作り出したがる。援助物資が軍事費に不当に充当されているのも事実である。ではどうやって援助の効果を高められるか?援助の「効果」にわれわれは無関心だったのではないか?
典型的な内戦の損失は、国内外含めて640億ドルという試算がある。世界では年平均二回内戦が起こっている。年1000億ドル以上の損失である。確かにイラクへの介入は失敗だったが、それ以外の介入まで否定してよいのか?(イラクは除いて)内戦への介入に対する便益は、通常、費用の30倍に達するという試算もある。ルワンダで50万人が国際社会に見殺しにされた教訓をわれわれはどうやって活かすべきか。
等々。必ずしも全ての提案に同意しないが、示唆に富む指摘が読めておもしろかった。
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最底辺の10億人 単行本 – 2008/6/26
貧困国問題のキーワード「ボトム・ビリオン」(最底辺に生きる10億人)の出典、ついに日本でも刊行。アフリカ経済問題の第一人者による援助にかかわるすべてのプレイヤー(国、機関、団体)への根本批判、超辛口の書。
柔軟性を欠く先進国、
縦割りの国際援助機関、
貪るだけの石油・建設企業、
そして、知性を欠いた善意のみに終始するNGO――
著者は、いずれも地獄の縁に生きるアフリカの人々を本気で救おうとはしていない、と断じる。
本書は一般向けに(世界の有権者へのアピールとして)書かれているが、最新の研究成果から、内戦と民族間の憎悪・所得の不平等・政治的抑圧などとの間に相関関係がないこと、民主制の下でも援助金が機能しない場合が多々あること、天然資源の収益が大きい場合民主政府は独裁政府の経済成長を上回れないこと、根本的な政策転換は内戦後ほど起きやすいこと等々、統計データに基づいて意表を突く事実を陸続と挙げ、既成の貧困国イメージを粉砕していく。そして、最貧の国々を捕らえる四つの罠――1「紛争の罠」2「天然資源の罠」3「内陸国であることの罠」4「劣悪なガバナンス(統治)の罠」の新たな克服法を提唱する。
柔軟性を欠く先進国、
縦割りの国際援助機関、
貪るだけの石油・建設企業、
そして、知性を欠いた善意のみに終始するNGO――
著者は、いずれも地獄の縁に生きるアフリカの人々を本気で救おうとはしていない、と断じる。
本書は一般向けに(世界の有権者へのアピールとして)書かれているが、最新の研究成果から、内戦と民族間の憎悪・所得の不平等・政治的抑圧などとの間に相関関係がないこと、民主制の下でも援助金が機能しない場合が多々あること、天然資源の収益が大きい場合民主政府は独裁政府の経済成長を上回れないこと、根本的な政策転換は内戦後ほど起きやすいこと等々、統計データに基づいて意表を突く事実を陸続と挙げ、既成の貧困国イメージを粉砕していく。そして、最貧の国々を捕らえる四つの罠――1「紛争の罠」2「天然資源の罠」3「内陸国であることの罠」4「劣悪なガバナンス(統治)の罠」の新たな克服法を提唱する。
- ISBN-104822246744
- ISBN-13978-4822246747
- 出版社日経BP
- 発売日2008/6/26
- 言語日本語
- 本の長さ320ページ
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出版社より
民主主義がアフリカ経済を殺す | 最底辺の10億人 | |
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5つ星のうち3.6
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価格 | ¥21¥21 | ¥106¥106 |
発売日 | 2010/1/14 | 2008/6/26 |
商品の説明
著者について
ポール・コリアー(Paul Collier) :
オックスフォード大学アフリカ経済研究センター所長。世界銀行の開発研究グループ・ディレクター、アフリカ問題のイギリス政府顧問などを歴任。アフリカ経済の世界的な権威。中谷和男(なかたにかずお):
元NHKヨーロッパ・アラブ・アフリカ総局長。おもな訳書に『テロマネーを封鎖せよ』『ザ・サーチ』など。
オックスフォード大学アフリカ経済研究センター所長。世界銀行の開発研究グループ・ディレクター、アフリカ問題のイギリス政府顧問などを歴任。アフリカ経済の世界的な権威。中谷和男(なかたにかずお):
元NHKヨーロッパ・アラブ・アフリカ総局長。おもな訳書に『テロマネーを封鎖せよ』『ザ・サーチ』など。
登録情報
- 出版社 : 日経BP (2008/6/26)
- 発売日 : 2008/6/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4822246744
- ISBN-13 : 978-4822246747
- Amazon 売れ筋ランキング: - 423,886位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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カスタマーレビュー
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- 2008年12月8日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2010年1月26日に日本でレビュー済みアフリカを中心とした最底辺の10億人の貧困にあえぐ人々。
これを一体どう救えばいいだろうか。
こうした最底辺の国々は、以下の4つの罠に陥っているという。
4つの罠とは、紛争の罠、天然資源の罠、内陸国の罠、悪いガバナンスの罠、である。
紛争は言うまでもないが、紛争が貧困を引き起こすのみならず、貧困もまた紛争を引き起こしうる。
むしろ、多く言われている歴史的要因とかはほとんど紛争には関わっていない。
天然資源の罠は、天然資源が見つかるとそれをめぐって争いが起きるし、一たび莫大なお金が入ると、無駄遣いの癖がついてしまい、直らない。
しかも、資源があると税金をそれほど取らなくても国が成り立つので、国民は「税金を払っているのだから」という感覚が弱まり、選挙における監視の度合いが弱まってしまう。
つまりは、政治的腐敗がどんどん横行することとなる。
内陸国は、近隣諸国を通らないと海に出れないが、近隣諸国のインフラが整っていないともうお手上げである。
しかも最近は国別の援助なので、近隣諸国が援助を受けても隣国の内陸国のためにインフラ整備をする可能性はないに等しい。
ガバナンスが悪いと、誰も投資してくれないので、お金が回らない。
また、悪い政策をとり続けていると、せっかくの援助も無駄になる。
グローバル資本や民間企業は、中程度の貧困国はビジネスチャンスとなるのだが、最底辺の国は政府やインフラの問題等もあって投資先にならないのである。
筆者は提案として援助、軍事介入、法整備、貿易の4つを挙げる。
援助はしかし今までのやり方ではだめで、適切に使われるようにしなければならない。
また、悪い政府を除くために、そして軍事費を増大させないために(自国の軍は軍備費増強を要求し、クーデターを恐れる政府はそれに屈してしまう)、他国の軍隊も必要だとする。これはなかなか挑発的な主張だ。
法は言うまでもないが、規範があると行動は促進される。
最後に貿易だが、保護貿易や関税障壁はよくない、アフリカの小国一国内の市場では成り立たない以上、自由貿易をするしかない。
本書の紹介では「超辛口」とあったが、読んでいてそこまで辛口だとは思わなかった。
左(援助派)のサックス、右(援助否定派)のイースタリーの間ぐらいという印象だし、軍事介入以外はわりと堅実な主張の気がした。
- 2015年4月12日に日本でレビュー済みAmazonで購入貧困から抜け出せない現状をみて、何が問題なのかを考えさせられた。明治以前の日本でも町民や農民はそれなりの生活水準であったと思う。最底辺の人々の国は、国民の犠牲の上に一握りの権力者が殆どの富を手中にし、人間としての為政が出来ない。(これは権力者も国民も人間のレベルが低いということか)
- 2014年4月15日に日本でレビュー済みAmazonで購入さまざまなところで引用されているので読んでみたが、本書のお蔭でアフリカを見る時の切り口を学ぶことが出来た。アフリカを知るためにはこの本は避けるべきではないだろう。
- 2024年3月2日に日本でレビュー済みAmazonで購入翻訳がひどすぎると、原典の意味がほとんど理解不能になる。
その典型のような書。
ある文章がその文脈の中でどういうような意味を持つのか、理解が甚だしく難
しい。日本語としてこなれていないだけでなく、そもそも日本語としての体裁を
なしていない。これは訳者が原因だろう。
調べると、訳者は基本的に英語の翻訳家としての訓練を受けていないのではな
いかと思われる。もう他界されているので謗るようなことは避けたいのだが。
専攻は「フランス語」で、NHK入局、アジア総局長、アラブ・アフリカ・ヨー
ロッパ総局長を歴任とある。いくら経歴が素晴らしくとも、英語の翻訳者として
は素人に近いだろう。
最初の三分の一くらいは何とか目を通したが、それ以上は読む気力が失せた。
以下にその「悪文」を示す。
「発展の失敗に関して、単一の要因に基づく理論がこれほど広く流布しているの
は…あまりに微視的に多分野に専門特化しているため、彼らは特殊な一点に強力
な光線を当てるよう訓練されている」。
スーパーマンの超能力のような「強力な光線銃」とは一体何の謂いか。
「10億人の人々の貧窮化したゲットーは、世界の安住にとって堪え難いほどの
事態に陥ってしまう」。
「左派は、軍事介入や貿易や経済発経済発展といった彼らが軽視してきたアプロ
ーチが長年目指してきた目的の達成に重要な手段であることを見いだす」。
この文章も日本語として練れておらず、意味をつかむのに苦労する。そして内
容も一方的な決めつけそのもの。左派(社会主義者の総体らしい)が軍事介入、
貿易、経済発展を軽視いていたと判断するには呆れた。なにも旧ソ連を擁護する
つもりは全くないが、旧ソ連がどれほど軍事介入や経済提携を進めたのか、著者
の「偏向した」判断がいくつもある。
「底辺の10億人の国の窮状は、道徳的な単純化に向いているが、その回答まで
単純化することはできない 」。
これも日本語なのか、理解できる人はほとんどいないのではないか。
「道徳の単純化」なんぞという単語にはびっくりする。
「近代的な政治の体裁を整えながらも、実はそれは表面だけにすぎず指導者はあ
らかじめ用意された脚本を読み上げているかのようである」。
比喩として「脚本」があるが、その内実が一切示されていない。翻訳の悪文の
典型だ。
翻訳ではなく、内容について気になるのは、「左派」に対する「憎悪の感情」
である。頻繁に「左派」という言葉があるがきちんと定義されていない。またど
の国を指してしるのかも分からない。旧ソ連か、中国か、北朝鮮か、キューバか、
東南アジアか、東ヨーロッパ諸国か。
おそらくこれらは著者の経歴による。著者は学生時代に社会主義的な運動団体
に属していたことがその原因だろう。一度社会主義に傾倒した人特有の、「左派
への軽蔑」が透けて見える(読売の○辺○雄と同じ)。
しかし、解説本(本書は専門書ではない)であったとしても、曖昧な用語を使
用するのは感心しない。
二番目に、本書全体を通して「~を研究した」、「~と分かった」、」「~が原因
である」との由が語られるが、その詳しいデータをが一切示されていない。「結
果として~%」と細かく刻んだ「データ解析の結果」を提示するが、元データの詳細
もない。元となったデータがないので、読む方は著者の解析とやらを受け入れなくて
は読み進めない。
これは、「本文が煩雑になる」という理由ではないだろう。「註釈」すらない解
説本は初めてだった。
巻末にわずか10名ほどの研究者から引用した由が書いてある。全2ページでほ
とんどのデータの出典が分かるはずもない。多くは特定の研究者(Anke Hoeher
等)に偏ったデータでしかない。その研究者も決して有名な(有名であるかで信
頼性が増す訳でもないが)方ではない。これは本書が「研究書」ではないことを
示している。
援助についても、本書の帯では「『知性を欠いた心』しかもたないNGOは退場
願おう」とかなり耳目を引く惹句があるが、本文は拍子抜けする内容。
本書第七章の「援助のための援助となっているが」では、ここでもデータの提
示なく、妥当性の乏しい説を記しているにすぎない。
「~の最初の研究によると(つまり著者の研究ではない)、援助がGDPのおよそ16
%に達すると集積逓減の法則が働いて、効果は多かれ少なかれ失われるという」
とある。「~という」という極めて曖昧な結果になっている。
珍しく自分で調査した資料についても、常にアフリカの石油輸出国機構の成長
率はアフリカの非石油産出国の成長率が同じ、との結論を引き出している。なる
ほどと思わせるが、「底辺国」のことが、いつのまにかアフリカ全体の国のこと
にすり替えられている。つまり対象となるデータを意図的に変えている。
ただ、著者のいう「時刻で生産(産出でなく)したもので利益を得る」ことが
ない限り、お金が流入したとしても、経済成長の基盤とはなりにくいのは本当だ
ろう。ここは不十分で残念な記述となっている。
各所に「~している」と断定した後に、その根拠として「~としか思えない」
等の記述があり、著者自身が混乱しているのだろうか。十分な説とは言えない。
本書で少ないデータ分析でも問題が残る。
「農村の診療所開設のために…資金のうち、実際に診療所に届いたのは1パーセ
ント以下」とある。しかし次ページでは「援助の一部が実際に軍事費に流用され
ているという結論に達した。しかしそれは驚くほど少なく、多く見積もっていよ
そ11パーセントにすぎない」とある。これは何ともないような表現だが、二つの
事実が正しいとするならば、「診療所に届かなかった99パーセント」のうち「11
パーセント」が軍事費、そして「88パーセント」は使途不明となる。ならばその88
パーセントを問題とすべきだが、著者は黙して語らない。
さらに「概して援助は内戦リスクには直接的な影響はない」が、「大規模な援
助はクーデターを誘発しやすい」しかし、「反乱(を)…援助のほうは助長しな
い」。こうある。どうにも何を言いたいのかがよく分からない。これはおそらく
訳の悪さではなく、著者自身が不十分にしか理解していないまま結論しているた
めであろう。
また帯の扇情的な惹句=「『知性を欠いた心』しかもたないNGOは退場願おう」
の内容は一切ない。これは出版社の良識を疑う(出版社が扇情的な惹句を書いて
いるため)。
八章。軍事介入。これも帯には「長期の軍事介入が必要なときに逡巡してはな
らない」。ソマリア(30万人死亡)、ルワンダ(100万人死亡)。詳しくは触れられ
ていないが、本書にあるように外国軍(アメリカ軍)の派兵は失敗した。しかし
著者が主張するような「アメリカ軍による和平」などありえない。
国連はアメリカ軍への「不快感」(2007年)を示している。
冷戦下の代理戦争的側面もあるのだが、アメリカの世界戦略を一切批判しない。
「ベトナム戦争(死者数100万人)」はまさしく「内戦」でも「外国(アメリカ)
軍隊の介入」あった。それに全く触れていない。
内戦では、「どちらを支援するか」または「絶対的に中立を守るか」というス
タンスのどちらをとるかが最重要だろう。この本質に触れず、単に「実力行使を
ためらうな」という言説は説得力がない。
これはルワンダの内戦(フツ族によるツチ族虐殺)は、古くはベルギーの統治
による、元々同一の民族であったフツ・ツチ両族の分断政策が根本にある。
確かにベルギーは最後まで内戦を阻止しようと努力はしたのだが。
このルワンダ内戦については、いくつものサイトで知ることができる。
本書の根本的な欠陥がここにある。西洋による侵略行為を全く知らぬ顔をして、
旧植民地がモノカルチャー化したこと、それによって経済発展の基盤が、徹底的
に破壊されてしまったこと、それらを「あえて記述していない」。これは犯罪的
ですらある。
ルワンダの内戦については、もうこれ以上書きたくない。詳しくはネットでで
も調べて欲しい。
遡る。一一章。「周縁化と逆換させる貿易政策」。
大体この「逆換」などと言う言葉は論理学用語であり、どこの文章にこれが妥
当するのだろう。意味不明文は続く。
「貧困は単に経済の機能不全によるデフォルト・オプションである」、これはい
かなる意味なのか。さらに「しかし、私はある問題については、豊かな世界の市
民に責任があると考える」。
何ともない文章のようだが、「AはBである」と断定した後に、「ある問題につ
いてはAはBではない」という論理になっている。つまりは意味がない文章でし
かない。これで論理学用語を用いるのは、何か悪い物でも食べたのか。
また、一人のマルクス主義者の学者としての無名さと、無能さを示すことで、
マルクス主義そのものを否定したように記述する。これは反則も反則。これが通
るなら、資本主義を奉じる無能な経済学者一人を批判することで、資本主義その
ものを否定できる。著者が過去マルクス主義を標榜する団体にいたことが、よほ
ど悔やまれるのだろう。
「今ではNGOが無責任な勢力を誇っている」。これも日本語ではない。「無責任
な勢力」という言葉は存在しない。
なおも、「自国のための嘘をつくというありふれた外交の行為が、受け入れ難
いほど恥ずかしいものになった」。理解しようと努めるが、前後の文章を読んで
も全く理解できない。
全体として。
まず「自分の持っているデータ」では、等の提示があるが、生データについて
は一切提示がない。前述したが、巻末の資料についてはA・HoefflerやC・Pattio等
他の研究者名もあるが、重複している人も多く、数えるとわずか7、8名の研究
者と(これもわずかな)20編ほどの論文あるいは著作のみが、参考文献となって
いる。そして「その資料の全て」が1999年から2006年の間に刊行されたもの。
これほど資料、データが貧しい書も珍しい。これは不十分も不十分。
また国連等の資料も本文中に麗々しく提示しているが、内容が分からず後日の
精査が不可能になっている。つまり「本書が基礎とした資料」の内容ははたして
信頼できるのかの検証ができないように(巧妙に)記述している。この曖昧さの
極みと、欧米諸国の植民地支配については全く触れていない。
欠点ばかりで、どうにも惹句の勇ましさの内実がないのだ。
独断好きの研究者と称する人が、正確さを担保する努力が少しもない、そんな書。
着眼点は興味深いものもあるが、全て信頼できない。
よって、お勧めしない。
- 2008年11月9日に日本でレビュー済み著者は、最貧国が経済発展に見放されてしまう”罠”を、4つに分類。
それは、「紛争」、「天然資源」、「内陸国であること」、「小国における悪いガバナンス」。
翻って、なぜ、わたしの住む日本が経済発展を遂げられたのかを考えてみる。
勤勉な民族性? 日本人は、まじめだから?
それを全否定はできないけれども、海に囲まれ、これといった天然資源のない日本は、地理的なラッキーに助けられていたんだ、ということを改めて強く感じた。
注意すべき点は、最貧国=アフリカではない、ということ。
アフリカにも経済的に比較的豊かな国があり、アフリカ外でも困難に陥っている国がある。
当たり前のようだが、遠い国のことなので、つい勘違いしそうになる。
また、開発援助論の中では、民族の自決権をどうするか、といったことが議題になる。
だが、本書に登場するような国には、それ以前の助けが必要じゃないだろうか。
かわいそうな人々を見て、豊かな日本に生まれた自分はまだマシ、と比較優位に立って終わり、じゃなく、
人類が歴史の中で築き上げてきた人権思想が、世界という現場で、いままさに試されているんだと思う。
ともに生きたいのか、どうなのか、助ける力があるのか、余力がないのかー。
自分という個人単位でなせそうなことを考えたり、実践しつつ、
国家や国連などの行動を、注意深くウォッチしたいという気になった。
と、同時に、日本国内にも貧困が増えてきていることを忘れてはいけない。
遠くを視野に入れることで、足元もよく見える。
かなたの誰かを知ることで、わたしへの理解も深まる。
日本語を読める人になら、誰にだっておすすめしたい1冊だ。
- 2017年1月4日に日本でレビュー済みAmazonで購入翻訳が非常に分かりにくく読みにくいです。4分の1ほど読みましたがギブアップしそうです。