【6月18日 AFP】チェコのペトル・ネチャス(Petr Necas)首相(48)が17日、愛人関係にあるとされる側近女性が汚職や職権乱用の疑いで訴追されたことを受け、引責辞任した。右派の市民民主党(Civic DemocratsODS)党首の職も同時に辞した。現政権は少数党の連立であることから、政局が混乱する可能性も浮上している。

 ミロシュ・ゼマン(Milos Zeman)大統領は首相の辞任の申し出を受け、新政権の発足まで暫定首相として留任するよう要請した。ネチャス氏は議員としての任期を全うした後は政界から引退する考えを示した。

 警察は13日、首相府や国防省のオフィスや別荘、銀行などで大規模な捜索を実施し、巨額の現金や金を押収した。翌14日には首相の愛人と噂されるヤナ・ナジョバー(Jana Nagyova)首相府官房長が汚職と職権乱用を共謀した罪で訴追されていた。
 
 警察は、官房長らが首相と不仲の妻、ラドカ(Radka Necasova)さんの行動を監視するよう軍の情報機関に命じたとしている。首相は先週前半、25年間に及ぶ結婚生活は破綻したと明らかにしていた。

■汚職が相次ぐチェコ

 遅くとも2006年から首相の下で働いてきた元会計士のナジョバー官房長は、有罪になれば禁錮5年の刑罰を受ける可能性がある。だが同氏の弁護士は、官房長は首相と妻をスキャンダルから守るため、善意で監視を要請したと述べている。同氏のほかには、軍情報機関の幹部や元国会議員など7人が汚職と職権乱用の罪で訴追された。

 欧州連合(EU)加盟国で人口約1050万人のチェコ共和国は、1993年にスロバキアと分離して以来、汚職事件に悩まされている。世界各国の腐敗の実態を監視する非政府組織(NGO)、「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency InternationalTI)」は昨年、汚職のひどい国ランキングで同国を、コスタリカやルワンダ以下と指摘している。

■早期の選挙は政治の混乱招くか

 少数党3党による連立内閣には、2010年7月の政権発足からこれまでに、すべて否決されたものの8回の不信任案が提出されている。ネチャス氏が党首を務めてきた市民民主党は、選挙の前倒し実施を避けるため、数日中に新たな首相を選出する意向を示している。最近の世論調査では、選挙になれば同党が敗北することを示す結果が出ている。

 今回の政治スキャンダルは、チェコの財政難が続く中で発生した。同国は自動車の製造と債務危機に陥ったユーロ圏への輸出に大きく依存している。チェコ経済はここ6四半期連続で続く過去最長の不況のさなかにある。

 一方、こうした政治的混乱にもかかわらず、先ごろ発生した大規模な洪水被害からの復旧作業を推進するため、左派の野党も含めたすべての政党が、円滑な政権移行を期することで合意している。今回の洪水ではチェコ国内で少なくとも12人が死亡し、約1万9000人が自宅からの避難を余儀なくされている。(c)AFP/Jan FLEMR