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日常に侵入する自己啓発: 生き方・手帳術・片づけ 単行本 – 2015/4/9

4.5 5つ星のうち4.5 23個の評価

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近年活況を呈する自己啓発書は、私たちの日常生活をどう変容させ、どのような生き方へ誘おうとするのか。社会学の観点から考える。

自己啓発書はどのように生み出され、誰によってどのように読まれているのか。自己啓発書には結局のところ何が書かれてあるのか。各年代の生き方指南書、「手帳術」ガイド、掃除・片づけで人生が変わるとする書籍、さらには自己啓発書の作り手と読者へのインタビュー、質問紙調査の分析から「自己啓発の時代」を総合的に考究する。

【目次】

はじめに

第一章 ハビトゥスとしての自己啓発
 1 日常を差異化する自己啓発書
 2 ハビトゥスとしての自己啓発
 3 「自己啓発界」の構造
 4 自己啓発書の読者とは誰か
 5 「薄い文化」としての自己啓発書購読
 6 本書の目的と分析枠組

第二章 「ヘゲモニックな男性性」とそのハビトゥス――男性向け「年代本」の分析
 1 煽るメディアとしての男性向け「年代本」
 2 「群れ」からの脱出――二〇代論
 3 仕事・プライベートの一元的統御――三〇代論
 4 「自分らしさ」の再文脈化――四〇代論
 5 細分化される人生

第三章 「自分らしさ」という至上原理――女性向け「年代本」の分析
 1 迷い・悩みのメディアとしての女性向け「年代本」
 2 「自分らしさ」という賭金=争点
 3 自分らしさ志向の際限なき適用
 4 「女らしさ」からの離脱?
 5 自分らしさ志向の系譜

第四章 「今ここ」の節合可能性――手帳術本の三五年史
 1 「日常」に特化したジャンルとしての手帳術
 2 手帳語りの始まり――一九七九年
 3 手帳術の発見――一九八〇・九〇年代
 4 手帳術と「夢」の節合――二〇〇〇年代前半
 5 手帳術の細密化と飽和――二〇〇〇年代後半以降
 6 日常感覚を共有するコミュニティの形成

第五章 私的空間の節合可能性――家事の自己啓発的転回と私的空間の聖化
 1 「片づけ」で人生が変わる?
 2 掃除の「発見」
 3 整理・収納論における自己啓発的転回
 4 私的空間の節合可能性――「捨てる」・シンプルライフ・風水
 5 聖なる私的空間の消費

終章 自己啓発の時代のゆくえ
 1 「アイデンティティ・ゲーム化」というアイデンティティ・ゲーム
 2 「コントロール可能性への専心」というハビトゥス
 3 自己啓発の時代のゆくえ

あとがき
参考文献
索引

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商品の説明

著者について

牧野 智和(まきの ともかず)
1980年、東京都生まれ。2009年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(教育学)。現在:大妻女子大学人間関係学部准教授。主著:『自己啓発の時代――「自己」の文化社会学的探究』(勁草書房、2012)、『日常に侵入する自己啓発――生き方・手帳術・片づけ』(勁草書房、2015)、『ファシリテーションとは何か――コミュニケーション幻想を超えて』(共編著、ナカニシヤ出版、2021)、『創造性をデザインする――建築空間の社会学』(勁草書房、2022)。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 勁草書房 (2015/4/9)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2015/4/9
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 352ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4326653930
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4326653935
  • 寸法 ‏ : ‎ 2.2 x 13.7 x 19.4 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.5 5つ星のうち4.5 23個の評価

著者について

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牧野 智和
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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2021年5月3日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    以前と似たようなレビューですが…。
    掛かりつけ医に定期的に処方箋をもらうが如く自発的に安易に自己啓発コーナーに通ったものでした。
    最近は「東大」やら「米国株」「コンサル」「外資」やらのタイトルの書籍が乱立して賑わっている感じです。幾ら自己啓発本を貪り読んでも「自己」も「環境」も変わらずに逆にスランプに陥りがちになるのではないでしょうか。旅行巡りや美食の訪ね歩きに似ていて苦労や出費の割にはフラグ立てるだけで自己目的化しているような構造と変わらない気もしています。またチームプレーやメンバーシップ優先の賃金制で同質的なサラリーマンが読んで実行しても周辺から浮いてしまうケースも多いかと思います。個人主義的な文化や土壌の職業の方には向いている書籍はあるかとは思います。精神論を振りかざしてもメソッドを実行しても個人的限界はありますし…。そうは言いつつまた本を見繕ってあやかろうとしている自分がいます。人脈の有無、能動/受動のタイプ差、地頭の良さ具合などそもそも論もありますし、無暗に自己啓発しても必ずしも出世や昇給や境遇改善されるとは断言できませんが…。何か魅力があります。
    13人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2019年12月19日に日本でレビュー済み
    自己啓発本を書いている著者は、
    自己啓発本を、よく読む人なのだろうか。
    ふとそんな疑問が浮かんでしまう。

    所謂、ビジネス書と呼ばれる書店のコーナを見ると、結構面白いことがわかる。著者は、ざっくばらんにいるが、著者の職業は、経営者や大学教授、社会的地位の高い職業、例えば医師や弁護士が書いた本が多数ある。そして所謂、彼らは、難関大学を卒業している。しっかりと調査していないが、150冊をピックアップしたら、9割以上の著者が難関大学を卒業していた。

    当たり前じゃないかと思うかもしれないが、
    小説コーナの著者を分析すると、それほど難関大学出身者は、多くない。

    ビジネス書の分野が際立って学歴の高い著者が占めている。新書と呼ばれる、あるまとまった知識を手軽に得られる書籍群も、これまたビジネス書と似たような結果になったのは興味深い。新書から、ビジネス書、自己啓発に繋がる道があるみたいである。

    出版社別に見ると、それこそ大手出版社が7割以上を独占していた。非常にバランスが悪いと思う。

    ビジネス書や自己啓発書は、サラリーマンの教養書となっている感じがする。ビジネス書や自己啓発書というのは、参考文献がほとんど紹介されていない。著者の経験や思いを、あるまとまった文章として表現されているが、主張の根拠が、思いや経験、後はどこで引っ張ってきたかかわらない論文の引用、一応エビデンスがあるというが。。。

    学生時代に、ほとんど本なんて読んだことがない学生は、もの凄く多い。そのままスライドして会社員となるが、仕事で求められるスキルや知識は、大学で学ぶような知識とあまり関係ないことになっているので、少なくない人が途方に暮れる。自分の学び方を知っている人間は、わからないこと、知らないこと、出来ないことを素直に認め、できるように努力するが、そうではない人間は、わかっているふり、できるふり、知っているふりをする。

    そんな時、ビジネス書や自己啓発に救いを求めるのではないだろうか。つまり、自分がどういう学び方をするかを考えてこなかった者が、学ばないと、やばいと思い、安易に手をとるのが、ビジネスや自己啓発本ということじゃないだろうか。ただ、自己啓発やビジネス書で得られる知識というのは、かなり奇形なもので、そんなモノを沢山、沢山知っても、何も意味のないような気がするが。ただ、その時の不安を解消するには、手軽で良いんじゃないかと思う。これは、非常に大事な事で、ビジネスと成り立っている存在意義がある。

    学び方を知るには、何か問題意識を持ち、問題提起を具体的に行い、その問題がどういう性質なものなのかを各種分析方法やら、理論、概念等を勉強して、把握していくと思うが、こういった作業は、非常に時間がかかるし、また楽しい!と思うより、悩んだり、よくわからない状況に途方にくれたりすることが多い。大学のゼミナールに参加したことがある方ならわかるが、何か1つの文献をテキストに、そこから沢山のことを学ぼうとするのも、難しいが、それを一人で行うのは、もっと難しい。ただし、強烈な問題意識があれば、不思議と可能となる。

    ビジネス書や自己啓発から学ぶようにすると、専門書や論文等を参考にして自分の問題提起への見解を考えていくことに比べて、面倒なことをしなくて済む。なぜなら、何がわからないのか、わかるように努力する過程を省いて、「あなたが、わからないことってこうでしょ」とか、「あなたが、不安になっていることってこうでしょ」とか、「あなたが問題にしていることってこうでしょ」と、わざわざ提示してくれるからだ。結果、何がわからないか、何を問題として考えなくちゃいけないかという、学習する上で最も大切な問いを自分に問うことなく、学習が進むことになる。

    書籍業界自体が、この20年で半分近く落ちた。
    自己啓発書やビジネス書は、どうだろうか?
    半分規模になっているだろうか?私の推測だと、
    たぶん現状維持だと思う。それだけ、必要とされているわけだから、やはり自己啓発書やビジネス書が存在する意味は、十分にあると思う。
    35人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2015年8月16日に日本でレビュー済み
    本書は、「自己啓発書」を題材にした社会学の書です。
    『自己啓発書がみせようとする「世界」について考えること』(Pⅱ)を目的としています。
    今までの「自己啓発」についての類書とは異なり、
    批判することも称賛する事もなく、「自己啓発が流行っている現状」についての
    背景について分析している社会学らしい著作になっていると思います。

    自己啓発書が好きな人は、どういう心理で自分が接しているのか、認識するための道具として、
    逆に自己啓発的なものが嫌いな人は、自分の嫌悪感の由来がどこから来るのか。
    そういうことを検討するための材料として、非常に有効な分析書だと思いました。
    好きな人は、「自己啓発史」としても、読めるので、非常に面白いと思います。
    「意識高い系」への理解及び、「意識高い系」な振る舞いをしている自分への理解につながると思います。

    社会を説明するための現代的な事象の表れとして、身近な題材である「自己啓発書」を選択し、
    かつその分類として「年代書、手帳術、片付け」を選択するセンスは、素晴らしいと思いました。
    著者は、まだ30代半ばであり、これからの著作も非常に期待しています。

    以下、本書から私が得た内容となります。

    ・日常
    自己啓発書=ミクロなHowTo
    目標のための日常の「差異化」指南。
    考え方、行動の仕方、感じ方といった諸動作についての指南。
    今、ここからの努力、変化を促す。
    今までの資産を無視して、これから「頑張れば」という個々人の心掛けの問題にする。単純化の志向。

    啓発書の人称性=「誰が言うか」で大きく変わる。マーケティングもそれに合わせる。
    『自分の作りだす生産物の価値の保証として自分自身を売っている』

    読んでいる人は、大卒、正規雇用、体育会系(寄り)という事で、
    それなりに頑張ってきた人が、「頑張れよ。」という書物を消費している。という構造にあるらしい。

    青少年、自意識研究→自己の流動性の強化。自己の多元化の進展。
    状況に応じて、人格を使い分ける必要がある。と認識している度合が強く
    かつ
    「自分を固定的なものとして見る」よりも「なりたい自分になる」という面が強い。
    つまり、自己の人格を柔軟なものとして捉えている。

    「応急処置」「栄養ドリンク」としての自己啓発書。
    「信用すると同時に疑う。」「選択的、解釈的に読まれる」「再確認」→「薄い文化」

    ・男性向け年代本
    良いマーケティングの手法。相手に選択させるのは、良い。
    その年代の人が買うんだから、常に「今の年代がターニングポイントですよ。」って言っとけばいい。
    で、結局、日常を大切に。頑張って。という話に持っていく。焚き付け。
    確かに差異化、卓越化のためには、日常の一つ一つを大切にした方がいいんだろうけど…
    基本は、仕事について書かれている。

    20代 若者批判的。群れからの脱出。蓄財より投資。
    30代 仕事とプライベート。家庭。リーダー論。
    40代 出世レースへの見切り。いわゆるミドルエイジクライシス対策として、自分らしさを説く。

    ・女性向け年代本
    「自分らしさ」「好きなこと」重視。母や妻としての役割に対して。
    「おばさん」批判。←多分、今の状況的にその要素は減っているはず。
    恋愛、結婚、美、仕事と「自分らしさ」
    「自分らしさ」→「自己責任」に結び付き易く、その辺では、やはり危険な思想なのかも。

    ・手帳術
    日記→振り返り→過去重視。
    手帳→予定→未来重視。
    →「効率化」の手段。
    時間管理。情報管理(メモ)。目標管理(夢、期限)。
    経営者の手帳論の極端さ。
    未来の夢、目標に対しての逆算、日常への還元のために手帳を用いる。「夢手帳」。
    「時間を大切に」というのが、共通のモチーフ。
    夢手帳の強迫さ→ほぼ日手帳の「なんでもない一日を」の流れは、大切な事象。

    ・片付け
    断捨離→減らすことを選択する事=人生に求めるものを選択し、それを大切に使う。
    一事が万事発想。大げさに言う。片付けられない→太る。とか。
    ライフスタイルの問題にする。

    ・自己啓発書という「ツールに支えられた自己」
    100人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2016年7月19日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    これは数多ある自己啓発書の研究書であり、自己啓発そのものを求めている方のものではありません。ご注意を
    19人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2018年2月11日に日本でレビュー済み
    一般受けするには、あまりにも書き方で損をしている本だと思いました。前回はフーコー、今作ではプルデューを冒頭において理論基盤の確立をして、その後は具体的な検証例、と構成されていますが、こちらはあまりにも引用とデータの羅列が多く、著者の主張というものは見えてきませんでした。APAフォーマットは、とても読みにくかったです。巻末に、PRESIDENT Onlineで連載を持った際に、一般向けに書くということの経験をした、という話が出て来るだけに残念でした。この本の場合は、なんだか反対に「こういうふうに(難度な文章で書く)というプレッシャーがあったのかな?(職を確保するために、など)」と勘ぐってしまいました。

    また、もう一つの問題点は、女性や経済的下層階級の、高学歴に人脈ありのエリート男性(中心・周辺)との関係もあまり掘り下げられていなかったことです。例えば、女性は一章まるまる当てられていますが、そこでの議論が他の章ともよりつながっているといいと思いました(反対に言うと「こうやって一章割り当てておけばいいだろう、といった扱い感が否めませんでした)。自己啓発書の男性読者も女性読者も、職場などでジェンダーを超えて「こういうの読んだよ」ということはあると思いますし、性差があるならあるで、そういったコミュニケーションが起きた時に「へえ、彼女は自分が言われたことが無いようなことを言われているんだな」とか「◯◯のしているこの提案を、自分がそのままするわけにはいかないな」などと思うと思います。そういった現実的な現象が見えて来ない扱いでした。

    力作は力作だと思うので☆3つですが、残念感の残る著作です。
    13人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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