説明及び注意事項(最終更新日:2009/11/24)
①このページに関しては、全てまとめ管理人が書いています。管理人は法律の専門家ではありませんので、専門家から見た場合はやや捉え方に問題のある記述などをしてしまう場合もあります。
②質問・情報提供や間違いの指摘等ありましたら、
こちらのコメント欄までお願いします。
③このページの最新更新日は2009/10/24で、以下の項目を追加しました。
→
外国人参政権に関する世論調査の結果
目次(関連ページ一覧)
テーマ別まとめ
資料・統計まとめ
推進論・反対論等のサイト
推進派の議論
反対派のまとめサイト
外国人参政権問題の整理
最高裁での外国人参政権に関する判断
関連項目
参考サイト
外国人参政権に関する国内の学説状況
日本の憲法学会において、外国人の選挙権を巡る学説は以下のように分類されます。
①国政禁止・地方禁止(伝統的見解であり、80年代までは学説のほとんどがこの見解)
②国政禁止・地方許容(現在における通説)
③国政許容・地方許容(少数者が主張する説)
④国政許容・地方要請(少数者が主張する説)
⑤国政要請・地方要請(極めて少数者が主張する説)
出展:長尾一紘「外国人の参政権」p.3
最高裁の判断は、国政禁止・地方許容の「許容説」の立場に立っているといわれていますので、判例・通説共に外国人参政権は国政禁止・地方許容で国の立法政策に関わる事(地方参政権を付与しても、付与しなくても合憲である)と捉える事が一般的な見解になります。
但し、②の説が「通説」かどうかは争いがあり、最有力の学説という点では争いはありませんが、論者によっては有力説として取り扱う事もあり、「全面要請説」を採る辻村みよ子氏の『憲法』だと、以下のように紹介されています(論者の性質上、割引が必要になります)。
(1)全面(国政地方)禁止説/かつての通説
(2)全面許容説 /最近の有力説
(3)全面要請説/
(4)国政禁止地方許容/最近の有力説
(5)国政禁止地方要請 /
(6)国政許容地方要請/
関連項目
参考サイト
海外での外国人参政権の状況
国名 |
国政 |
地方参政権(特定国出身者) |
地方参政権(一般の定住外国人) |
備考 |
欧州地域 |
|
|
|
|
イギリス |
△ |
○(英連邦国民、愛国民など) |
× |
EU市民にも地方参政権 |
アイルランド |
△ |
- |
○ |
国政はイギリス国民のみ |
フランス |
× |
○ |
×(旧植民地からの移民も選挙権無し) |
EU市民のみ |
ドイツ |
× |
○(EU市民、郡及び市町村のみ) |
× |
EU市民も州の参政権は対象外 |
イタリア |
× |
○(首長の被選挙権は除く) |
× |
EU市民のみ |
ベルギー |
× |
○(EU市民) |
△(5年以上の居住、被選挙権無し) |
|
オランダ |
× |
○(EU市民、6週間の居住) |
△(5年以上の居住) |
相互主義を憲法で明記 |
ルクセンブルク |
× |
○(EU市民) |
△(5年以上の居住、被選挙権無し) |
注釈② |
スウェーデン |
× |
- |
○(3年以上の居住) |
|
デンマーク |
× |
- |
○(3年以上の居住) |
|
ノルウェー |
× |
- |
○(3年以上の居住) |
|
フィンランド |
× |
- |
○(2年以上の居住) |
|
アイスランド |
× |
○(EU市民、3年以上の居住) |
○(5年以上の居住) |
|
スペイン |
× |
○(EU市民) |
× |
ノルウェー国民は3年以上の居住 |
ポルトガル |
× |
○(注釈①) |
× |
EU市民と旧植民地出身者限定 |
スイス |
× |
△(注釈③) |
× |
一部の州のみ |
オーストリア |
× |
○(EU市民、市町村のみ) |
× |
EU市民も州の選挙権は対象外 |
ハンガリー |
× |
- |
○ |
全ての外国人が対象 |
チェコ |
× |
○ |
× |
EU市民のみ |
スロバキア |
× |
- |
○(永住者、全外国人) |
|
スロベニア |
× |
- |
○(永住者) |
|
ギリシア |
× |
○(10年以上の居住) |
× |
EU市民のみ |
マルタ |
× |
○(6ヶ月以上の滞在) |
× |
イギリス国民のみ対象 |
ロシア |
× |
- |
○(永住者、全外国人) |
EU非加盟 |
リトアニア |
× |
- |
○(永住者、全外国人) |
|
エストニア |
× |
- |
○(永住者、全外国人) |
5年以上の居住実績 |
トルコ |
× |
× |
× |
|
北中米地域 |
|
|
|
|
アメリカ |
× |
× |
× |
|
カナダ |
× |
○ |
× |
英連邦国民のみ |
オセアニア地域 |
|
|
|
|
オーストラリア |
△ |
△ |
× |
英連邦国民のみ |
ニュージーランド |
○ |
○ |
× |
被選挙権は英連邦国民のみ |
アジア地域 |
|
|
|
|
中国 |
× |
× |
× |
|
台湾 |
× |
× |
× |
|
韓国 |
× |
- |
○(永住者、年収による制限あり) |
50万ドル以上の投資等が条件 |
日本 |
× |
× |
× |
|
関連項目
参考サイト
外国人参政権に関する世論調査の結果
川崎市(1993年)
外国籍市民の市政参加 |
割合 |
是非とも必要 |
29.8% |
どちらかといえばあったほうがよい |
30.1% |
必要ない |
23.8% |
無回答 |
16.2% |
出展:梶田孝道「外国人参政権」
神奈川県(2007年)
設問:国内在住の日本国籍を有していない人(外国人)は、地方公共団体の議員や長の選挙権(投票権)がありませんが、どう思いますか?
選挙権は日本国民の権利とされているので、今のままでよい |
50.1% |
地方公共団体の議員や長の選挙権を外国人にも認めるべきである |
27.3% |
わからない |
16.0% |
その他 |
3.0% |
無回答 |
3.0% |
朝日新聞(1994/03/09)
地方参政権(選挙権・被選挙権) |
割合 |
認める |
47% |
認めない |
41% |
その他 |
12% |
※認めるのうち、近畿57%、関東48%
調査データ:3000人(面接)、回収率77%
毎日新聞(1995/03/29)
地方の首長・議員の参政権(選挙権・被選挙権とも) |
全体 |
男 |
女 |
与えるべきだ |
41% |
46% |
36% |
与えるべきでない |
17% |
20% |
15% |
どちらでもよい |
22% |
21% |
23% |
わからない |
19% |
13% |
24% |
調査データ:3000人(面接)、回収率71%
読売新聞(1999/03/05)
地方選挙での投票・立候補について |
|
両方とも認めるべきだ |
32.2% |
投票は認めるべきだ |
33.4% |
両方とも認めるべきでない |
24.5% |
答えない |
10% |
調査データ:3000人(面接)、回収率67.2%
産経新聞(2009/08/27)
設問 |
YES |
NO |
永住外国人へ地方参政権付与を容認すべきか |
5% |
95% |
むしろ帰化の条件を緩和すべきか |
11% |
89% |
容認すれば、国益が損なわれると思うか |
94% |
6% |
毎日新聞(2009/11/24)
外国人の参政権に関する意識 選挙権に関する意識
設問:民主党や公明党などは、日本に永住している外国人に地方参政権を与える法案の提出を検討しています。永住外国人に地方参政権を与えることに賛成ですか、反対ですか。
|
全体 |
男性 |
女性 |
賛成 |
59 |
58 |
59 |
反対 |
31 |
34 |
29 |
FNN世論調査 政治に関するFNN世論調査(2009/11/22)
設問:Q8. 次の具体的な政策について、実現すべきだと思いますか。そうは思いませんか。それぞれについて、お答えください。
F)永住外国人に地方参政権を与えること
実現すべきと思う |
53.9% |
思わない |
34.4% |
わからない・どちらともいえない |
11.7% |
「外国人参政権」に関する理論的な問題のQ&A
参政権は「国民固有の権利」なので、外国人には認められないのではないでしょうか?
日本国憲法15条は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と述べています。
この場合の「国民固有の権利」という言葉は「国民が当然もっているとされる権利、したがって、他人にゆずりわたす事のできない権利」とされています。
この条文を根拠として「選挙権は、憲法15条により、国民固有の権利であるから、外国人には認められない」といった解釈が主張される事もありますが、日本政府の有権解釈として、内閣法制局が「憲法15条の「固有の権利」というものは「国民が占有する権利」ではなく、「国民から奪うべからざる権利」の意味に解釈するのが正当である」と答弁した内容(「日本国籍を喪失した場合の公務員の地位について」)があり、憲法学の通説も、機械的に国民・外国人の二分法で当てはめるのではなく、権利の性質と外国人の態様に応じた合理的解釈がされる「性質説」に立っているそうです(近藤敦「外国人参政権に関するQ&A」)。
そのため、この主張に関する結論としては、「そういった立論をする事は可能だけれども、政府の有権解釈や憲法学の通説から外れた少数説の立場に立った立論になる」という事になると思います。
国政と地方の政治は一体化しているので、地方といえども外国人に参政権は認められないのではないでしょうか?
外国人に参政権を認めるか、という根本の問題点は置いてこの論点のみに絞った場合、そうとは言えないようです。
日本国憲法15条1項の「国民」概念と93条2項の「住民」の概念の関係は、「二重の正当化」論というもので説明が可能になります。
国会議員選挙において「国家的正当化」を見る事ができるとするならば、地方議会選挙においては「地域団体的正当化」を見る事ができます。
国民主権の原理は上からの「国家的正当化」の連鎖が断たれない事を要請しますが、地方議会の条例制定は「法律の範囲内で」行う事とされているため、外国人の意向を反映した条例が制定されても、その内容が法律と矛盾する場合は、制度上常に法律の内容が優先されます。
そのため、法律に体現される「国家的正当化」が条例によって破られる事はないと考える事ができます(長尾一紘「外国人の参政権」p.85-86)。
「納税の義務がある(税金を払っている)外国人には参政権を認めるべきだ」という理論には法的根拠はあるのでしょうか?
結論からいえば、この理論には法的根拠は全くないとのことです(長尾一紘「外国人の参政権」p.51)。
日本国憲法は国民主権を基本原理としていて、参政権は国民主権の原理から導かれるものですし、この理論を認めてしまった場合は、貧困によって納税ができなくなっている日本国民の参政権を停止する事にも繋がってしまいます。
国は納税者に対して、国防・治安・災害からの安全の他、教育・福祉事業や交通・郵便などの利益給付を行っていますが、外国人も納税の有無に関わらず、これらのサービスを享受しています。
そのため、納税の義務を負っているという事情そのものからは選挙権等が生ずると考える事は困難で、こういった理論は、法的議論ではなく、政治的主張の範囲に留まると思いますし、裁判でもこの手の主張は退けられています。
ドイツでは外国人参政権が「要請」されているという見解は学説上一致して否定されていたようですが、どのような理由だったのでしょうか?
ドイツの場合の外国人参政権を巡る論点は憲法の条項における「国民」概念の解釈についてで、70年代以降20年に渡って議論されてきたようです。
- すべての国家権力は、国民に由来する(ドイツ憲法20条2項前段)
- ラント、郡および市町村においては、国民は、普通、直接、自由、平等、秘密の選挙に基づく議会を有しなければならない(同28条1項2段)
前者は国民主権条項で、ここに外国人が含まれていないのは定説とされていましたが、後者の地方議会条項では、「国民」の概念に外国人が含まれるかどうかについては争いがあったようです。
国政選挙権が「要請」されているという見解に関しては、学説上もほぼ一致して否定されていたようですが、論点となったのは、普通選挙の原則、平等選挙の原則、一般的平等原則、人間の尊厳の原理、
表現の自由、社会国家管理、民主主義原理などになるようで、それぞれ以下の理由で否定されていたようです。
- 普通選挙原則(ドイツ憲法38条1項)は、「国民」を選挙から違法に排除する事を禁止するにとどまり、みずから「国民」の内容を確定する作用を含まない。また、歴史的解釈の観点からも、外国人に対する差別を禁止するものとは解せられない。
- 平等選挙原則(同38条1項)は、票の重さの均等を要請する原則であり、選挙権享有主体の範囲の問題とは関係ない。
- 一般的平等原則(同3条1項・3項)は、合理的差別を禁止するものではない。国籍による参政権の差別は合理的差別たりうる。
- 人間の尊厳の原理(同1条1項)は、たしかに各人を政治支配の単なる「客体」とすることを許すものではない。しかし、外国人は、言論活動などを通して政治的主体性を発揮しうる。また、出身国における選挙権行使の可能性は留保されており、滞在国における選挙権の否認によって、ただちに人間の尊厳が侵害されるわけではない。
- 表現の自由(同5条1項)は、あくまで世論形成にかかわるのみであり、国家意思の直接的形成にかかわる選挙権の根拠条項たりえないことは明らかである。
- 社会国家原理(同20条1項)は、国家目的を定式化したものであり、ここから国政参加への権利を引き出すことは不可能である。
- 民主主義原理(同20条1項)については、つぎの点を指摘しうる。外国人は、他国の対人高権に服するなど、滞在国国民とその法的地位を著しく異にする。民主主義的平等の理念からも、参政権について外国人と国民とひとしく取り扱う必要はない。
長尾一紘「外国人の参政権」p.86-87
ドイツでは外国人参政権に違憲判決が出たようですが、その内容はどのようなものだったのでしょうか?
外国人参政権はドイツでも議論がされてきましたが、1989年2月にハンブルグ市で8年以上の滞在の全ての外国人に7つの行政区での選挙権を付与する法改正、シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州の5年以上滞在する外国人に相互主義でデンマーク・スウェーデン・ノルウェー・アイルランド・オランダ出身の外国人に選挙権を付与する法改正がなされました。
この法改正は合憲性が争われ、1990年10月にドイツの連邦憲法裁判所で「外国人への地方自治体レベルでの参政権保障は違憲」と判断し、外国人に参政権を認めた法律を違憲無効としました。
ドイツ連邦憲法裁判所が外国人参政権を「違憲」と判断した根拠は、以下の4点になるようです。
①まず、文言解釈を根拠にする。憲法は、国民主権の主体と地方自治の主体につき、ともに「国民」(Volk)の語を用いている。このことは、国家権力に対して、選挙によって正当性を与える存在(選挙権者)と、地方自治体の権力に対して、選挙によって正当性を与える存在が同質でなければならことを示すものだ、とする。
②第二に、判例は、歴史的解釈を根拠とする。一九世紀において、国家と「市民社会」の対抗という図式の下に、地方自治体は「市民社会」の側に位置するものとして把握されていた。かくして、ワイマール憲法では。市町村の自治権は「基本権」として位置づけられていた。市町村をこのように、国家に対抗する存在、「市民の協同団体」として把握するならば、国家と「市町村」は異質の存在となり、国家レヴェルでの議会選挙と地方レヴェルでの議会選挙は、同じ内容の原則に立脚する必要はないということになる。判決は、原告側のこのような主張を排して、一九世紀においてはともかく、少なくとも現憲法の下では、地方自治体は国家に対抗する存在ではなく、国家機構の一環をなすものであり、選挙についても同じ内容の原則に立脚する必要がある、とした。
③第三に、判決は、地方自治体の権力行使が国家権力の行使そのものである事を強調する。国の事務を行う場合は当然のこととして、地方自治体本来の事務である「自治事務」についても、このことは同様であるとする。
④第四の論拠の趣旨は、つぎのような趣旨のものと解される。地方自治体所属員の資格を限定するものではなく、領域に所属することをもって所属資格の限定とするものである。しかし、この「開放性」は、外国人に対して妥当するものではない。選挙の機能が自治体権力の正当化にある以上、その主体は「国民」でなければならないからである。
長尾一紘「外国人の参政権」p.153-154
但し、この判決は欧州統合に伴う議論の中で直近のうちに外国人に参政権を保障しなければならない事も意識されていたため、「
国籍法改正もしくは憲法改正を行えば、外国人参政権の導入は許容されうる」とも判事しています。
この判事と1992年に締結されたマーストリヒト条約を受けて、ドイツでは1992年に憲法改正がされ、EU市民に限って地方参政権が認められるようになりました。
関連項目
「外国人参政権」に関する理論以外の問題のQ&A
旧植民地出身者(在日コリアン等)の歴史(国籍)問題と参政権の絡みはどういうものなのでしょうか?
1910年に日韓併合条約が結ばれ、朝鮮半島は日本の植民地になりました。それに伴い、朝鮮半島から日本への渡航の自由・朝鮮人の日本居住が許可されるようになり、職を求めて渡航する朝鮮人が増えましたが(この中には強制連行による人もいます)、第二次世界大戦での日本の敗戦により、日本は植民地を全て失う事になりました。
ここで問題となってくるのが、日韓併合~日本の敗戦までに「日本国民」となって日本に渡ってきた旧植民地出身の人達の処遇です。
この人達は敗戦までは「日本国民」という処遇でしたが、日本の敗戦に伴う戦後処理(1947年の外国人登録令(ポツダム勅令第207号))によって、日本国民ではなく「外国人」に分類されるようになりました。
こういった処置は、GHQ・日本政府・韓国政府・朝鮮国政府・そして在日諸団体の思惑が絡み合った結果として起きたものですが、問題となってくるのは、処置を行う際に、「旧植民地出身者一人一人に国籍の選択権を与えず、全員一律に日本国籍を剥奪するという対応を行った事」です。
この事に関しては、法律的には違法と解釈するのは難しいですが、旧植民地出身者に対する「戦後責任」としての政治的な問題となり、国会議員レベルでは、解決策として以下のようなものが提案されています。
①特に何もしない
②旧植民地出身者の権利を元々もっていた権利(日本人としての権利)に近づけるために外国人として参政権を認める
③外国人としての参政権は認めないが、旧植民地出身者に関してはその歴史的経緯から考え、国籍の選択権を与える(国籍取得特例法案)
なお、「旧植民地出身者に限って二重国籍を認める」という方法も提案されていますが、韓国は二重国籍を認めるのは「国益に資するエリート外国人」限定の対応のため、仮に日本が重国籍を認めたとしても、22歳以降は日本国籍を放棄して韓国籍を選択しない限りは韓国籍は維持できないようになっています。
関連項目
参考サイト
旧植民地出身者(在日コリアン等)を対象とした「国籍取得特例法案」はどういうものだったのでしょうか?
旧植民地出陳者に対する「戦後の歴史問題(戦後処理の問題)」を解決するための方法としては、外国人参政権が掲げられていましたが、それとは別個に戦後処理の問題を解決するため、旧植民地出身者(在日コリアン等)及びその子孫に国籍選択権を付与する事を柱とした法案です。
現在、旧植民地出身者(在日コリアン等)が日本国籍を取得する場合は、通常の帰化手続きを踏まなければならず、二世以降は日本に永住する意思を固めて国籍取得に条件が揃っているとはいえ、帰化を行政書士に頼むと30万円程度の費用がかかる事、親類の素行によっては帰化が認められないケースもある事などから、旧植民地出身者限定でこういった手続きを簡略化して届出を出すだけで帰化ができるようにする(旧植民地出身者一人一人に日本国籍の選択権を与える)という内容です。
なお、この法案は2000年の時に外国人参政権の代替案として浮上し、2008年にも再提出が検討されましたが、今現在は成立していません。
関連項目
参考サイト
旧植民地出身者(在日コリアン等)は日本の都合で国籍を剥奪されましたが、国籍選択権を与えないのは違法だったのでしょうか?
今現在の視点で見れば、在日コリアンの人達に対して、韓国・朝鮮籍もしくは日本国籍の好きな方を選択できる国籍選択権を与える制度がベターだったという事になるかもしれませんが、当時は、そういった提案に対して韓国政府が拒否的態度を示し、在日朝鮮人自身も消極的態度だったようですので、この点をとりあげて選択制度をとらなかった事は違法であると解釈するのは厳しいようです(長尾一紘「外国人の参政権」)。
昭和二十四年に韓国政府からマッカーサーあての書簡において、「三千万大韓民国人は日韓併合を認めないから、在日朝鮮人は連合国人の待遇を保有しなければならないという事、そして、日本の敗戦により日本国籍は一九四五年八月十五日に喪失したのであるから国籍選択権などというのは詭弁である」という趣旨が記されています(小柳稔「対日平和条約による国籍の変動について」民事月報四六巻)。
但し、これは法律解釈としての問題で、政治的には「旧植民地出身者一人一人に意思を確認せず(選択権を与えず)、全員一律に日本国籍を剥奪するという対応を行った事」は問題であるとされ、代替案として、地方参政権や国籍取得特例法案が検討されています。
関連項目
参考サイト
旧植民地出身者(在日コリアン等)は強制連行されてきたので、戦後処理の一環として地方参政権を与えるべきではないでしょうか?
かつてわが国が三十六年間植民地支配をした時代に、朝鮮半島から(強制)連行してきた人たちが、今七十万人といわれる在日を構成している。一世はかつて、日本国民として創氏改名をさせられ、兵役にも従事し、日本国民として困難な時代を乗り切ることになった。従って、日本社会に貢献し義務を果たした一世やその子孫にわが国の地方参政権を与えることは、日本が国際国家としてありうる道でないかと一人の政治家として考える(野中広務幹事長:当時)(産経新聞/2000/09/21)
この発言の元になる事実関係は、以下のようになるようです。
× 在日コリアン(一世)を構成するのは、戦時中に強制連行されてきた人々ばかりである
× 在日コリアンの中には、強制連行されてきた人はいなかった
○ 強制連行されてきた朝鮮人は多数いたが、その大多数は終戦時に帰還(140万人が帰還)した。強制連行にルーツを持つ人数は論争有り
論争に関しては、以下の説が有力です。
①狭い意味での強制連行(「国家総動員法」に基づく国内徴用令が朝鮮にも適用された帰還):245人(外務省の調査)
②広い意味での強制連行(1939年の「朝鮮人内地移送計画」~終戦までの期間):全体の13~14%くらいという説が有力
それ以外にも諸説ありますが、その事と参政権を結びつけるかどうかは、論者の政治的立場によって違ってくると思います。
参考サイト
在日外国人団体の中で、北朝鮮系の朝鮮総連の方は外国人参政権に反対しているのはなぜですか?
朝鮮総連の主張する理由は、以下の4点になるようです。
①日本への内政干渉、民族分断につながるおそれがある(韓国系の民団はこの法案に賛成)
②朝・日国交正常化が実現せず、治安対象とされてきた在日朝鮮人の法的地位問題が根本的に解決していないので時期尚早
③民族的尊厳が認められない日本社会の差別の現状に目をつむり地方参政権をいう前に、生活と教育、企業活動などの権利保証が重要
④在日朝鮮同胞の民族的主体性を否定し、帰化・同化現象を促す(田久保忠衛「国家を見失った日本人」p.102-105)
上記のような主張の背景には、在日の外国人団体の中でも、韓国系の民団の方は「日本に定住する住民」としての意識から各種の権利獲得運動に積極的な事とは対称的に、北朝鮮系の朝鮮総連の方は「北朝鮮の海外公民」として自己を定義しているため、日本における参政権獲得の運動等には批判的であるというものがあります。
そのため、80年代の外国人登録の指紋捺印拒否運動の際にも、総連系朝鮮人は「外国人」として日本の法律に従い、指紋捺印を拒否しなかったという事もあります。
参考サイト
欧州では「EU市民」に限定して地方参政権を認めている国が多いようですが、これは何故でしょうか?
欧州の場合は政治統合までを視野に入れた「欧州共同体」というものを目指しているからですが、直接の理由としては、1992年に締結されたマーストリヒト条約を挙げる事ができます。
この条約は「共同体市民権」を創設しましたが、その内容として、EC内を自由に移動し居住する権利、居住国において欧州議会選挙に参加しうる権利、自国の代表が置かれていない第三国において他の構成国の外交的・領土的保護権を受ける権利などと並んで、EC内の居住国で外国人として地方選挙に参加する権利が挙げられました。
この条約に基づき、1994年12月にEU理事会は地方選挙参加権の内容を具体的に示すために理事会指令第94/80号を発しました。
内容は以下の通りになり、これを受けてドイツ・フランスでは外国人の参政権を導入するために憲法改正がされました。
①EU市民が参加できる地方選挙→基礎的な地方行政単位の選挙
②自治体議会の選挙での権利→選挙権・被選挙権が保障
③地方自治体の首長選挙での権利→選挙権が保障、被選挙権に関しては構成各国の自主的判断による
最近の新聞報道・ブログ記事
外国人参政権に関する新聞報道(自動検索)
外国人参政権に関するブログ記事(自動検索)
#blogsearch2
合計:10107今日:1昨日:1
最終更新:2009年11月25日 02:53