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理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書 1948) 新書 – 2008/6/17
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- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/6/17
- 寸法10.6 x 1.3 x 17.4 cm
- ISBN-104062879484
- ISBN-13978-4062879484
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商品の説明
著者からのコメント
以前から私は、難解な話をわかりやすく楽しく進めるためには「雑談」が最も有効なのではないかと思っていました。そこで本書も、なによりも読者の皆様に「知的刺激」を味わっていただくことを目的に、多彩な登場人物がシンポジウムで自由闊達に議論を繰り広げるという形式にしました。改めて数えてみたところ、登場人物は次の36名でした。
司会者・会社員・数理経済学者・哲学史家・運動選手・生理学者・科学社会学者・実験物理学者・カント主義者・論理実証主義者・論理学者・シェイクスピア学者・大学生A・国際政治学者・フランス社会主義者・フランス国粋主義者・心理学者・A候補・B候補・C候補・D候補・E候補・情報科学者・急進的フェミニスト・映像評論家・ロマン主義者・法律学者・科学主義者・科学史家・方法論的虚無主義者・相補主義者・ロシア資本主義者・大学生B・大学生C・大学生D・大学生E(登場順)。
さて、某教授から夜中に酔声で電話が掛かってきて「あのカント主義者というのは、まさか僕のことではないだろうね?」と聞かれたのですが、とんでもないことです。「おわりに」にも書きましたように、本書の登場人物は、あくまで議論の進展に都合がよいように生み出した「架空の人物像」に過ぎません。具体的なモデルが現実世界に存在するわけではありませんので、ご了承いただけましたら幸いです。
とはいえ、不思議なことに、書き進めていくうちに登場人物が勝手に個性を発揮し始めたことも事実です。現在の彼らは、『理性の限界』で議論し尽くすことのできなかった「限界論」に関わる題材について、再びディスカッションを開始した模様です。その結果が発行されましたら(いつのことになるのかは、わかりませんが)、またご笑覧いただけますように、よろしくお願い申し上げます。
2008年7月17日 高橋昌一郎
著者について
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2008/6/17)
- 発売日 : 2008/6/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 280ページ
- ISBN-10 : 4062879484
- ISBN-13 : 978-4062879484
- 寸法 : 10.6 x 1.3 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 47,493位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について

最新刊『ロジカルコミュニケーション』(フォレスト出版)を上梓した。本書には、私が開発し30年以上にわたって推進してきた「ロジカルコミュニケーション」のエッセンスをすべて盛り込んである。「第1章:論理的に考えて、うまく伝えるには?<基礎>」、「第2章:詐欺に騙されないためには?<応用>」、「第3章:筋道立てて、証明するには?<論証>」、「第4章:論理を突き詰めるとどうなる?<パラドックス>」、「第5章:世の中の難問に、どう答える?<ジレンマ>」の構成に、イラスト・図版合計100点以上が含まれている。もともとは2023年4月~2024年7月に「ロジカルコミュニケーション入門:はじめての論理的思考」としてウエブ「NHK出版:本がひらく」[全15回]に連載した内容に加筆修正を加えたものである。ちなみに、私の大学の授業では、学生のグループ・ディスカッションやプレゼンテーションを中心に、さまざまな社会的・哲学的問題を提起し、多彩な論点を浮かび上がらせて、賛否両論の価値観を見極める「ロジカルコミュニケーション」を徹底的に実践している。その結果、私のゼミからは、毎年ほとんどの学生が、当初の想定をはるかに越えるすばらしい企業に就職している。本書の読者には、ぜひ「ロジカルコミュニケーション」を理解し実践することによって、人生を劇的に好転していただきたい!
『天才の光と影:ノーベル賞受賞者23人の狂気』(PHP研究所)は、とくに私が独特の「狂気」を感得したノーベル賞受賞者23人を厳選して、彼らの波乱万丈で数奇な人生を辿っている。一般に、ノーベル賞を受賞するほどの研究を成し遂げた「天才」は、すばらしい「人格者」でもあると思われがちだが、実際には必ずしもそうではない。フィリップ・レーナルト(1905年物理学賞)のようにヒトラーの写真を誇らしげに書斎に飾っていた「ナチス崇拝者」もいれば、「妻と愛人と愛人の子ども」と一緒に暮したエルヴィン・シュレーディンガー(1933年物理学賞)のような「一夫多妻主義者」もいる。「光るアライグマ(実はエイリアン)」と会話を交わしたという「薬物中毒」のキャリー・マリス(1933年化学賞)や、「アルコール依存症」で売春街から大学に通ったヴォルフガング・パウリ(1945年物理学賞)、「超越瞑想」に「オカルト傾倒」して周囲を唖然とさせたブライアン・ジョセフソン(1973年物理学賞)のような天才も存在する。どんな天才にも、輝かしい「光」に満ちた栄光の姿と、その背面に暗い「影」の表情がある。読者には、天才と狂気の紙一重の「知のジレンマ」から、通常では得られない「教訓」を読み取っていただけたら幸いである。本書には「狂気」の23人と関連して、44人のノーベル賞受賞者も登場する。「ノーベル化学賞・物理学賞・生理学医学賞の歴代受賞者(1901~2023年)」と600名近くの「人名索引」も添付してあるので、こちらもご活用いただけたらと願っている。
『新書100冊』(光文社新書)は、2019年7月〜2023年7月に刊行された約5000冊の新書の中から、私が責任を持って選び抜いた「新書100冊」を紹介します。また、本書掲載のコラム「『新書大賞』について」では、小集団の偏向審査に基づく「新書大賞」の「廃止」を提言しました(笑)。本書の100冊の書評は、絶対に「その著者だけ」にしか書けない新書、一流の科学者が最先端の研究成果をわかりやすく解説してくれる秀逸な新書、日本の抱える諸問題に本質的に斬り込む斬新な新書ばかりを集めてあります。多種多彩な「知的刺激」が凝縮された100冊の書評をまとめて見ると「壮観」です。本書が何よりも読者の「視野を広げる読書」のお役に立てば幸いです。
『実践・哲学ディベート』(NHK出版新書)は、『哲学ディベート』(NHKブックス)の続編に相当します。舞台は同じ大学の研究室で、教授と5人の学生がセミナーで話している光景……。とくに本書が焦点を当てているのは、実際に誰もが遭遇する可能性のある多彩な「人生の選択」です。第1章「出生前診断と反出生主義」、第2章「英語教育と英語公用語論」、第3章「美容整形とルッキズム」、第4章「自動運転とAI倫理」、第5章「異種移植とロボット化」について、各章が現実的問題と哲学的問題の2つのセクションに分けられて「哲学ディベート」が進行します。章末には「一緒に考えてみよう」という課題もあります。NHK文化センター講座【哲学ディベートを楽しもう!】でもリアルな「哲学ディベート」を楽しむことができますから、ぜひご参加ください。
『20世紀論争史』(光文社新書)は、20世紀に生じた多種多彩な論争について、「教授」と「助手」がコーヒーを飲みながら研究室で対話する形式で進行します。人類史上、過去と比べて20世紀の思想が大きく変遷したのは、コンピュータや遺伝子操作などの科学技術が飛躍的に発展した結果、そもそも人間とは何か、知性とは何か、存在とは何か……といった、従来は哲学の対象とされてきた問題が「科学哲学」の対象になった点にあります。本書の目的は、もはや「科学を視野に入れない哲学」も「哲学を視野に入れない科学」も成立しないという観点から、改めて20世紀を代表する「知の巨人」たちが繰り広げた原点の論争を振り返り、「科学と哲学の融合」のイメージを味わっていただくことにあります。全30章・456ページという新書は、これまでに私が上梓してきた中でも最も分厚い作品ですが、どなたにもわかりやすくスムーズに読んでいただけるように、ユーモラスで知的な対話を心掛けたつもりです。
『フォン・ノイマンの哲学』(講談社現代新書)は、20世紀を代表する天才のなかでも、ひときわ光彩を放っているジョン・フォン・ノイマンの生涯と思想、つまり「人生哲学」に焦点を当てました。ノイマンは、わずか53年あまりの短い生涯の間に、論理学・数学・物理学・化学・計算機科学・情報工学・生物学・気象学・経済学・心理学・社会学・政治学に関する150編の論文を発表しました。天才だけが集まるプリンストン高等研究所の教授陣のなかでも、さらに桁違いの超人的な能力を発揮したノイマンは、「人間のフリをした悪魔」と呼ばれました。「コンピュータの父」として知られる一方で、原子爆弾を開発する「マンハッタン計画」の科学者集団の中心的指導者でもあり、「ゲーム理論」と「天気予報」の生みの親でもあります。どのページにも驚愕の事実があると思います。
『自己分析論』(光文社新書)は、これまでに私が大学生や卒業生から相談を受けてきた「自己分析」について、「就職活動・人間関係・人生哲学」の3つの視点からアプローチしたのが特徴。「自己分析」についてのノウハウ本やワークブックは世に溢れていますが、本書のように3つの異なる分野に深く踏み込んで読者をサポートする書籍は、他に類を見ないものと自負しています。「就活生は必読!」であり、「転職」が頭に浮かんだり「いかに生きるべきか」悩んでいる読者にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。
『反オカルト論』(光文社新書)は、『週刊新潮』の連載に加筆修正を行った内容。帯に「STAP事件は現代のオカルト!」とあるようにSTAP事件を徹底的に総括しました。フォックス事件の真相やコナン・ドイルがスピリチュアリズムに騙された理由、さらに霊感セミナーや江戸しぐさなど「現代も生き続ける〝トンデモ〟を科学的思考でめった斬り」にしたつもりです。
★自己紹介(たかはし・しょういちろう)
國學院大學教授・情報文化研究所所長・Japan Skeptics 副会長。青山学院大学・お茶の水女子大学・上智大学・多摩大学・東京医療保健大学・東京女子大学・東京大学・日本大学・放送大学・山梨医科大学・立教大学にて兼任講師を歴任。ウエスタンミシガン大学数学科および哲学科卒業後、ミシガン大学大学院哲学研究科修了。東京大学研究生、テンプル大学専任講師、城西国際大学助教授を経て現職。
朝日カルチャーセンター・NHK文化センター・中日文化センター・ヒューマンアカデミーでも講座を担当。
専門は論理学・科学哲学。幅広い学問分野を知的探求!
著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』(以上、講談社現代新書)、『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『新書100冊』(以上、光文社新書)、『愛の論理学』(角川新書)、『東大生の論理』(ちくま新書)、『小林秀雄の哲学』(朝日新書)、『実践・哲学ディベート』(NHK出版新書)、『哲学ディベート』(NHKブックス)、『ノイマン・ゲーデル・チューリング』(筑摩選書)、『科学哲学のすすめ』(丸善)、『天才の光と影』(PHP研究所)、『ロジカルコミュニケーション』(フォレスト出版)など。
監修書は『記号論理学』『数理論理学』『不完全性定理』(以上、丸善)、『ゼロからわかる論理的思考』『思考の迷宮パラドックス』『ザ・ヒストリー科学大百科』『図鑑哲学』『合理性を捨てれば人生が楽になる』(以上、ニュートンプレス)、『認知バイアス事典』『認知バイアス事典:行動経済学・統計学・情報学編』(以上、フォレスト出版)など。
趣味はJazz・Wine・将棋四段。
カスタマーレビュー
お客様のご意見
お客様はこの入門書について、以下のような評価をしています: 「読者に知的刺激を味わっていただく」という目的を達成したと高く評価しています。読者に知的刺激を与え、人生を豊かにさせてくれる本だと感じています。また、非常に読みやすく、あっという間に読み切ることができると好評です。難しい題材をわかりやすく解説し、章ごとにわかりやすく解説している点も評価されています。 内容については、斬新で分かりやすいと評価されており、特に経済学や数学などをわかりやすく書いている点が賞賛に値する内容だと考えています。 一方で、肝心の内容は分かりづらいという指摘もあります。囚人のジレンマに関する司法取引の引用は面白かったものの、内容が分かりにくいという指摘もありました。
お客様の投稿に基づきAIで生成されたものです。カスタマーレビューは、お客様自身による感想や意見であり、Amazon.co.jpの見解を示すものではありません。
お客様はこの科学哲学入門書について、以下のように評価しています: 「読者に知的刺激を味わっていただく」という著者の目的が達成されていると感じています。読者に知的刺激を与え、人生を豊かにさせてくれる本だと評価されています。また、深い内容と読みやすさの融合が見事な傑作だと考えています。経済を専攻する方にも読んで欲しいとの声もあります。
"最初に、この本は日本人が書くものとしては、 異例に多くの哲学的、科学的な分野に関連しており、 かつ私がこれまでに読んだ本の中で 最も素晴らしく平易でわかりやすいプレゼンテーションをしている点で最高である。..." もっと読む
"...読者に知的刺激を味わっていただく (p.264)」という著者の目的は達せられていると思う。 第1・2章に比べて、第3章が手強いのは著者の専門領域だからか私の理解力の問題か。" もっと読む
"面白そうなのだが 肝心の内容は分かりづらい 結局なにも残らなかった。" もっと読む
"3つの定理から理性の限界を示す本。 題材のネタだけでなく時々でる極論も面白く、読んでて飽きない。 質問キャラの発言も無知な自分に近く、その後の解説の論理の流れがスッキリ入った。 引用もしっかりしているので、チェックしたい。..." もっと読む
お客様はこの本の読みやすさを高く評価しています。非常な読みやすさがあり、あっという間に読み切ることができたという声があります。また、難しい題材をわかりやすく説明しており、哲学・数学・論理学・社会学などの学問を織り交ぜて軽妙に語られており、とても判り易いイメージで示してくれるため、スラスラと読めると好評です。
"難しい題材をわかりやすく、哲学・数学・論理学・社会学などの学問を織り交ぜて軽妙に語られています。" もっと読む
"...何れも、これまでの知のパラダイムの展開を迫る重要問題であ るが、それをとても判り易いイメージで示してくれるので、スラ スラと読める。 今後は、これらの知の限界点を認識しつつ、自身の思考展開を して行く必要があると感じる。" もっと読む
"...科学・形式科学(論理学・数学など)の多岐に及ぶ話題が提供されているが、学生・研究者・社会人らの集うシンポジウムでの会話の形で叙述されており、すらすら読める。「読者に知的刺激を味わっていただく (p.264)」という著者の目的は達せられていると思う。..." もっと読む
"...日常的な具体的例をふんだんに盛り込んでいるので、割とさくさく読み進めることができる。 合理的選択過程で淘汰されずに生き残るのは、最も非合理的な特性を持つ選択肢になりがちという論証は、思わずうなりそうになった。..." もっと読む
お客様はこの本のわかりやすさを高く評価しています。経済学や数学をわかりやすく解説し、科学や哲学にも話が及ぶと好評です。また、章ごとにわかりやすく解説されており、理解しやすいという意見もあります。一方で、得られる所が少なく、知的に楽しめる内容ではないという指摘もあります。
"...異例に多くの哲学的、科学的な分野に関連しており、 かつ私がこれまでに読んだ本の中で 最も素晴らしく平易でわかりやすいプレゼンテーションをしている点で最高である。 著者は1、論理的なゲーデルの不完全性について造詣が深く、..." もっと読む
"...社会人や大学生にも分かるように、ディベート形式で説明してくれて いて、とてもわかりやすかったです。 ●『選択』の限界 選挙や多数決で決める場合、本当に公平な多数決は存在しないとの 内容です。 例えば、ある集まりの中で誰をリーダーにするか?..." もっと読む
"...本書ではそのうち3つの著名な「限界」についての証明を、章ごとにわかりやすく解説している。 第1章「選択の限界」→アロウの不可能性定理 第2章「科学の限界」→ハイゼンベルグの不確定性定理 第3章「知識の限界」→ゲーデルの不完全性定理..." もっと読む
"...問題はゲーデルの「不完全性定理」。著者は論理学の専門家らしく、ここだけ説明が中途半端になっている。ここまでは平易な説明だったのが、この部分に来て命題論理(あるいは述語論理)の知識がないと理解出来ない記述になっている。..." もっと読む
お客様はこの入門書について、賞賛に値すると評価しています。斬新で分かりやすく、経済を専攻する人には読んで欲しいと感じています。また、複数の参加者による議論形式の記述も斬新だと好評です。
"いいものを有難うございました。又の機会がありましたらよろしくお願いします。" もっと読む
"...うまく描き出している。初学者の納得と興味を引き出す事に成功している。 このような入門書の試みは賞賛に値する。 特に経済を専攻しようと思う人には読んで欲しいですね。 読んで損しない珍しい本です。" もっと読む
"本書の複数の参加者による議論形式の記述は、斬新でとても分かりやすくて面白い。 本書のテーマである「アロウの不可能性原理」「ハイゼンベルクの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」は各々に何冊も本が出ているが、それぞれに対しても格好の入門書になっていると思う。" もっと読む
"素晴らしい!..." もっと読む
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
- 2024年12月5日に日本でレビュー済みAmazonで購入難しい題材をわかりやすく、哲学・数学・論理学・社会学などの学問を織り交ぜて軽妙に語られています。
- 2015年7月18日に日本でレビュー済みAmazonで購入架空の専門家や一般人が参加するシンポジウムという形式で、
「理性の限界」というテーマが議論されて行く。
「選択の限界」では、アロウの不可能性定理と囚人のジレンマ
が、「科学の限界」では、科学史及びハイゼンベルクの不確定
性原理が、「知識の限界」では、ぬきうちテストのパラドック
スとゲーデルの不完全性定理が取り上げられる。
何れも、これまでの知のパラダイムの展開を迫る重要問題であ
るが、それをとても判り易いイメージで示してくれるので、スラ
スラと読める。
今後は、これらの知の限界点を認識しつつ、自身の思考展開を
して行く必要があると感じる。
- 2008年9月26日に日本でレビュー済みAmazonで購入最初に、この本は日本人が書くものとしては、
異例に多くの哲学的、科学的な分野に関連しており、
かつ私がこれまでに読んだ本の中で
最も素晴らしく平易でわかりやすいプレゼンテーションをしている点で最高である。
著者は1、論理的なゲーデルの不完全性について造詣が深く、
著名な論理学者であるスマリヤンの翻訳も手がけている。
しかし、2、本書では社会科学的な民主主義の決定不可能性、
さらに3、量子力学的な不確定性、ならびに科学理論の相対主義、
などについても筆をすすめ、3部が一体となって素晴らしい入門書となっているのだ。
社会科学では、アローによる不可能性定理が有名だが、
これは一言でいえば、
「民主主義における決定方法では、推移律その他の
常識的に望ましいと思われる性質のすべてを満たせない」ほどのものだ。
これは「決め方の原理」などの有名な本も参照にすればわかりやすいかもしれない。
ついで、現代社会科学の基礎である、ゲーム理論とナッシュ均衡が説明される。
量子力学では、物体の位置と運動量を完全に知ることはできないという
ハイゼンベルクの不確定性が有名だが、そういった古典解釈を超えて、
量子力学の意味する相補性から生じる情報伝達のEPR矛盾、
さらには多世界解釈が説明される。
同時に科学という試みのもつ客観性についても、ポパーからクーン、
ファイヤーアーベントへと続く論争が解説される。
ゲーデルの不完全性定理については、よく知られた形では、
「この文章は間違っている」というような自己言及を許すような形式システム、
(これは数学体系を含めて、実質的にほとんどすべての論理体系のこと)では、
決定不能な命題が存在することを意味している。
これももっと詳しくは類書を読めばいいのだろうが、それをチャイティンの定理など
もっと新しい発見とともに論理学の限界として提示している点が新しい。
しかし、この本の素晴らしさは、これらの人間理性の限界がそれぞれ独立しているのではなく、
まさに量子的な「絡み合った状態」にあることを、興味深く示唆している点だろう。
特に、ナッシュ均衡の持つ合理性、つまり、相手の行動の予見を無限に繰り返すという
人間の信念の体系における無矛盾性と
タルスキー、スマリヤン的な、論理体系の持つ不可避的な矛盾性などとの関係を
論じている点は素晴らしい。
これはもう、単なる啓もう書ではなく、学問書に昇華し得る指摘であると思う。
私は科学的な知識というのは、今後も無限に進歩し続けると信じる素朴科学主義者だが、
理性的な企ての持つ根本的な矛盾を考えさせられる点で、
また、できれば私自身がいつか書いてみたいと思っていたという意味で、
すべての人にお勧めできる出色の書籍だ。
- 2013年6月14日に日本でレビュー済みAmazonで購入アロウの「不可能性定理」、ハイゼンベルクの「不確実性定理」、ゲーデルの「不完全性定理」の説明を通して人間の「理性の限界」を考察・喚起した書。様々な立場の出席者から成る架空シンポジウムの形式を採ったり、多くの比喩を用いたりと、分り易さへの配慮がなされている。
アロウの「不可能性定理」は初めて聞いた言葉だったが、その内容は理想的民主主義(投票方式あるいはより一般的な社会的仕組み)の非存在性という自明なもので、関連して出て来る話題も、ゲーム理論、Nash均衡、囚人のジレンマといったお馴染みのもの。とっつき易い反面、得る所も少ないという印象。囚人のジレンマに関して司法取引を引用したのは面白かったが(全くそのままだが)。著者は物理学に関しては門外漢らしく、ハイゼンベルクの「不確実性定理」や量子論に関しては恐る恐る書いているという印象で、一般の概説書を更にコンパクトにした感じ。
問題はゲーデルの「不完全性定理」。著者は論理学の専門家らしく、ここだけ説明が中途半端になっている。ここまでは平易な説明だったのが、この部分に来て命題論理(あるいは述語論理)の知識がないと理解出来ない記述になっている。もっとも、ゲーデルの「不完全性定理」を厳密に説明するのは困難だし、上記の2つの様に雑駁に説明するのも困難(あるいは著者のプライドが許さない?)という板挟みに合ったのかもしれない。
科学に基づいていると思われる社会の制度や「人間の理性」がそれ程"完全"ではない点を喚起したという意味では優れた啓蒙書。ただし、チューリングをテューリングと綴っている点には最後まで馴染めなかった。
- 2018年1月21日に日本でレビュー済みAmazonで購入一般的に完全なものであると考えられている『選択』、『科学』、
『数学』が、どこまで完全なものであるのか?どこからが不完全か?
解き明かされていないか?を1冊の本でまとめてくれています。
本のタイトル通り、どこが限界なのか?分かります。
また、これらの内容は専門的になりがちですが、それを一般の
社会人や大学生にも分かるように、ディベート形式で説明してくれて
いて、とてもわかりやすかったです。
●『選択』の限界
選挙や多数決で決める場合、本当に公平な多数決は存在しないとの
内容です。
例えば、ある集まりの中で誰をリーダーにするか?を決定する場合
でも、完全な投票の方法は存在しなくて、どのような性格のリーダーに
したいか?によって、投票の方法や結果が変わるというものです。
多数決は公平なものだと思っていたので、おどろきでした。
もう一つ勉強になったのが、「しっぺ返し戦略」でした。
相手に協調する方がトクか?裏切る方がトクか?有識者がパソコンの
プログラミングを組んで、いろいろなパターンで勝負させたところ、この
単純なプログラミングが一番強かったようです。
(もちろん、統計学やそのほかの数学を使ってプログラムを組んだ人が
いるにも関わらずです。)
自分の生活でも使えそうだと思いました。
●『科学』の限界
万有引力や地動説から相対性理論、量子力学まで、進化の歴史を紹介
しつつ、今の科学はどこまで分かるか?解説してくれています。
相対性理論から、光の速さに近づけば近づくほど時間の経過が遅くなる
ことはなんとなく知っていましたが、光の速さは不変で、距離も不確定な
ものであることは初めて知りました。
(つまり、光の速さで動いても、光は止まって見えずに光の速さで動いて
いる。また、光の速さに近づけば距離は縮んでいく。)
また量子力学から電子の位置は不確定なことも分かって面白かったです。
●『数学』の限界
これも驚きでした。数学自体に証明も反証明も出来ない不完全な命題を
含んでいるのも初めて知りました。数学なので、数字で証明すればすべて
説明できると思っていましたが、そうでもないようです。
上の通り、大きく3つの章に分かれていましたが、『選択』、『科学』、『数学』
ともに、突き詰めていくと、最終的には証明できない不完全なところに
到達するのが、とても面白かったです。
いいl刺激になると思います。
ぜひ一度読んでみてください!
- 2015年7月4日に日本でレビュー済みAmazonで購入「『アロウの不可能性定理』と『ハイゼンベルクの不確定性原理』と『ゲーデルの不完全性定理』をまとめて『理性の限界』を探究(p.264)」しようとする書。順に「選択の限界」「科学の限界」「知識の限界」と題された3章で、それぞれ社会科学・自然科学・形式科学(論理学・数学など)の多岐に及ぶ話題が提供されているが、学生・研究者・社会人らの集うシンポジウムでの会話の形で叙述されており、すらすら読める。「読者に知的刺激を味わっていただく (p.264)」という著者の目的は達せられていると思う。
第1・2章に比べて、第3章が手強いのは著者の専門領域だからか私の理解力の問題か。
- 2024年5月1日に日本でレビュー済み面白い!
各界を代表する架空の人物達の討論として、選択、科学、知識、の限界についての話が進む。
各界代表者とは、
カント主義者、会社員、論理実証主義者、科学主義者、科学社会主義者、数理経済学者、運動選手、ロマン主義者、大学生、フランス国粋主義者、論理学者、哲学史家、方法論的虚無主義者、ロシア資本主義者、
科学史家、国際政治学者、・・・
・選択の限界
コンドルセのパラドックス
個人では成立する選好の遷移率が集団では成立しないことがある。
アロウの不可能性定理
民主主義に必須となる多数決原理そのものにパラドックスがあり、完全な民主主義は原理的に不可能。
・科学の限界
ハイゼンベルクの不確定性原理
ERPパラドックス
科学は一般的には、天動説から地動説へ、ニュートン力学から、相対性理論・量子論へと、合理的選択がなされ進歩しているように見える。しかし、「科学の進歩に合理的基準などない、あるのは科学者集団における信念や主観に基づく合意だ」という見解もある(トーマス・クーン)。だとしたら、「科学こそが、もっとも新しく、もっとも攻撃的で、もっとも教条的な宗教制度である」
(ファイヤアーベント)。
・知識の限界
最後はやはりこれ
ゲーデルの不完全性定理
ゲーデルは述語論理の完全性定理と
自然数論の不完全性定理の両方を証明した。通常、論理学は完全(矛盾がない)だが数学は不完全(矛盾がある)と言われている。しかし、近年、人の思考にもっとも近いと言われている認知論理システムにもゲーデルの不完全性定理が顔を出すことがわかっている(レイモンド・スマリヤン)。
最近の世界動向からは、理性の限界もだが、さらに理性への反動を感じるのは自分だけ?(^^;)
