【5月8日 AFP】ノルウェーのベルゲン(Bergen)で開催中の国際会議に出席した各国の科学者は6日、二酸化炭素(CO2)の排出が原因で北極海(Arctic Ocean)の酸性化が急速に進んでおり、北極海の壊れやすい生態系に悲惨な結果をもたらす恐れがあると警鐘を鳴らした。

 科学者らによると、地球の海洋酸性度は、産業革命が始まって以来30%上昇しており、ここ少なくとも5500万年間で最高の水準に達している。

 冷たい海水により多くのCO2が溶け込むため、北極海は他の海よりも酸性化の影響を受けやすい。また、河川や溶解した氷からの淡水が流入するため、CO2による酸性化の影響を化学的に中和する機能が低下している。さらに、氷の溶解が進むと海面が露出する範囲が拡大するため、CO2が溶け込む量も増加することになる。

 アイスランド近海やバレンツ海(Barents Sea)では、1960年代末以降、海水のpH値が10年ごとに約0.02の割合で減少している。

 海洋酸性化に関する科学論文を執筆したノルウェー在住の研究者、リチャード・ベラビー(Richard Bellerby)氏によると、CO2の排出をすぐに停止したとしても、海の酸性度を200年前に産業革命が始まる以前のレベルに戻すには、数万年かかるだろうという。

 海洋酸性化は、北極海などの海域に不均一に広がっており、その仕組みはほとんど解明されていない。サンゴや軟体動物、「海の天使(sea angel)」や「海の蝶(sea butterfly)」とも呼ばれる翼足類などの、殻を持つ生物を脅かしており、これら生物の石灰化能力に変化をもたらしている。

 クモヒトデなど、直接的な絶滅の危機に直面している生物種もあり、漁業にも影響が及ぶ可能性もある。結果として、漁業、観光産業、先住民の生活が危機にさらされることになる。(c)AFP