ひとり親家庭の「気負いの大きさ」を知ってほしい
治部 共働き家庭とひとり親家庭は、保育園や学童保育などで接点があります。両者が自然に関わっていくために必要な「心構え」があるとすれば、どのようなものでしょうか?
村上さん(以下、敬称略) 共働き夫婦もひとり親も、どちらも子育てしながら働く親であることに変わりはありません。一つ大きな違いは、ひとり親は「ひとりで立っている」ということ。だから、ものすごい「気負い」があります。
シングルになった理由は人それぞれですが、例えば「離婚してはいけない」とか「人に相談なんてしてはいけない」という具合に、世間のルールで自分自身を縛っているひとり親はたくさんいます。
共働き夫婦なら、どちらか片方が目いっぱい働き、もう片方が家庭を優先するなど、ブレーキとアクセルを二人で組み合わせて調整できます。でも、ひとり親は、常に目いっぱいアクセルを踏んでいる状態です。精神状態がかなり張り詰めている。
経済面だけでなく、精神面でもこういう違いがあることを、知っておいていただいたうえで、自然に会話してもらえたらいいと思っています。
―― 「気負い」の大きさが違うのですね。
村上 はい。昨年、東京都江東区で父子家庭の父親が、5歳の息子を殴って死なせてしまった事件がありました。これを聞いたとき、私は「人ごとではない」と感じたのです。
このお父さんは、男手一つで育てているからこそ、育児に手を抜いてはいけないと、気負っていたのではないか。きちんとしなくては、と思い込み過ぎ、子どもの5年後、10年後を考え過ぎて過剰にしつけへと促された結果、オーバーヒートしてしまったのではないか、と思いました。